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窃盗犯について、それに関する案件の詳細をしつこく訊いてくる車掌。この話は終わりだとオルチェやアルフレッドが言うも、業務妨害で軍に突き出すと言い出してきた。だが、そんな中でもフレイヴは毅然とした態度で「構わない」と言うのだった。
「ぼくは大切なものを取られて許しがたいって思っているし、他の車両にいる人だって不愉快だったはずです」
取り戻せたカムラの本を強く握りしめる。
「だけれども、こういうことを人に対して言いたくないですけど……あなただって、この本を――」
そのときだった。車掌が動き出したのだ。懐からは一本の短剣。剣先はフレイヴ。それをオルチェが銃身で防いだ。この場に鋭い音が鳴り響く。
「狙っているんじゃないですかぁ?」
代わりにオルチェがそう言った。にやにやとした表情を見せているところから察するに、フレイヴも見抜いていたのかもしれない。一方でアルフレッドは唐突さに、近くの座席に座り込んでいた。こればかりはわからなかったらしい。
「よぉ? 多分だけど、バックヴォーンの手下だろ?」
「お前には関係ないっ!」
拳銃を弾き、車掌改めケレントの手下は引き金を引かないようにして一気に距離を詰めた。このまま、心臓へ一突き――と誰がいかせるって? 舐めんなよ。
二人の戦いに割り込んでくる者がいた。それはフレイヴだ。だからと言って、カムラの剣を手にしているわけではない。彼女を手にしたまま、死角からタックルを仕掛けた。押されてよろめく。体勢が崩れる。茫然と座り込んでいたアルフレッドの足に引っかかり――転倒。
――チャンスだ。今の内に捕縛を!
――まだまだぁ!
まだこんな情けない状態でも戦えると、ケレントの手下は挽回を狙った。幸い、短剣を手にしている方は体の下敷きになっちゃいない。彼は三人にでたらめな攻撃を仕向けた。これにより、彼らは近付けそうにもない。どうすれば、と為す術はない。そうしていると、ケレントの手下は起き上がってしまった。
――ははっ、そっちが舐めているんだろ? 想定外って顔をしているぞ。
ケレントの手下が武器を構え直したそのときだった。四人がいる車両の前後からは掃除道具のモップを手にした車掌たちが現れる。
「そこで何をしているっ!?」
「チッ!」
どうやら想定外だという顔をしているのはフレイヴたちだけではなかった。ケレントの手下自身もだった。こればかりは分が悪いとでも思ったのだろうか。彼は懐からもう一つリーチの短い剣を取り出すと、車両入口にいた車掌に向かって「どけっ!」と怒声を上げた。
「これで、てめぇの腹を掻っ捌くぞ!」
「いっ!?」
脅しによる一瞬の怯み。それを狙っていたと言わんばかりに、ケレントの手下は車掌たちに向かって駆け出した。刃で傷付きたくない。その思いは誰にだってあるはずだ。当然、彼らは避けた。これを彼は狙っていたのだ。目先には車両と車両の間から見える外の景色。すでに列車は王国の首都に入っており、郊外の町並みが素早く通り過ぎていっている。
――それでも構わない。
ケレントの手下は手すりに足をかけて、郊外の町の中へと身を投げ入れたのだった。




