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真っ白な世界。それとは対照的に一人の少年が真っ赤な血を流して倒れていた。誰がやったのだろうか。周りに犯人は見当たらない。自害したとは思えない。
「……フレイヴ様」
なんとも悲しき場所へとやって来たのはオルチェだった。どこか満身創痍で、今にも倒れそうなほど。よくこんな場所に来られたものだ、と感心するばかりである。
倒れている少年――フレイヴの傍らには相も変わらず美しい光を放つカムラの剣が転がっていた。それを手にし、灰色の空へと掲げる。
「我が主よ」
びゅうびゅうと風が吹いているというのに、オルチェの声ははっきりと聞こえていた。
「世界が変わることを望むとならば」
空に高く向かっていた剣。それはやがて、剣先の向きを空からフレイヴの血塗られた胸へと変えた。そして、何のためらいもなくその胸へと突き立ててしまう。血は出てこない。寒さのあまり凍ってしまったか。
そう、フレイヴは死んでいる。だとしても、オルチェは彼の復活方法を一つだけ知っていた。
「フレイヴ様が望む世界へと生まれ変わるでしょう」
直後、フレイヴの指が僅かに動いた。
「まだこの剣はフレイヴ様に所有権があります」
「……ぼくは……」
「だから、ここでは死ねないでしょう。フレイヴ様の望む世界となるまで」
オルチェの言うことはもっともだ、とでも言うようにして、フレイヴの傷は元に戻っていった。明らかな致命傷、そうであってもだ。なぜに傷が治っていくのか。それはオルチェが手にしているカムラの剣――いや、この剣はフレイヴの物。彼の所有物だ。それが生かしていた。完全に傷が治ったフレイヴはオルチェに向かって「ひどい夢を見た」と呟くように言った。
「本当の悪夢ってやつだ」
「魔王を倒せば、そんな夢を見ることはありませんよ」
「それも、そうか」
魔王を倒せばすべてが上手くいく。自分が望んだ世界になることも当然。必然的に世界はナズーのいない本当の平和な世界になれるのだ。フレイヴは起き上がると、オルチェからカムラの剣を受け取った。そして、どこへ行けばいいのかもわからない雪道を突き進むのである。




