冒険者ギルドは便利屋さん
「それでは、続いて冒険者ギルドの説明に移らせていただきます。当冒険者ギルドは様々な立場の方々から、幅広い依頼を受け付け、仕事を求める皆様に紹介する、所謂仲介業を生業とさせていただいております」
なるほど、仲介業ね。ハローワークだね。職業斡旋所だね。
「時に便利屋と揶揄されるほどに、当ギルドに発注されます依頼内容は多岐に渡ります。街の中で済む簡単な物、ゴミ拾いや害虫駆除などですね。街の外に出なければならない物、南の森、北の森での薬草の採集などがこちらに当たります。更には南の森の奥にある迷宮や、魔物の領域にまで出向かなければならない難しい物もございます」
ふむふむ。確かにそうだね。
魔王を倒して来いとか無茶なクエスト出す鬼畜なギルドもあるくらいですからね。
南の森の迷宮か。俺が放り出された所だね。
ちゃんと認知されてるんや。ペンギンナイトの詰所があるくらいだからな。
ちゃんと管理されてるんだろうなぁ。
…でもあんなに近くにあるのに、あの禍々しい地獄の門もどきはほったらかし…?
いや、やめよう!俺はもうあれについてはノータッチだ。
勇者様に任せるのだ!
「どうかなさいましたか?」
「あぁ、いや何でも!すみません、続きを願いします」
「そうですか。かしこまりました。そのため、冒険者ギルドにおける依頼の達成状況に応じたランク付けを行っています」
うんうん、よくあるよくあるよ。
数字とかアルファベットとかね。わかる。わかるよ。
「冒険者ギルドでは、下位ランクから、銅、銀、金、霊銀、最高ランクの白金という5つのランクを設けて、更にそれぞれのランクの冒険者を5つにの階級に位分けしています。銅ランク1級、2級、3級、4級、5級といった具合ですね。5級がなりたて、1級はそのランクの中で実績を積んでこられた者としてます。本日登録していただいたマオ様はカードをご覧になっていただければおわかりになられるかと思いますが、銅ランク5級となっております。新規登録の方は必ず銅ランク5級からとなっておりますのでご了承ください」
「了解です」
おう、普通最下位からだよな。オッケーオッケー、理解してるよ。
「当ギルドではランクに応じた依頼をご用意しておりますが、ご自身のランクの依頼ならばどれでも受領していただけます。銅5級でも、推奨受注階級・銅1級と書かれた依頼までならば受けられるということです。しかしランクを跨いでの依頼の受領は出来かねますのでご了承ください。ご自身のランクに合った依頼をこなし、ギルドでの評価ポイントが一定の数値を越えますと1つ上の階級に位が上がります。しかし、依頼の不履行、依頼の途中破棄、期限内に終えられなかった、依頼された品物を確保できなかった等、理由はいろいろありますが、どんな理由があろうと失敗と見なされた場合は違約金を支払っていただきます。更に依頼の失敗を5回連続しますと、階級の引き下げが行われます」
依頼をこなしていけば昇級していくわけだ。
失敗すると違約金で、失敗5回でランクダウンな。うんうん、自分で解決出来る依頼を受けるのが肝心だな。オッケーオッケー。
「階級の上昇に伴い、銅ランク1級から銀ランク5級、銀ランク1級から金ランク5級に、金から霊銀、霊銀から白金もそうですが、1つ上のランクに昇進するためには昇進試験がございます」
おう、緊急クエストですね。やっぱりあるんだね。
「銅から銀、銀から金、金から霊銀とランクが上がるにつれて依頼の難易度が上がります。そのため、その方の実力が伴わないままランクが上がり、依頼の不履行、不履行で済めば良いですが実力が伴わない依頼で無理をして命を落とす、といった状況を減らす為の措置となっています。もちろんご自身の実力が伴っていないと判断された場合は試験を受けず、そのままのランクに留まる事ができますのでご安心下さい」
