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小さく扉を叩く音がして、返事をする。少し遅れて開いた先には、アフィルトを始めとする貴族数名が居た。
「鍵姫様、やはり貴女には死んでもらう」
「怪我人が居ますよ、そんな不謹慎なこと口にしないでください」
「貴女は本物の鍵姫だった」
「何を、言って」
「エルピス王国第四王女オルコット・セレスティアーナ・エルピス」
アフィルトの言葉に側に控えていた貴族が、資料を朗読する。
王国の秘密事項、王女オルコット毒殺未遂事件により王女の入れ替えを実行。新たな王女の名は、セレスティアーナ・オルコット・エルピス。
セレスは、国王の隠し子で庶民の仕立て屋の母を親に持つ娘だった。
一方のオルカは、確実に王族の血を引き前世の記憶を持つ本物の鍵姫。
オルカは、驚きを隠せないまま無意識にクラウスの腕を掴んだ。
「そんな、だってわたしには前世の記憶なんて」
「それはご自身で封をされたのでしょう?」
頭の中で警告音が鳴る。
思い出したくないことを思い出した。
「わたしは、鍵姫であることが嫌だったのよ、周りは皆鍵姫としてでしかわたしを見てはくれなかった」
「前世の記憶に封をすることで、役職としてでなく、ひとりの人として見てもらえると思ったわけだ」
「さぞ、お辛かったでしょうね。今楽にして差し上げますよ」
そうだった。
あの時、前世の記憶が消えたと王宮中で大騒ぎになってその最中に毒殺未遂事件。オルカを生かす為には、入れ替えを行うしかなかったのだ。
「それでは、身代わりだったのはわたしでなく、セレス様の方」
「セレス様は聞き分けが良かった。操り人形になれないお人形は、消してしまわないと」
「その役、わたくしが引き受けますわ」
「リスタ......」
ナイフを握って現れたのは、リスタだった。街での襲撃の時、敵が名前を知っていた理由はそういうことか。
「最初から友達ではなかったのね」
「物分かりはいいのね、オルカ」
「素敵な方だと思ったのに。前向きで考え方も素敵で何でも知っていて」
最初から近づくために、少しでも情報を得る為に。考えることも、混乱することも無くなるなら、それはそれでいい幕引きかもしれない。
「友達として大好きだったわ、リスタ」
「もっと別の出会い方をしていれば私達は、いいお友達になれたでしょうね」




