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「わたしでよければ、と言いたい所ですけど目の色も顔立ちも違いますよ」

「それは問題ありません。王宮でも、人前に出る時はこのベールを被ってましたから、誰も私の顔は知らないはずです」

ここまで言われて仕舞えば断る理由など当然あるはずもなく、言われるがままお互いの服を交換する。こんな質のいい布を身に纏うなんて生まれて初めての経験だ。一方のセリスも、動きやすいとはしゃいでいてオルカの頬も自然に緩む。

「追っ手が追いつく頃ですね、絶対にばれませんから、安心して胸を張っていてください」

励まそうとしてくれているのか、話掛けるセリスの声も心なしか震えていた。とりあえず、外に出てその辺を歩いていれば声を掛けられるらしいので、言われた通りにしていると後ろから肩を掴まれ振り返る。

「セリスティアーナ様、探しましたよ」

「え、えっと、どうしてここが?」

聞かされていた通りに言葉を返す。声が震えていただろうか、それとも棒読みになってしまっただろうか。内心おろおろしているオルカを他所に、追っ手である目の前の騎士はふと笑った。

「クラウスがしくじるなんて珍しいですよね、姫様も王都の視察楽しかったですか?」

「王都の視察?ですが、わたしは」

「あーオレたちの間でそういうことにして処理しておいたので、姫様も話合わせてくださいね」

よく分からないが、セリスが王宮を抜け出した件についてはお咎めなしということだろうか。そう解釈したオルカは、金髪の騎士に馬に乗せられる。馬に乗るのも生まれて初めてでその高さに怖くて腰を引いてしまったが、いざ乗って仕舞えばそうでもなく王宮はあっという間だった。

「ありがとうございました」

「もう勝手に抜け出さないでくださいね」

「そうですね、もう抜け出したりしません」

馬を馬小屋へ繋いでいる所を眺めながら、その作業をする金髪の騎士と話す。部屋に戻らないのかと尋ねられ、セリスの部屋が何処にあるのか見当もつかないオルカは、適当に言い訳をして馬小屋の作業を眺めていた。

「ベール、取らないんですか?」

「え?ベール?」

「いつもなら王宮内だからって仰って、外してますよね?」

「え、えぇと、そうだったんですか?」

話が違う。

王宮内でも、自室以外はほとんどベールを被って生活していたのでは無かったのか。これでは、セリスでないことがばれてしまう。というか、今の会話で既にばれてしまっているような気がする。

「そのくらいにしとけ、シュバルツ」

「クラウス」

覚悟を決めてベールを外そうとするも、別の声が近づいてきた為手を止める。声の主は、枯茶色の髪に黄色の瞳の、細身ながらがっしりとした体躯の顔立ちのいい青年だった。助かったと安堵した刹那、首に銀色に光る剣を突きつけられ、驚いて息を止める。

「あんたの方が容赦ないくせに」

「お前は鍵姫の偽物だろ」

「そのまま刺すんじゃ意味ないからな」

「分かってる」

この二人は、鍵姫が偽物だと気付いている。

しかし、このままあっさり正体を明かせばセリスが連れ戻されてしまう。せめて、彼女が恋人と合流して仕立て屋で働けるようになるまでは待っていて欲しい。そうでないと、身代わりになった意味がなくなってしまう。

「答えろよ」

「いや、そんなに威圧したら答えようにも答えられないでしょ」

幸いこの辺りに人気はなく、オルカと騎士二人だけだ。近くには、馬小屋と王宮庭園。王宮の出入り口も見えるが、それでは騒ぎが大きくなってしまう。何度か考えを巡らせた後、オルカは目を二人へ向けた。

「......きちんとお話しますから、セリス様は探さないであげてください」

「内容次第だな」

「クラウス?!」


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