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外では大きな花火の音が鳴っていた。大教会の控え室にオルカは居た。
「そんな訳もなかったわね」
早朝にここへ案内されてから、ずっと籠りっぱなしでは流石に気が滅入る。頻繁に扉が開いて挨拶されるからと、被りぱなしにしていたベールが急に外れた。
「辛気臭い顔ね」
「リスタ!」
振り返ると綺麗な金髪が目に入る。リスタが来てくれたことが凄く嬉しい。オルカは目を輝かせた。
「どうせ、出店少し見たかったなぁ、出来ればあの方と共に。何て考えていたのでしょう?」
「どうして分かるの?」
「わたくしを誰だと思って?」
「流石だわ、リスタ」
やっぱりリスタには敵わない。
部屋に誰も居ないのを確認して、リスタはオルカに耳打ちする。
「行ってらっしゃいな」
「え?」
「ここはわたくしが何とかして差し上げるわ。だから、行ってらっしゃい。夜には戻るのよ」
「いいの?ありがとうリスタ!」
勢いよく立ち上がったオルカは、扉の外で門番の如く立っているはずのクラウスの元へと向かう。突然ベールも被らずに現れたオルカに注意しようと思ったのか口を開きかけたクラウスだが、そんな間も無く引っ張られる。
「おい!何考えて」
「いいから!」
教会を出た辺りで、ようやくオルカは足を止める。ここに来るまでに、よく誰にも気にかけられなかったと思う。
息を整えたオルカは、やはり息ひとつ乱れていないクラウスを笑顔で振り返る。
「今から夜まで、わたしは鍵姫ではなくただのオルカに戻るわ。だから、クラウスも騎士としてでなくひとりの貴方として一緒に過ごして欲しいの」
「......夜まで、だからな」
「では、行きましょう!」
渋々といった風なクラウスに、オルカは元気よく教会沿いの路地へと向かう。そこなら出店が沢山出ていると聞いていた。
歩いていけば、人々で通りは賑わっていた。
「初めて見るものばかりだわ」
「どこの箱入り娘だよ」
「こういうお祭りものは、苦手だったから行ったことないのよ」
気にはなっていたんだけどね、などと言いながら目に入った出店で、りんご飴を買ってオルカは歩く。少し後ろを歩くクラウスが気になって仕方ない。どうして隣を歩いてくれないのだろう。
「ねえ、隣並んで歩いてもいい?」
「一々聞くな」
「だってこれでは、普段と変わらないじゃない」
折角、お互い役職を忘れると決めたのにこれでは意味をなさない。
一歩後ろに退いて、クラウスと並ぶ。
「クラウスは、好きな人、とか居るの?」
「は?」
「あ、えっと何と無く。仕事一筋って風に見えるから」
「どうだか」




