第一話 魔法少女なんでしょ? ⑥
これまでちゃんと話したことはなかったが、梨音は感じのいい子だった。少し天然なところがあるが、それはご愛敬。学校へ着くまでの短い時間だったが、思いのほか会話が弾んだ。話題はふたりに共通するもの──学校に関することだった。先生、学校行事、もうすぐ始まるテストなどなど。
自転車に乗りながらだったから、そんなにたくさんしゃべれたわけではないが、あとでLINEを交換しようよ、という程度には仲良くなれた。
自転車置き場に自転車を押しこみながら、梨音が、
「加藤さんはなんか部活入ってんの?」
「わたし?」
「中学のとき、美術部じゃなかったけ?」
「中学はそうだったけど……高校の美術部には入ってないんだ」
「じゃあ、いまは帰宅部?」
「まあね。家のこともあるし」
「じゃあさ、文芸部に入らない?」
「え?」
昇降口に向かおうとして、美月は目をパチクリさせる。梨音はマジメな顔をしている。
「……いま文芸部って言った?」
「そ、文芸部。あたし、文芸部員」
(そうは見えないけど……あれかな、実家が神社だから、意外と本が好きなのかな)
「うちの学校にあったんだ、文芸部」
梨音はアハハと声をあげて笑う。
「部員が少ないからねー。あたしを入れて三人だもん」
「それ、部活の最低人数に達してないよね?」
「だから、こうして勧誘してるんじゃん」
(……よりによって文芸部かあ。お母さんに知られたら笑われそう)
母親が文筆業だと知ったら、梨音はどんな反応をするのだろう。それを試してみたい気持ちもあったが、ここはいったん保留。
「……ちょっと考えてみるよ」
「うん。期待してるからね。加藤さんならきっと入ってくれるよ」
梨音は鷹揚にうなずく。美月が入部すると信じて疑っていないような口振りだ。
美月、微妙。
しかしながら、このときの梨音の予言は、見事に的中することとなったのである。