そ、そうだね。無理は良くないよね。自分の実力に見合った依頼を受けましょうってことだね。うん、
「冒険者は体が資本、という言葉はご存知ですか?」
「え?あ、はい。聞いたことは…」
シャローネちゃんが言ってたよな。確か。
「冒険者ギルドでの依頼の中での大怪我、または命を落とすといった事態が起こったとしても冒険者ギルドは一切の責任を負いません。冒険者ギルドでの仕事は危険と隣り合わせであることが多いですから。その全てを補償することは出来ないのです。ご理解ください」
「は、はい」
「ならばこその、冒険者は体が資本。至言ですね。ご自愛ください」
「は、はひ」
怖い。目が怖いよメドルテさん。
で、でも確かに危ない所に行くのが多いだろう冒険者の怪我やら何やらを補償してたらきりがないってことなのかな。
シビアな世界だね。ちょっと不安になってきた。
「しかし、冒険者になられたばかりの方にいきなり、ドラゴンの巣に飛び込めなどという無理な依頼を受けさせるはずはありません。薬草摘みや荷運びなどから始めて体を鍛え腕を磨き、資金を蓄えて装備を整えることを考えるとよろしいでしょう。用心に用心を重ねれば大きな怪我も、それ以上の事も起きづらくなることは確かですので」
丁寧や。親切や。メドルテさんの至れり尽くせり感が半端ない。
そうだね。体を鍛えて装備も鍛えないとね。
やっぱり、臆病なくらいで丁度いいのよね。
というかドラゴンとかやっぱりいるのね。遠目から見てみたいわ。近付いたら丸飲みされそうだからね。
「更に安全性を求めるなら複数人でパーティーを組むのもよろしいでしょう。1人より2人、2人より3人でお互いをフォローしあう方が安全性が高いのは言うまでもありません」
「あぁ、はい」
「もちろん信用のおける相手である、という前提条件は必要となりますが」
「…確かに」
適当な人と組んで後ろからバッサリとかあり得るもんな。
信用できる人と出会えるまでは1人で頑張ろう。いや、1人と1球で頑張ろう。…頑張るのはほとんど1球の方だけだけど。
「不安を煽るようで心苦しいですが、伝えておくべき事柄なのでお伝えします。犯罪については、犯罪として報告されない限り、犯罪として扱われないという大きな欠点があります。つまり、パーティーを組んで依頼に出発し、誰にも見られない場所で待ち構えていた暴漢に殺害されたとしても、パーティーのメンバーがその暴漢の仲間で依頼中の事故による死亡と報告され、所持品を強奪される場合もあると言うことです。ギルドカード消滅時の通知には死因までは表示されませんので」
うわ、絶対に知らない人とはパーティー組まないわ。マジ無理。
注意喚起くらいの気持ちだったかもしれんけど、俺の小心ハートでは受け止めきれないレベルのインパクトだったわ。
無理無理。マジ無理。パーティー怖い。いのちをだいじに。
「と言っても、報告に不信な点があった場合、きちんとした調査が行われ、不正が認められれば然るべき処置がとられますのでご安心を。そうそう、依頼受注用紙の掲示板の隣にパーティー、クランのメンバー募集の掲示板がございます。後程是非ご覧ください」
うん、その時にはやられた方は死んでますからね。
ご安心出来ませんよ。ご安心して成仏してねって、出来るかぁ!
今の話をされてパーティー組もうとする人いるのかな…?
「続きまして、依頼の受注方法についてご説明させていただきます」
あっさりと次に行ったぞ!ビビらせるだけビビらしといて放置かい!
