201ページ
どうにかして頭のいいナズーに勝たなくてはならないというのに。頭に思い浮かぶのは自身の過去。今でも鮮明に覚えている。だからこそ、嫌気は差す。苛立ちがある。調査員ナズーに「惨め」だと言われた。それすらも本気でムカついた。だがしかし、立ち向かったところでどうにかなる相手ではないのは事実だ。
何のために戦おうとしているのだろうか。
クラッシャーの囮役。そう言われて、生きていくことを決心した。そうでもしないと、この世に存在する意味がわからなかった。自分自身の価値がわからなかった。だからこそ、戦友軍に入れるほど強くなって、ナズーに関する情報を集めまくった。それだけでこの世のすべてを知った気になっていたらしい。まだまだ知らないことはたくさんあったようだ。知らないこと、疑問に思うこと。増える度に心底どうでもよくなっている。どうせならば、この世界が終わるんだったら? ああ、いいかもしれない。フレイヴはクラッシャーだから。
ナズーのいない世界なんて――神様がいる世界と同じぐらいありえないんだから。フレイヴが望む世界は簡単に言えば、この世界を終わらせるということ。『この』世界が、だ。
オルチェは痛む体に鞭を打って、立ち上がろうとした。こちらを見下している仮面野郎どもが苛立って仕方がない。ああ、クソが。やけくそ、という言葉がお似合いなのかもしれない。
――どうせ、ジンガシャマロだっていないんだろ。魔王がこんな世界にしたなら。あのピカピカ石だって……。あの女はただの名なしだ。神様じゃない。この世界に神様なんて存在しない。いたら、いたで魔王すらも存在しないし、クラッシャーだってそう。俺も同じだ。あいつは――。
昔、石像が言ったことを思い出す。
【名なしはこの世界で生まれた、この世に存在しない者です】
それはすなわち、人としての存在はありえないということを差す。これに加えてオルチェは神様の存在を信じていない。だったら、考えられるのは一つ。カムラと名乗ったあの少女の正体。この憶測が一番信憑性は高い。ナズーという存在よりもよっぽど現実的だ、と彼は思っていた。そうだとしても、非現実的であるとも捉えることもできるのだが。
――あいつは、この世界の意思その物。でなければ、ピカピカ野郎の言葉は矛盾する。あいつが言う言葉だって、全部ありえなくなってしま……いや、待て。
【魔王は嘘つきで、優しくて、素直じゃなくて、人を殺せそうにない存在】
もしも、光る石像の言葉通りであるならば、魔王と同等のはずであるカムラは――。
「ふざけんなっ……!」
オルチェに怒りは、ある。




