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カムラの剣のように形を変える武器を手にした謎の集団。これまでに戦ったことのない存在ではあったにしても、どうにか反撃ぐらいはできた。できたのだが――結局は掠り傷のようだ。彼らを見てみろ、隙を見ての致命傷を与えたつもりだったのに。どうも急所はすべて外れたようだ。こういう人たちは実に厄介だとフレイヴは剣を元の大きさに戻しながら思った。確実に自分たちが致命傷を負う側だと。そして、何より――オルチェに蹴飛ばされた少年を見た。痛そうにはしているものの、それがどうしたと言いたげな様子で立ち上がっているではないか。そんな彼の目に宿る感情は憎悪。自分たちを憎んでいるようだ。だが、待って欲しい。自分たちは彼らに恨みがましいことをしてきただろうか。何も覚えていなかった。そもそも、彼らを今初めて見るのに。
「誰だ、てめぇら」
口を開く余裕があると見込んだオルチェは武装集団にそう言った。言ったのはいいのだが、言葉は通じるだろうかと冷静に思う。だとしても、言葉が通じようが、通じまいが敵意がある存在は全員が敵だ。悠長に「争ったって無駄だ」と止めに入ったところで自分らが何かしら得るとは思えない。それならば、「誰だ、てめぇら」と訊かずして攻撃を与えた方が時間の節約にもなるのではなかっただろうか。そうオルチェが行動を移そうとしたときだった。槍を持った女が「そっちこそ」と初めて言葉が通じた感動的瞬間がここに!
「なんでかは知らないけど。知りたいなら、そっちが先に名乗ったらどうなの?」
「こっちが名乗る前にてめぇらが攻撃を仕掛けてきたんだろ。だから、そっちが先に名乗れ」
「……あたしたちはクラッシャーを憎む者たちよ。見たらわかるでしょ」
女性の言葉に確かに、とフレイヴは納得した。彼らは自分たちを一目で攻撃対象と見なしたのだ。クラッシャーと対となる存在は魔王という者。この武装集団は魔王の手下に過ぎない。そう確信を持ち、カムラの剣を突きつけた。
「それならば、ぼくたちはあなた方の敵に過ぎません。クラッシャーを倒すのでしょう? クラッシャーを憎んでいるんでしょう? 骨が折れるような強者がいても、ぼくが相手になりましょう」
「フレイヴ……」
流石のオルチェにも焦りがあるようだが――お前はぼくの囮だ。ただの下僕だ。ぼくに忠実なのだろう? ぼくの言うことは絶対なのだろう? だったら、お前に命令する。ぼくも戦うから、お前も目の前にいる世界のクズどもを倒せ。ぼくが一緒になって戦ってあげるんだから。優しいでしょ? 感謝してくださいよ。
「戦え、囮役」
フレイヴの命令に逆らえないオルチェは勝てそうにない相手を倒さなくてはならなくなってしまった。冷汗は尋常ではない。膝は笑っている。手汗はびっしょりだ。初めての経験。それでも笑っていた。それは決して苦笑いでも、失笑でもない。身体は嫌だと反応していても、心の底では絶対命令に歓喜していたのだった。
――俺は生まれながらにしてクラッシャーの囮役。この世界に生きる存在意義が今ここで示されるときが来た。このクソッたれな状況に喜びすらも感じるぞ。




