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涙が溢れる。

さっき泣いたばかりなのに、今日はあと何回涙を流せば良いのだろう。

その時、腕を引かれて一瞬だけ涙が止まる。

「お前、こいつ泣かせたな」

「この子が勝手に一人で盛り上がって、絶望して泣いてるだけじゃない」

「残念ながら、こいつを泣かせるのは俺だけで十分なんだよ」

クラウスに抱きしめられている。

言ってる事は格好いいけど、何か違う気がする。

目隠しをされて、銃声が響く。

それを聞きつけた人々が駆けつけて、あっさり事件は幕引きとなった。


「それで、結婚式はいつされるの?」

「えぇと、来週だわ。これ招待状。来なかったら今度こそお友達辞めるわよ」

鍵姫の為にあてがわれた部屋。

昼下がりの午後、リスタとオルカは二人で仲良く紅茶を飲んでいた。

「葡萄がそろそろ美味しくなるわ」

「そうそう、式では葡萄酒振る舞うから、必ず飲みなさいよ」

「え、わたしお酒は苦手......」

「いいから!」

あの後、アフィルトが貴族の資格を剥奪され没落したかのように見えたが、リスタの許婚が婚約を破棄しなかったことで没落は免れたらしい。

鍵姫を狙った理由は、自由に国を動かしたい以外分からずじまいだったがそんなことはもう、どうでもよかった。

「そういえば、国王様えっとお父様にも挨拶したのよ。お母様なんて失神してしまったわ」

「家族が見つかってよかったじゃない。本物の鍵姫だったのだし」

「実感は沸かないし、記憶もまだ戻らないのだけどね」

そこまで話した時、扉が開いてクラウスが姿を見せる。お邪魔しちゃ悪いわねとリスタが、入れ替わりに部屋を出て行った。

この間の告白から一週間。オルカはまだ、答えを伝えていない。

「オルカ」

「はい」

「この間の返事、さっさと寄越せ」

テーブルに手をついて顔を近づけられると、オルカの頬も自然と暑くなる。

今日こそは、きちんと伝えよう。

「わ、わたしも、その、好きよ」

「嘘偽りなく?気を遣ったとかでも無く?」

「しつこいわね!好きに嘘も何も無いわよ!わたしはクラウスが好きなの!」

大声で告白してから、オルカは扉が開け放してあることに気づく。そしてその向こうには、気まずそうな顔のシュバルツが居るわけで。

「ごめん、聞いちゃった」

「あーこいつが悪いから問題ない」

「わたしが悪いって言いたいの?」

「じゃあ、これ詫びだから」

お詫びと言われて首を傾げていると、唇に何かが触れてすぐに離れる。

キスだったと気づくのに、数分。

オルカの顔が真っ赤に染まるまで、十数秒。

シュバルツが呆れた顔をして、クラウスを叩く。

「見せつけてくれるな」

「お前は、さっさと帰ってセレス様の店手伝え。寧ろ転職しろ」

「セレス様の好きな相手ってシュバルツだったの?」

「来月、子供産まれるんだ」

あっさりと言われて、その場にいた二人は固まる。進展しすぎではないか。

「おい、会議」

「あ、急がないと」

ベールを被って、クラウスの腕を引く。真っさらな青空がそこには広がっていた。

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