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着替えを済ませ、朝食を取る。
今朝はクラウス不在だったが、特に気に留めない。昨日から気になっていた彼の机の引き出しに手を掛けたオルカだったが、扉の開く音に慌てて仕切りの向こうに隠れた。
「......何してる」
「あ、クラウスでしたか。おはようございます」
「コリストス卿は今日時間が空き次第すぐ来るそうだ」
「そうですか、ありがとうございます」
昨日同様、作業に戻ったクラウスの横でオルカも偶然発掘した古い本を読む。内容は至って王道の恋物語だ。許婚と恋人と三角関係になってしまった主人公が、花占いをしているところで扉が叩かれ、オルカはびくりと肩を震わせた。
「鍵姫様、コリストスです」
「今行きます」
コリストスの呼びかけに応じたのは、クラウスだった。彼が敬語を使うのは少し新鮮だ。
「で、何なんだお前は」
「ごめんなさい、驚いてしまって」
「扉叩く音で驚く奴、初めて見たぞ」
テーブルの下に隠れていたオルカは、声を掛けられようやく這い出る。その間にクラウスが扉を開けて対応する。扉から垣間見えた養父の姿に、オルカは懐かしさを覚えて口許を綻ばせた。
「叔父様!」
「オルカ?」
一言、二言、何か話していたらしい二人はやがてオルカの元へやって来る。コリストスは、養女がこの部屋にいることに驚いたらしい。暫く固まっていた。
「お久しぶりです、叔父様。お元気そうで何よりです」
「オルカも元気そうで安心したよ」
「お兄様や叔母様も元気でお過ごしですか?」
「あぁ、二人とも元気だよ」
ついはしゃいでしまうオルカに、クラウスが扉の前で咳払いをする。とりあえず本題に入らないといけないのだった。
事前に用意して貰ってあった紅茶を淹れる。一口飲んで息をつく。
「それで、話はなんだい」
「叔父様、ご存知の通りオルカはセリス様、えっと鍵姫様の身代わりになりました」
「どうもそうらしいね」
「今後のことを相談したいと思いまして」
オルカは、昨日クラウスに話したのと同様、セリスと出会った所から話す。鍵姫の代わりと言っても何をすればいいのか正直分からない。そんな悩みも含めて話し終えたオルカに、コリストスは言った。
「オルカは、このまま鍵姫を続けるべきだ」
「本物かもしくはセリス様が戻ってくるまでではなく?」
「この国の今の情勢を知っているかい?」
そう聞かれて知らないと首を振ると、コリストスは話を続けた。




