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わたしたち、裏魔法少女部!  作者: 凍月
第一話 魔法少女なんでしょ?
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第一話 魔法少女なんでしょ? ④

 私立成陵(せいりょう)学園高校。

 中高一貫の、美月が通う学校だ。男女共学で、東京都下では長い歴史を持つ伝統の進学校として名を知られている。

 冴子もこの学校の卒業生だった。

 中学受験で合格したときは、冴子は自分のことのように喜んでくれた。

 高校一年までは電車で通っていたのだが、増えるばかりの蔵書をしまう書庫が欲しい、と冴子が言い出して、この春にもっと学校の近くに引っ越した。いまは自転車で通学している。

 引っ越しと同時に新調した自転車は、とっても軽快。登り坂だって、こっそりと魔法を使って自転車を押せば、電動自転車並みに楽に登れる。

 自転車をこぎながら、美月はさっきの出来事についてつらつらと考える。幻聴なのか、はたまた自分のうちに潜む別の人格が話しかけてきたのか──どちらであっても、精神状態がヤバいことに変わりない。そんな自覚はないのだが、自分が精神を病んでいることを自覚できるものなのかどうか、美月にはわからない。

 もうひとつ、もっともらしい説明がつくものがあった。

 魔法だ。

 美月は、自分に魔法の才能があると偶然に知ってから、数えきれないほどの試行錯誤を重ねて、なんとか使いこなせるまでになった。魔法なんて、誰も教えてくれないし、教えられるひともいないだろうから、手探りでの自学自習しかなかったのである。自分が使える魔法はひととおり試してみたはずだが、開発されていない未知の能力が眠っている可能性はある。幻聴とかでないとすれば、それが、あの声なのかもしれない。

 毎日の通学路にしている住宅街の十字路にさしかかったとき──

 またあの声が、美月の頭のなかでつぶやいた。

(……すぐにでも剣《つるぎ》神社に行け)

(え?)

 やっぱり、幻聴なんかじゃない、と美月は確信する。

 正体は不明だが、自分とは違う人間──それも、女がいるのだ。自分のなかに。ちょっと不気味。

 美月の脳裏に響くその声は、なんだか話し方も横柄で、ひとを見下すようなところがある。

 美月は、十字路の真ん中で自転車を止める。四方をうかがった。

 クルマ二台がやっとすれ違うことができるぐらいの幅しかない、生活道路。まっすぐに行けば、毎朝通っている通学路。左の道はちょっと遠回りになる上に登り坂だ。声がつぶやいた剣神社というのは、その坂道を登りつめたところに鎮座している。毎年、夏にお祭りをやるらしいのだが、最近に引っ越してきた美月は、これまで行ったことはない。

 美月は慎重に──声を出すわけではないから、感情をこめないようにして、内なる声に問いかける。

(……剣神社がなんだって?)

(そこに、おぬしといっしょに戦ってくれる仲間がいる)

(だから、戦うって、なにとよ?)

 とりあえず、いまは無視。剣神社に寄っている時間なんてない。

 いつもの通学路に戻ろうとして、ペダルに足をかける。

(紫蝶に会え)

「だから、市長さんがどうしたのよ!」

 いつの間にか、声に出ていた。

「……加藤さん?」

 突然、呼びかけられた。今度はホンモノの女の声で。

 美月はあやうく自転車ごと転びそうになる。無意識のうちに風の素の魔力をつかんで、グイッと姿勢を立て直した。

「ちょっと加藤さん? 大丈夫?」

 左の坂道から自転車に乗ってやってきた少女が、心配そうに美月の顔をのぞきこむ。美月の心臓はバックバク。顔がカッとほてるのを感じる。

 自転車にまたがった少女は、美月と同じ、ヘーゼルブラウンの成陵高校の制服を着ていた。それだけじゃない。

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