い、一応、後で見てみよう…。
「依頼の受注方法はあちらの、冒険者の方々が集まっている掲示板から依頼内容が提示された受注用紙を剥がして取り、そのまま正面カウンターにギルドカードと一緒にお持ちください。登録者様のランク、階級、依頼のランク等に問題が無いことを確認し、カウンターで受注手続きを行えば依頼の受注は完了です」
おう?受注自体は簡単なのね。
「聞いていただいた通り依頼の受注は簡単です。しかし、考え無しに多くの依頼を受けて、期限を守れず依頼の不履行になり多額の違約金を支払う、と言った事例もございます。簡単に受注できるが故に、ご自身の力量を見極め、確実に履行できる依頼を手堅くこなしていくのがよろしいでしょう」
「なるほど。確かに」
「依頼達成の条件は依頼の内容により異なります。受注用紙に提示されていますので、必ず確認してください。依頼された品物を手にいれる、依頼達成の条件を満たしたと確定した上で、受け付けカウンターにご報告いただければ、その場で依頼達成の確認と報酬のお振込みの手続きをさせていただきます」
「はい」
「もし、依頼の品物をお持ちの状態で、まだどなたも受注していない依頼があった場合は、その場で受注、その場で達成ということが可能です。なので魔物の素材、依頼内容以外の薬草等でも、処分せずに保管しておくというのも有効な手段でございます」
「な、なるほど」
確かに有効な手段かもしれないけど、毛皮とか肉とか持ち歩くのは大変だよね。と言うか無理だよね。腐りそうだ。
ゲームみたいなどんな物でもいくらでも入る袋とかあるなら別だけどさ。
「魔物の素材や毛皮などは嵩張ることこの上ありません。ダンジョン等で発見される武具なども持ち運びに苦労するでしょう。近年では、錬金術ギルドで製作されている魔道具の1つに、見た目以上に物が入る魔道具の袋というものがございます。そちらをお持ちであれば、そういった手段も容易に可能でしょう」
あるんかーい!錬金術ギルド凄いな!魔道具の有用性が半端ないで。
「魔道具の袋は高額ですし、登録されたばかりの冒険者様に素材を保管するような余裕があるとは限りません。手に入れた素材はそのまま資金に変える事を選ぶ方が多いですね。これ等はあくまで一例でございます。マオ様ご自身の状況に応じてご検討ください」
ですよね。そりゃそうだ。
でも、今の俺に受けられるかもわからない依頼の素材を集めて置いておく余裕はない。一切ない。
ちゃっちゃとお金を稼いで余裕を持たねば、宿代を稼がねば。
「冒険者キルドにおいての素材の買い取りは、建物の裏手にございます買い取りカウンターにておこなっております。余った素材、依頼とは関係のない素材等はそちらにお持ちください。また買い取りカウンターでも依頼達成の報告は可能です。受付カウンター向かって右手の通路から裏手に行くことが出来ますが、素材の汚れや血、毒のある素材等でフロアを汚してしまう可能性がある場合は裏手の道から入るようにお願いいたします」
おうおう、流石大手の冒険者キルド、裏口があるわけね。
そこからこう、表では扱えないような裏裏した商品とか素材とかを裏裏した感じで取引しちゃうんだろ?
いや、あくまで予想だけど。
「続きまして依頼を発注する場合の説明ですが、冒険者の方々が依頼を発注すると言うのもそれほど珍しいことではございません。しかし、発注されない方は冒険者を引退される時まで1度も発注されないこともございます。そのためここでの説明は省略させていただきますが、依頼を発注される場合に2階の依頼発注カウンターの方で説明を受けていただければと思います」
「わかりました」
「長らくお付きあいいただきありがとうございました。以上で冒険者ギルド登録時の説明は終わりになります。何か気になる点や不明な点などはございましたか?」
「えぇと、大丈夫、です」
「そうですか。何か不明な点がございましたらいつでもお聞きください。本日は冒険者ギルドへの登録、まことにありがとうございました。それでは、マオ様のご武運をお祈りしております」
俺が椅子から立ち上がると、メドルテさんも立ち上がり優雅にお辞儀をしてくれる。
一挙手一投足が洗練されすぎてはいませんかね?
カッコいいね。執事みたいだよね。
俺も歳を取ったらこんなナイスミドルになりたい。
さて、冒険者としての第一歩を踏み出すためのクエストを受けにいきますか!
薬草集めとかにしようかな。
いきなり討伐系は勇気がいるからね。うん。




