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いくら作戦を企てたとしても、その作戦自体を決行しようとする者が余裕を持たなければ意味がないのは当たり前である。そう言うようにして、フレイヴは自分に余裕が持てるようにして、先ほどと同様に距離を作ろうとしていた。だが、作れない。カムラの剣に魅かれているから。こうなると、自分たちが立てた作戦がガタガタになってしまうのも明白。次の行動を取りたそうにしているオルチェだって、数分前の自分たちになりかねないと感じ取っているのだろう。そんな表情が読み取れた。
どうにかして、距離を取らないと。逃げれば、逃げるほど距離が縮まっていく。大口ナズーは光に群がる虫のようにしてこの光を求めているようだ。うん? 光?
何かに気付いたフレイヴ。別に急所でも会心の一撃でも狙っているわけでもない。試したいことがあるから刃を仕向けた。下から上へと線を描くカムラの剣。光。バケモノは光を追っている? 追っている!
――そういうことかっ!
「オルチェさん、左に避けてくださいっ!」
動かしていた足を止めて、フレイヴはそう叫んだ。その言葉に、とっさで左へと避けるオルチェ。途端、彼がいた右側をカムラの剣が通った。急いでその光を追うのはそれに捉われたバケモノ。
カムラは言っていた。想像して、と。だったら、想像しよう。雪の上に転がる剣。それに近付く大口ナズー。触れようとするバケモノ。今だっ! そのまま、串刺しになっちまえ!
カムラの剣からは四方八方に広がる光の刃。それは黒い巨体に鋭く突き刺さっていくではないか。バケモノは突き刺さった光の棘を払おうと暴れ出す。え? 抜こうとするの? あれだけ虜になっていたというのに? もったいないなぁ。こうして触らせてあげているのに。本当は誰にも触って欲しくないのに。誰が逃がすものか。
突き刺さった光はフレイヴの思い通りに、ナズーが逃げ出さないようにして拘束していく。動けないようにして、先端は地面に突き刺さった。まるで巨大な樹木のようにして、そう簡単に引っこ抜けないようにして根を地中に広げた。
身動き一つ取れないナズーは暴れたいようにして喚き続ける。おねえさん、おねえさん、おねえさん、と。おそらくはカムラであろう。彼女に助けを乞いているように思えた。それこそ、はぐれた親を泣きながら呼ぶ迷子のように。
だがしかし、フレイヴたちは自分が可哀想だと思う迷子ならば、助けるような優しい人間かもしれない。そうであっても、迷子のナズーを助けるほどお人好しではない。泣き喚くバケモノの大口の中へと何かが入り込んだ。それはもちろんカムラの剣が変形した姿の光だ。口を閉じさせないようにして、強引に大きく開けさせる。そこへオルチェが射撃砲の燃料ほぼすべてを放り込んだ。いや、それを入れていた入れ物ごとである。火種とセットで。悪い子にはお仕置きだ、と言わんばかりに。
――その口を閉じろ。いいや、絶対に閉じさせる。強引に。
「ちょっとしたお勉強の時間だ」
果てしなく嫌な予感しかしないらしい。大口ナズーはより一層暴れ出す。それを抑え込むのはフレイヴの想像力にかかっているが、関係はない。元より逃がすつもりはないのだから。ここで完全に消失させておきたいところ。
「燃料、火種はもちろん火の気の物と一緒に保管してはいけない。なんでって、砂をコーティングした樹液はちょっとした火の粉や火花ですらでも引火してしまうからだ。そして、一番厄介なのが……こいつの砂だ」
ぐもっ、と口を閉じられたバケモノが膨らみ始める。
「その砂、引火したら爆発を起こすんだ。ほら、これが本来の射撃砲に使われる燃料。これで人の目がやっと追い着けるか追い着けないかぐらいの速さで弾を飛ばす」
射撃砲に使用される燃料の一つを見せびらかしながらオルチェはそう言った。本来使う大きさは人の爪よりも小さな物。だが、口の中に入れた燃料は片手からはみ出るほどの量だ。あとはどうなるか、わかるな?
膨らみ続ける大口ナズー。それはやがて、体の中でのキャパシティを超えてしまったのだろう。強引に閉じていた口をこじ開けるようにして、黒煙と炎に加えて燃料臭を吐き出してしまうのだった。




