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三章

三章


某日、アフィルトの屋敷。

その部屋には、上流貴族とその娘、それから中流貴族の総勢五名が、丸くなって何やら相談をしていた。

アフィルトが勢いよく拳をテーブルに叩きつける。それもそのはず、最近どうも鍵姫が思い通りになってくれない。

「どうなってるんだ!」

「お父様、どうか気をお鎮めになって」

「姫様が操り人形じゃなくなったのは、いつからだ?」

誰かの声に一同は、しんと静まりかえる。思い当たる時期は、皆同じ。

「王都視察の時か!」

「王都視察で何があったと言うのだ」

「確かに、視察如きで左右されるような姫様ではないな」

というかあれだけ脅しておいて、ちょっと街を、しかも平和そのものの王都を視察した所で心変わりしたとは思えない。

そう考えると、どうなのか。

再び唸りだした一同に、リスタがふと顔を上げた。

「そう言えば、鍵姫様のお名前はご存知?」

「今更何を。気でも触れたか?」

「失礼ね、いいから答えなさい」

「セリスティアーナ様だろう?」

四十二代現鍵姫は、第四王女セリスティアーナ。

そんなの国中誰もが知っている常識の範囲内だ。

「それよ!」

「は?」

「この間お話した鍵姫様は、オルカと名乗っていたわ!庶民くさい名前だと思ったもの」

リスタの言葉に、その場にいた人々はざわめく。会議となれば、あれだけ気丈に振る舞う鍵姫がそんな所でぼろを出したか。

「それじゃ、今鍵姫として立ってるのは別人......」

「鍵姫の偽物なんて前代未聞だぞ」

「偽物かどうかは、また別のお話よ」

再び部屋は静まりかえる。同性なら何か情報を持ってくると踏んで、娘を近づかせたのは正解だとアフィルトは満足する。

「あの子が本物で、セリスティアーナ様が偽物だった可能性もあるわ」

「一体どういう事だ、それは」

「容姿よ。瞳が綺麗な夜色をしていたの。まるで伝承の鍵姫そのものの容姿をしているの」

ややこしい話に、理解しようとその場に居合わせたほとんどが頭を抱える。そこを分かりやすくしたのは、アフィルトだった。

「セリスティアーナ様には、前世の記憶がなかったって噂知ってるか?」

「昔出回った噂だろう、それなら......あ!」

「その噂が本当なら、オルカが本物の可能性もあるってことね」

「脅しが効かないのも、鍵姫がセリスティアーナ様ではないから」

ここまで憶測を立てて確信出来れば、あとはどうするか分かっている。アフィルトは、満足げに笑った。これで今の鬱陶しい鍵姫からこれまで通り操り人形の鍵姫で好き勝手出来る。

「セリスティアーナ様を連れ戻せ。それから、今の鍵姫を消すぞ」

「消すって言っても、専属騎士がべったりよ」

「あれは今手負いだから、そんなに動けないはずだ。決行は感謝祭いいな」

アフィルトの言葉に、リスタを含めたその場に居る全員が頷いた。


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