錬金術ギルドは薬品の香り
南門から歩いてしばし、昼のかきいれ時で賑わう食べ物屋の屋台の間をすり抜けて中央区へ足を向けた。
南区と中央区の壁周りに広がる市場を抜けて中央区南門に向かう。
一般人向けの食料品や雑貨を扱う店が多いからか昼過ぎでも活気があるな。
目についた店で布の小袋を2つばっかし買う。銅貨で7枚だった。前買ったとこより安いぞ。
次からはここで買おう。リュックサックとかも売ってるしな。
周りの出店を見るだけでも一般ピープル御用達って感じがひしひしと伝わってくるね。
こういう雰囲気好きだわぁ。
また今度時間をかけてじっくり見回りたい所だ。
中央区南門を抜けて中央区に入り、人通りが増えた大通りの歩道を人波を避けながら歩く。
大通りを行き交う荷馬車を眺めていると中央区は人の流れが激しいな、と感じた。
東区と西区から直接北区の北門へ抜けられる道が無く、大型の荷馬車が大きな道がこの大通りしかないみたいなので、仕方ないのだろう。
小さい荷馬車は大通りを外れた道をささーっと通り抜けていくようだ。
荷物の運搬量をとるか、小回りをとるか、みたいなのなのかな?
小さな取引だと小さな荷馬車で良いとか、臨機応変に対応してるんだろうな。
そこは個人の采配だよね。
そういう細々したことをできる人は尊敬しちゃうよね。
俺には無理だわー。
それにしても辺りを見回してみてわかるけど、人種のるつぼよなぁ。
普通の人、ヒューマって言ったか、が一番多いけど、耳の長いエルフっぽい人とか、けものけものしてる人もたくさんいるし、見てて飽きないなぁ。
あんまりじっと見てると「何ガンつけてんだゴラァ」ってなりそうだから極力チラ見だけどね。
中央区の中央、大通りと大通りが交差する大交差点を東に曲がり、東区へ向かう大通りを歩いていく。
途中冒険者ギルドの前を通りすぎるときにレオンの姿を探してみたけど、その姿はなかった。
菓子売りだけじゃなくて他にも仕事があったりするのかな。
よく見たら服装もちょっとボロかったし…、もしかしたらちょっと貧しいお家の子なのかもな。
そういう家だとあのくらいの年頃でも労働力としてカウントされちゃうんだろうな。
勝手に背景を想像するのは失礼だけど、そんな背景を想像すると涙がちょちょぎれちまうぜ。くぅ…。
次あったときは菓子をもっと買ってあげよう。
てくてく大通りを進み、中央区と東区をつなぐ門、中央区東門をくぐる。
門の周囲の広場から壁沿いに広がっているのは東区で必要になる物を取り扱う市場だ。
怪しい薬品や器具から、綺麗な宝石やアクセサリーの土台等々、一見すると雑然とした品揃えだけど本職の人から見たら統一性があるんだろうなぁ。
俺にはごちゃ混ぜでどこに何があるか決まってないようにしか見えないけどな。
東区の大通りを暫く歩いて、ふと気付いた。気付いてしまった。
錬金術ギルドの場所ってどこよ?
やべぇ、よくよく考えたら錬金術ギルドの場所知らないや。
東区って聞いてたからとりあえず東区に向かって歩いてきたけど、適当に歩いて見つかるものか?……、見つからないよな。
うん、仕方ない。誰かに聞こう。それが一番手っ取り早いぜ。確実だぜ。えーと、あ。
「こんちわーっす」
「いらっしゃい。おや、昨日の兄ちゃんじゃないか。どうかしたのかい?」
昨日の朝にチョロ嬢さまに絡まれる前に話してた恰幅の良いおばちゃんに声をかけた。
おばちゃんの店は昼時でもお客の姿はない。
置いてるものがちょっと高いからね…。仕方ないね…。
「すみません、錬金術ギルドの場所ってどこですかね?」
「なんだい、ギルドの場所もわからないのかい?」
「いやー、田舎から出てきたばっかりで…」
「そうかい。それなら仕方ないかねぇ。場所って言ったって大通りを真っ直ぐ行くと左手に見えてくる大きな建物だよ、としか言えないね。東区にあるギルドは錬金術ギルドしかないからね。そこまで大きな建物は錬金術ギルドしかないよ」
まさかの大通りを直進だけだった。
適当に歩いてても見つかったっぽい。
まぁ、結果論ではあるけども。
「そうですか、ありがとうございます。行ってみます」
「まぁ、頑張っといで」
恰幅の良いおばちゃんに礼を言いつつその場を離れ、大通りを進んでいく。
ちらりと視線を巡らせば、辺りを歩いている人たちもどことなくインテリ風味です。
東区には錬金術系のお店や施設が集まっているって話の先入観からかな?または気のせいか。
俺がそう思い込んでるだけかもだが、この辺の人たちがみんな錬金術系の人たちってのもなくはなさそうだ。
じゃあ西区へ行ったらどうなるんだろう…?
筋骨隆々な野郎共がひしめき合ってたりするのか…?
おっかねぇな…。よっぽど用事がなければ近付かないようにしよう。西区恐い。
人間観察をしながらしばらく歩いていくと、他の建物に比べて大きくて立派な建物が見えてきた。
冒険者ギルドのように石造りのどーんっ!という効果音が聞こえてきそうな建物だ。
おぉ、確かにわかりやすいな。
っていうか看板出てるしな。
例によって読めないけど、じっと見てたら『錬金術ギルド・マインエラ支部』って読めてきた。便利だね翻訳こん○ゃく魔法。
にしてもここも石造りだなぁ。
大きな建物は石造りばっかりだ。石材の方が調達しやすいとかの理由からだったりして。
街の回りは岩山ばっかりだからな。
石はたっぷりあるもんな。そりゃメイン建材として使われますわ。
内装は木材が多いのは仕方ないかね。やっぱり木の温もりが欲しかったりしますから。
よっしゃ、早速入ってみるぜ錬金術ギルド。
見た感じ冒険者ギルドよりも入りやすいぜ。
線が細い人が多いからかな。昼過ぎってので人が少な目なのもあるかもしれん。
なんにせよ、突入であります。
うお、まだ外なのにほんのり薬みたいな臭いがする。
土地柄って言うか錬金術の総本山だからかな。いやでも支部か。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
開けっぱなしの重厚な扉をくぐって建物の中に入ると、外でも漂っていた薬の臭いが強くなった。
んー、あれだ理科室とか科学実験室みたいな臭いだ。
感想が貧弱なのはいつものことだけど、薬品作ってる工場なんか入ったことないからな。仕方ない仕方ない。
扉をくぐった先は広々としたロビーになっていた。
作りが冒険者ギルドに似てるなぁ。
正面にいくつかのカウンターがあり、見目麗しいお姉さま方が何かの仕事をしている。
入って左側にも小さなカウンターがある。こちらにもお姉さまがいらっしゃる。
正面のカウンターの両側には上階に上がるための階段が見える。
入って右側を見てみても冒険者ギルドのような掲示板は見当たらないけど、依頼とかはないのかな?ランク自体がないのかもしれないな。
えーと、とりあえずギルドに登録からなのかな。
冒険者ギルドだと左側の小さなカウンターが登録カウンターだったけど…。
聞いてみるか。




