ライバルと友達になろう(改)
アルベルトは冷静な男で、薬を飲んで平静を取り戻すとすぐに俺をまた殴った。
「痛ッ」
「薬を飲ませる必要はなかっただろ。君、人を操作しようとしすぎているな」
「俺はプレゼントをしただけだ……」
「人を操るための捧げ物はプレゼントとは言わないんだよトマス」
「純粋な気持ちが踏みにじられた気分だ」
俺は頬を擦りながら空の瓶を鞄にしまった。
しまいながら、話を再開する。
「それで、部員が足りないから部活動に入ってほしい話なんだが」
「え?」
「ん?」
目の前の男は一瞬、何が何だか分からないという表情をして、俺の背後で影みたいに突っ立っているリヴを見て、また俺を見た。
「そんな話だった?」
「そんな話だっただろ、ずっと」
「僕はもっとシリアスな話かと思って」
「俺にとってはずっとシリアスだ」
「ごめん。もっと前提から話してくれる?」
俺はため息を吐いて、話した。
熱病の折に神のお導きを得て更生したこと、教会に献金したいのに教会を出禁にされていてできないので商会を作るつもりだということ、金策のためにこの薬を売りたいが部活動を作るためには部員が足りないこと。あとシープシャンクは間違ってもエリクサーではないので今お前が飲んだのも法的に問題ないということ。
「ほらそこ。共犯にしてるじゃないか。君って本当に……」
「何が問題なんだ? 教えてくれよ」
「僕がこれについて違法エリクサーだと告発したら共犯として侯爵家が裁判にかけられる可能性もあるだろ」
「あるな」
「僕は妹を守るために告発せず君に従うしかない。君は僕にこれを飲ませることで僕の口を封じたんだよ」
「お前が飲んでくれなかったらそうはならなかった」
「君が事前に言っていれば脅し紛いのことをしなくても僕は協力したかもね」
彼は俺と同じような仕草でため息を吐いて、机に置いた教科書をまた手に取った。
神学の本だ。表紙に記されている言葉を――
「汝、救済を疑うことなかれ」
憂鬱に閉じ込められた瓶詰みたいな声色でアルベルトが読み上げた。
「分かったよ。協力する」
「ならよかった。名前だけ借りるから、後は好きにしていてくれ」
ひらひらと手を振ると、彼はムッとしたようだった。
「何言ってるんだ。僕もきちんと参加するよ」
「薬品の研究しかしないが」
「僕だって錬金術の初学者ぐらいの知識はあるし、大体ッ」
親愛なる腐れ縁の友人はそこで急に言葉を切り、俺からそっと目を逸らして非常に言いづらそうに告げた。
「君はコミュニケーション能力が壊滅的だから、手伝う人がいないと困るだろ」
「失礼な……」
「大体君、そのせいで死刑宣告まで受けたんじゃないか。とんでもないことだよ」
「あれは些細な言葉のすれ違いだった」
「君の言葉はまっすぐ届かないんだよ」
信用がないから……と彼はぽろりと口を零した。
俺はリヴに用意させたハンカチでそっと目許を拭う真似をした。
ともあれ、部員は確保できたわけだ。
あとは顧問だった。




