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オルカが不安だったのは、クラウスの怪我が治りきっていないこと。ましてや複数対一ともなれば、いくら強くても無理がある。
クラウスと鍵姫を天秤にかけて揺れるオルカを他所に戦いは始まった。
刃の交わる音が響く。相手は三人。
あまり動くと、クラウスの傷口が開いてしまう。
オルカは、彼の背中から飛び出し戦いの中心に入り込んだ。
「そこまで!わたしの事をどうしようが構いませんから、彼は」
「戯け、思い上がるな」
「姫様には教会で座っていて頂ければいい」
「ただ、専属騎士は抜きでな!」
狙いはクラウスだった。
突き飛ばされたオルカは、再び刃が交わったのを見て狼狽える。
「専属騎士がいると作戦に支障が出るからな!」
「作戦......?」
流れるような戦いだが、クラウスは防戦一方だ。傷口が開くのを恐れてだろうか、思うような動きは取れないようだった。
ここで戦いを止めなければ、彼が危ない。そう悟ったオルカは、近くにあった石を適当に投げつける。コツンと何かに当たる音はしたから、誰かに当たったのだろう。それがクラウスではないことを祈りつつ、次の石を握った。
「邪魔しないでくださいね、姫様」
「無意味な戦いはやめてください」
「そういう訳には行かないのですよ、オルカさん」
「どうして、わたしの名前を」
目を見開くオルカは、自身の名前を教えた人を思い出す。
クラウスとシュバルツ、コリストスは元々知っていたしあとは、セリスとリスタくらいしか思い浮かばない。
「狙いはそっちじゃないんだろ、まだ」
鉋が飛んできて、オルカに話しかけていた人が離れる。
「後でしっかり手当して貰うからな」
「クラウス!」
傷口が開くことを覚悟したのか、クラウスの動きが機敏になる。
背中の長い騎士制服が、綺麗に翻る。そういえば、騎士制服は模擬戦の時に綺麗に見えるように作られているのだっけ。
そんなどうでもいいことを思い出しつつ、オルカはクラウスの戦いを見やる。
勝負はあっと言う間だった。
クラウスのシャツが血で染まっているがその血は本人の物か、他人のものか。
「ほら、帰るぞ」
「傷口は?開かなかった?」
「さぁ?」
「さぁ?ではないわよ!自分のことでしょう!わたしばっかり心配して」
先ほど同様に抱き上げられて、暴れない代わりに今度は文句をいいつけてやる。
教会へ戻ると自分の手当はそこそこに、クラウスの方を優先する。




