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正当防衛のはずだった。こちらに攻撃を仕掛けてきたから、やり返しただけ。それだけなのに、少年少女軍人たちは「信じていたのに」という言葉を連呼してくる。別段彼らがフレイヴの耳元で言っているわけではないにしろ、風のせいか。冷たい風が冷たい言葉を運んできていた。そんなの聞きたくないのに。
というよりも、訳がわからなかった。彼らは手にしていた射撃砲を構えたまま「信じていたのに」を繰り返す。いい加減にしつこい。それ以外の言葉を持ち合わせていないのだろうか。ああ、もう。これを聞いているだけでも頭がおかしくなりそうだ。フレイヴの苛立ちは収まることはなく、仕舞いには「うるさいっ!」と怒罵を飛ばした。
「何が信じていたのにだよっ! ぼくのこと何も知らないくせに! 黙れ、黙れ、黙れぇ!!」
こちらに攻撃はもうしてきていないのに、したという――されたという気分になった。先ほどよりも心は絞めつけられている。いや、これは押し潰されそうだった。心なのに、心臓が潰されそう。カムラの剣を握る力が強くなる。もしかしたらば、このまま力を加えていれば、剣は折れるかもしれない。なんてくだらないことが頭の隅に現れる。違う、そうじゃない。考えるべきことは。口に出したいことを思い浮かべろ。
――きみたちは誰だ? ここはどこだ? 新王国軍なのに、どうして射撃砲を? まだ軍に入って日が経たないよね? きみたちはぼくを誰と見ているんだ?
ああ、そうだ。これだ。彼らは明らかに誰かとフレイヴを間違えているに違いない。そうでなければ、こうして心が苦しくなるようなことを言ってこないはずだから。思わず口に出した。きみたちは誰で、ぼくを誰かと間違えていないか、と。
「初めて会う、ました……よね?」
だが、彼らの中で一番背の高い少年は「お前は何を言っているんだ」と睨んでくるのだった。
「そんなことを言う時点でやっぱりお前は嘘つきだ。忘れたふりをして、騙そうとする。そうやって俺たちに嘘をついてまで過ごす気分はどうだ? 最高に気持ちいいか?」
「何を言って……?」
フレイヴの言葉を遮るようにして、目付きが鋭い少女が「あなたこそ何を言っているの?」と言い出す。
「そもそも、あなたがなぜにこんなところにいるの? あなた、自分の立場をわかって言っているの?」
もう訳がわからない。そして、止めを刺すようにしてこれまで黙っていた眼鏡の少年が「私は知っている」と見てきた。
「お前は国を裏切った裏切り者」
「違うっ! ぼくは王国を裏切ってなんか……!」
むしろ、裏切ったとするのは新王国の方だ。人を戦争の火種として利用しやがって。何度も否定をするが、それを許すほど少年少女軍人たちは甘くない。ずっと言ってくるのだ。今度は「裏切り者」と。
「裏切り者」
「裏切り者」
「裏切り者」
「裏切り者」
「裏切り者」
「裏切り者」
「ぼくはそんなんじゃないっ!」
雪山に響くほどの大きな声。どこまでもこだまするかのように。その大声はもちろん、少年少女軍人たちにも届いた。彼らの姿が割れるほどにだ。割れた欠片が風に乗って舞い、一ヶ所に集まったかと思えば――。
フレイヴの目の前に現れたのは一体のナズーだった。だが、このバケモノは――。
「オルチェさん?」
今ならば、言える。絶望とはこういうことなのだ、と。




