204ページ
この世界に仇なすバケモノめ。その一言でフレイヴの心は強く絞めつけられた気になった。雪山が吹いてくる冷たい風が喉を通って、全身が凍りついた気分。こちらに対して敵意をむき出しにしている新王国軍(?)の少年少女たちに「違う」とフレイヴは否定した。
「ぼくはそんなのじゃない、です」
確かに新王国軍にとってフレイヴはナズーを操っているような風に見えていたかもしれない。彼が行く先々でナズーが現れるのは否定しないだろう。しかしながら、彼自身「バケモノ」だと言われるような存在ではないのは明らか。たとえ、魔王から世界を恐怖に陥れたクラッシャーだと言われても、実際はそんな大層な存在ではない。何度だって言ってやる。聞いた本人が忘れようが、忘れまいが当事者にとっては重要なことだ。
そう、フレイヴはただのどこにでもいる少年。山間部の村で生まれ、育った。だが、偶然にもカムラと出会い、身内や大切な人たちがナズーになってしまった哀れで可哀想な人なのだ。否定をする彼であったが、少年少女はより一層冷たい目を向けてきた。自分と似たような色の青色の目でじろじろと向けてくる。一人だけ、眼鏡をかけた少年だけは不審そうだった。
少年少女軍人は口々に「嘘をつくな」と銃口を向けたまま、いつでも引き金を引ける体勢を整え出した。
「いつもお前はそうだった。俺たちに嘘をついていた。最後の最後まで、ずっと。だから、お前は俺たちの敵だ。この世界にとって要らない存在なんだ」
「何を言って……?」
この少年少女軍人はフレイヴを誰かと勘違いしているのだろうか。これまでにおいて見覚えのない彼ら。絶対に初対面だというのに。なんとか弁解をしなければ、と彼が口を開こうとするものの、そんなことはさせる気ないらしい。激しく嫌な予感がしたフレイヴは雪の中へと転がり込んだ。その途端、自分がいた場所には銃弾が減り込んだ。それの熱で周りの雪がちょっとずつ解けようとしている。いや、それを気にしている場合ではない。射撃砲の音は鳴りやまないのだから。
「お願いっ! ぼ、ぼくの話を……!」
「騙されないぞっ!」
話すらも聞いてくれない。こちらに対して聞く耳すらも持ち合わせていない、と。こればかりは――もう戦うしかあるまい。先に攻撃をしてきているのだ。少年少女軍人たちが死んだとて、責められることないだろう。
「ぼくは何もしていないんだってばっ!」
だとしても、一つだけ言っておこう。フレイヴはこの少年少女軍人たちを絶対に殺す気はない。彼らを戦闘不能にさせるだけだと言い張る。カムラの剣で近くにいた小柄な少年に斬りつけた。なんとも呆気ない。よくその見える太刀筋攻撃を受けようと思ったものだ。白い世界に現れた赤色の血。周りの彼らはその少年の名前を叫んだ、と思う。思うというのは、フレイヴの耳には風の音が邪魔して入ってこなかったからだ。何かしらを叫んだことはわかるが、それはおそらく血を垂れ流している少年のことなのだろう。
血塗られたカムラの剣を少年少女軍人たちに向けた。これ以上、自分に刺激を与えるならば、この少年と同じような目に合ってもらおうではないか。
「ねえ……あの、ぼくはきみらには何もしたくないんだ。だから――」
ぼくの話を聞いて。そう言おうとしたのに。
「信じていたのに」
「信じていたのに」
「信じていたのに」
「信じていたのに」
「信じていたのに」
「信じていたのに」
そう言ってきた。信じるって何をだろうか。




