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生者の音と死者の音  作者: 狐久里 あみ
生者の音は光に似ている
24/33

24.生者の音は光

響くんと過ごす毎日は、とても楽しい。


 毎日のように、放課後は学校を探検していた。

 死者を見つけては祓って、何も無い時はおしゃべりして、ただただ平和な時間を過ごしていた。

 響くんだけじゃない。ちゃんと友達も出来た。

 白峰 凪(しらみね なぎ)ちゃん。初めて会った時は響くんと学校探検をしていた時。

 初めて声をかけられた時は驚いたし、嬉しかった。名前が分からなくて困っていたら、響くんがさりげなく教えてくれて、それもまた嬉しかった。

 凪ちゃんはクラス委員長をしていて、大人しい子かな? とか思ってたら、まさかの部活は薙刀部!

 薙刀を振るう姿を見せてもらったけど、かっこいいのなんのって! それを響くんに伝えたけど、あれは聞いていたか分からない。


 他にも三人、お友達ができた。昔の私に言ったら、絶対信じてくれないと思う。

 全部響くんのおかげ。ありがとうだけじゃ足りないくらい、感謝の気持ちでいっぱいだ。多分本人に言っても「なんのこと?」とか言われそうだけど。


 お友達になってくれた子は、学年首席の男の子榊 澪(さかき みお)くん。頭が良くてスポーツ万能。

 凪ちゃんにもファンクラブがあるらしいけど、澪くんにもあるという噂を聞いた。この学校、何個ファンクラブがあるんだろう?

 私がファンクラブを作るなら、響くんを巻き込みたいな! 絶対嫌がられるとは思うけど……

 そして、双子の姉妹の水瀬 朔(みなせ さく)ちゃんと水瀬 望(みなせ のぞむ)ちゃん。

 この二人は、どっちが姉でどっちが妹かははっきりしていないらしい。でも、なんとなく朔ちゃんがお姉ちゃんっぽいなって私は思った。

 そして二人は多分、見えている側。たまに死者がいる方を見たり、さりげなく避けたりしてるから。

 でもあえて何も言わないでいる。見てないところで祓ったりはするけど、その程度。

 普通の人は、見えていることを隠したがるから。たまに、見えてるよって自慢してくる人もいるけど、意味ないからやめた方がいいよ。むしろ危ないし……


 そんな素敵な友達がいるけど、私は若干不満だった。

 それは、友達と話している時は、響くんが私に構ってくれないこと。

 話に入ってくればいいのに、どこか行ったり、窓の方を向いて知らんぷり。

 友達が少ない響くんにも、友達が出来たらいいのにと余計なお節介を焼いてしまう。それなのに、心のどこかでは『私だけが友達でいられればいいのに』なんて、酷いことまで考えてしまう。

 この気持ちはどうしたらいいんだろう?



「千鶴ちゃん、今日の放課後時間ある?」


 昼休みに話しかけに来てくれた凪ちゃんから、問いかけられ思わず響くんの方を見る。

 放課後は、響くんと沢山話せる時間だけど、どうしよう……


「あ、全然緊急とかじゃないから断ってもいいんだけどね? 今日は澪くんと朔ちゃんと望ちゃんと私の四人で放課後遊びに行くから、千鶴ちゃんもどうかな? って」


 心の天秤が大きく揺れ動く。

 すごく行きたい! 友達と放課後に遊びに行くなんてやったことがないから、すごく行きたい!

 でも、響くんとの時間が無くなるのも嫌で、うんうん悩んでたら隣から「行けばいいじゃん」と小さく声が聞こえた。

 多分、迷ってる音を聞いて言ってくれたんだと思う。

 でも……


「ごめん! また今度誘って欲しいな?」


「わかった。また今度遊びに行こうね」


 手をパチンと合わせて断ると、凪ちゃんは少し迷ったような顔をしてから、にっこりと微笑んで席を離れていく。

 教室の入口近くにいた三人にもごめんというポーズをして謝ると、手をヒラヒラと振ってくれた。

 その時の望ちゃんの表情が少し硬かった気がするけど、気のせいかもしれない。



「本当に良かったの?」


 放課後、響くんといつも通り話しているとそんなことを聞かれた。


「え? なにが?」


「昼休み。遊びに誘われてたでしょ」


「あぁ〜! それね!」


 まさか響くんにそんなことを聞かれるとは思わず、驚いた。

 気にするような子じゃないことは、毎日話しててわかっていたから。


「全然良くない! すっごい行きたかった!」


「……なら行けばよかったじゃん」


 全く理解できませんという顔で言う響くんに、ニコリと笑ってみせる。

 ……が、見えていないので全く意味ない。


「行けばよかったんだけどね、行くより響くんと話したい欲が勝っちゃったから」


 そういうと、なんとも言えない表情で私を見つめる。

 何も映さない瞳に私だけが映っている。


「響くんは、行って欲しかったの?」


「……僕といるより、友達を優先した方がいいと思う」


 答えになっていない答えを返す響くんの声は、なんとなく寂しそうだった。

 口ではそういうが、本心では違うのかもしれない。

 実際、響くんの表情は少し曇っている。本人は見えないから知らないだろうけど、意外と響くんは表情に考えていることが出やすい。


「私は響くんと居たいから断ったんですけど〜?」


 だけど気づかないふりをして、少しむくれたような、拗ねたような声で答える。

 すると、響くんは目を見開いて驚いたような顔をしていた。


 (何その顔! 初めて見た!)


 初めて見る表情に、喜びを隠せない。まあ、しょうがない。

 響くんの可愛い顔が、いつも以上に可愛く見える。

 でもその表情はすぐに消えて、今度は照れたような表情をしていた。


「そ……」


 その一言だけで、響くんの気持ちが伝わってきた。

 

 照れるほど喜んでくれて、私は何よりです!

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