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特に気にすることでも無い為、オルカは淡々と食べ終えた皿を片付ける。
「でも、可笑しな話ですよね。庶民出身で貴族の養子だなんて」
「見栄だろ、どうせ」
「そんなことに子供を利用する方ではないですよ?」
どこか楽しそうにオルカは、仕切りを引っ張り姿を消す。少しして食器の片付けに来た使用人に礼を言っておこうと出て行こうとして、クラウスに押し戻された後、クローゼットを開ける。着替えようとしてその手は、その扉を閉じていた。
「本当に代わりになったんだ」
今日は目まぐるしく色々な事に巻き込まれた。夢じゃないかと思ったくらいでクローゼットに入っているドレスが自分のそれで無いのを見て、ようやく現実だと思い知った。
窓を勢いよく開けて、夜空を見上げる。もう前に進むしかないのなら。
「クラウス」
「あ?」
「コリストス卿を明日、呼んで頂けますか?」
コリストス卿と言えば、上流貴族のひとりで王族との間柄も蜜が深い。そんな有名人を呼ぶように言ったの所為か、流石のクラウスも仕切りの向こうでペンを取り落としたらしい。
「あの方なら、この先の事も安心してお話出来ます」
「根拠は」
「わたしの養父です。それでも信用出来ませんか?」
「......分かった」
再びクローゼットを開き着替えを取り出していると、苦虫を噛み潰したような声の返事が返ってくる。国の象徴とも言える鍵姫の入れ替えなどとたいそれた事をやってのけ、その上順調に上手く言ってしまったのだ。出来過ぎていると逆に失敗した時のことを考えるのは当たり前だ。クラウスも慎重になっているのが、オルカにも分かった。
「どうしてセリス様を逃がしたりしたのですか?」
「別に、お飾りに用はない」
それだけ言い、クラウスが部屋を出て行く音がした。ひとり、残されたオルカはいい加減寝ようと床に着く。その時目の前の小さなテーブルに、裁縫道具が置かれているのを見つけて再び起き上がった。
「セリス様の」
作りかけらしい何かは、ようやく裁縫に入ったという段階らしく、何が作りたかったのかは分からない。それを見たオルカは、作りかけのそれを胸に抱いた。
自分も、セリスのように夢を見つけて追うことが出来るだろうか。




