26.生者の音は光に似
多分、私は響くんが好きだ。
いや、いきなりなんだとか思うかもしれないけど、聞いて!
初めて会った時から好きではいたの。でも、ちゃんと自覚したのはつい最近。
響くんからスキンシップをされると、私の心臓は爆発寸前になるくらい高なってしまう。話すだけでファンファーレが鳴り響いている気がするのは、多分気のせい。
好きになったきっかけ……吊り橋効果みたいなことも重なったんだと思う。
あの、体育館の生首事件を初めて見たあと、あまりにもショッキングな光景だったから、心身ともに疲弊していた。
そしたら、響くんが私の背中を撫でてくれて! あ、それはまだいいの。嬉しかったし、その後、頭を撫でられるとは思ってもみなかったけど……
私からのスキンシップは、私主導だから全然平気なんだけど、響くんからのはやっぱり少し恥ずかしかった。
その恥ずかしさを意識しないように、話題を変えたんだけど、それもまた失敗。
響くんの目が見たくて、覗き込んだらいきなり「綺麗な音だね」って言うんだもん!
世界を音で認識している響くんから、そんな言葉が出るなんて……私、自惚れてもいいのかな? って思った。
多分、これがきっかけ……というか、最後のひと押しだったと思う。
この日は帰る途中で転びそうになりながら走って帰った。
走って体温をあげれば、きっと、顔の赤さもバレないと思ったから……
次の日は、もう自分でも分かるほど挙動不審だった。
結果的に、響くんに酷いことをしてしまったから、すごく反省した。
でも、棒読みだとしても、響くんから「寂しかった」って言葉を聞けたから、ある意味よかったかもしれない。
だってそれって、私と話したかったってことだよね? 私が恋しかったってことだよね?
そう伝えると、響くんは私から顔を背けた。でも、耳が少し赤くなってるから、バレバレなんだよね。
口では「違う」って言うけど、案外違うわけでもないことが嬉しかった。
まあ、その後クラスメイトたちに見られていたことに気づいて、すごく恥ずかしかったけど!
それはそれ、あれはあれ!
人を好きになるって、不思議なことだと思う。
人と関わることすら苦手だった私が、誰かを好きになるなんて、夏真っ盛りなのに雪が降りそうなくらい、ありえないことだった。
好きになると、その人のことが、もっとキラキラして見える。
その人のことをもっと知りたくなる。
その人と、ずっと一緒にいたくなる。
沢山話していたいのに、休み時間はあっちこっちから話しかけられて、響くんと全然話せない。
それが不満で、響くんに相談したら……
「昼休みは空き教室に逃げる?」
なんて言ってくれた。
しかも、何が面白かったのか分からないけど笑顔付き!
でも、そう言ってくれたことが嬉しくて嬉しくて! 有頂天だった。
初めて会った時には、考えられないような提案。
少しは、響くんも私のこと好きなのかな? とか考えてしまう。
好きになってほしいかと聞かれると、少し悩む。
相手に自分の感情とかを押し付けたくないから。
でも、少しくらいは好意を持っていてほしい。無関心はちょっと嫌だ。
それに、今は恋をしているのがとっても楽しいから! 響くんとの毎日がすごくすごく楽しいから! 今のままで十分かな?
『初恋は叶わない』とよく言うけど、どうなのだろうか?
私にとってこれが、正真正銘の初恋。人生で初めて好きになった人が響くん。
叶ってくれたら嬉しいけど、それは未来の話。
分からないことを悩むより、今を楽しんだ方がきっといい!
響くんは、結構感情に敏感だった。
私がご機嫌だと、「今日はご機嫌だね」とか言ってくれる。
逆に機嫌が悪いと、「どうしたの?」って心配してくれている……のかは分からないけど聞いてくれる。
音で分かるんだろうけど、精度が凄すぎる。
筒抜けの感情が少し恥ずかしいけど、気にかけてくれるのが嬉しいから、なんでもいいや! って楽観的な思考になるのは私の長所だと思う。
今日も、響くんと話している。
一方的に私が話しているだけだけど、ちゃんと聞いて、たまに質問してくれるから全然いい。
あ〜あ、こんな毎日が続けばいいのに!




