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「殺人鬼も人じゃない」
これまで、小さな子どもの主張が大きかった大口ナズー。だが、ここにきてアルフレッドらしい意見が耳に入ってきた。今まで彼の意思がなかったからこそ、二人の戸惑いは大きい。それに何より、本物のバケモノになってしまった彼に言われたくなかったフレイヴは「うるさいっ」と怒声を張り上げる。
自分自身が殺人鬼だということは認めよう。何度も自負をしていたのだから。しかし、バケモノが人に対して「バケモノ」呼ばわりするのはいただけないと思う。お前になんか言われたくないと激しく思う。
「バケモノが偉そうにするな!」
止めていた手を再び動かすも、ナズーは最後の力を振り絞るつもりなのだろう。フレイヴの攻撃を防いだ。なぜって、言いたいことがあるから。今の彼にとって教えてあげなければならないことがあるから。ここに鏡は存在しないから。だから、子どもの意思とやらを押し退けてまでアルフレッドは出しゃばってきた。
「偉そうで結構。俺はこれでもお前さんたちを見てきたつもりだ。そして、頼まれた。『俺の意見が欲しい』ってな」
「っ!?」
【ぼくたち、大人の率直な意見が欲しいんです。ぼくもカムラも自制が利かずに特攻してしまうことがあるから】
「三十九年という短いんだか、長いんだかわからん人生を俺は歩んできた。その中で、客観的に己の所業も見られた。だからこそわかるんだ。殺人鬼も人じゃないってな」
ほとんど射撃砲の燃料によってやられているはずだというのに、大口ナズーの力は強かった。押し返そうという気迫はないのだが、少しだけ時間が欲しいと言いたげ。それでも、フレイヴはさっさと止めに入りたかった。こうして、アルフレッドが人として対話を試みようとするのが許せなかったから。これまでにおいて、ナズーとは人の話を聞こうとはしてくれなかったから。それだからこそ、何を今更――。
「人って何だろうな? それこそ、理性のあるナズーって元は人間だから……姿が違えば、バケモノなのか。一方でお前さんみたいな人の姿をしているくせに、殺人鬼の心を持っている」
「少なくとも、ぼくは世間一般から見れば人間だっ!」
「そうだよ。人間の皮を被ったバケモノなんだよ。お前さんは」
冗談じゃない。これ以上しゃべらせたくないとでも思ったのか、フレイヴは歪んだ表情を浮かべながら――ナズーに止めを刺した。
【人間の皮を被ったバケモノなんだよ。お前さんは】
【この世界に仇なすバケモノめ】
アルフレッドの言葉が嫌にこびりついてくる。同時に夢に出てきた誰かの言葉も思い出す。それが代償なのだろうか。大口ナズーは何も反応を示さなくなってしまったから。フレイヴがそれから槍を引き抜くと、カムラの剣へと戻った。そして、オルチェの方を見ると――彼は跪いていた。
「囮役」
「いかが致しましたか、フレイヴ様」
「ぼくは人間の皮を被ったバケモノなのか?」
「フレイヴ様はクラッシャーでございます」
その答えには納得がいかない。なんだか、遠回しな肯定だと思えたのだから。だが、率直に「バケモノだ」と言われない方がマシに見えた。それだからこそ、オルチェの反応に対して、強引に満足せざるを得なかった。
「……そう」
納得がいかない。その不満を抱いたまま、二人は先を急ぐのだった。




