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生者の音と死者の音  作者: 狐久里 あみ
生者の音は光に似ている
19/32

19.生

私は落花 千鶴(おちばな ちづる)、高校2年生!

 今日から新しい学校に転校することになって、もうドキドキ!

 新しい友達ができるといいな〜!


 ……なんて、漫画やアニメの主人公のようになんてなれない。

 家の都合で地元に戻ってきて、今日から新しい学校に行くことになった。

 真新しい制服に身を包んで、長い髪を低い位置で二つに結ぶ。

 鏡の中の私は、不安そうな目で私を見ている。

 気合を入れるために頬をパチンと叩いてみるけど、痛いだけで気分は全然上がらない。


 同じ制服を着ている子たちの流れに乗って、学校を目指す。

 生者と死者が入り乱れる通学路に、思わず足を止めそうになった。

 私の家系は特殊で、『祓い屋』というものをやっている。だから、普通の人には見えないものまで見えてしまう。


 ズルズルと足を引きずりながら歩く女子生徒や、「おはよう」と言い続けている男子生徒。

 子供たちは小学生の集団に混ざり、キャラキャラと笑いながら走り去っていく。

 わかりやすい死者ならまだいい。時折、生者と区別がつかない死者がいる。ここにもいるかもしれないと思うと、上手く祓うことができなかった。


 校門では、先生が立っていた。

 その隣には、先生を真似るかのように「おはよう」と繰り返す人……。

 一定の間隔で、何度も挨拶をしている。だけど、誰も気づかない。私だけが気づいていた。

 こんなおかしな世界を、私だけが見ていた。



 職員室にたどり着き、挨拶をする。

 この職員室にも、死者がいた。多分……

 自信が持てないのは、あまりにも『先生』だったから。

 にこやかに笑いかけてくれて、「今日から? 頑張って」なんて言ってくれた。

 お礼を言おうとしたけど、担任に当たる先生はその人が見えていないみたいで、私を教室へ促した。


 軽い雑談をしながら教室に向かう。

 ガラガラと戸を開いて中に入る先生の後に続いて、私も中へと入る。

 内心バクバクしながら前に立つけど、どこを見ていいのか分からない。

 教室にいる全員が、私を見ていた。生者も死者も……


 (いや、居すぎじゃない!?)


 私が死者だと認識したのは五人。一人は先生に付いてきたから、残りの四人は元から教室にいたことになる。

 どうなってるんだこの学校! と思いながらも、心を落ち着かせてから自己紹介をして頭を下げる。


「落花 千鶴と言います。よろしくお願いします」


 何とか噛まずに言えたことにホッとする。

 パラパラとまばらな拍手をもらいながら、先生に促されて窓側の後ろの空いている席を目指して歩く。

 その途中で、つま先をコツリと鳴らして死者を散らす。

 完全に祓えたわけじゃないから、後でちゃんと祓わなきゃ……

 

 窓側の席には男の子が座っていたから、その隣の空いている席の椅子を引く。


「よろしくね」


 なんて言ってみるけど、返事は返ってこなかった。

 それどころか、私の方をちらりとも見てくれなくて、少しだけへこんだ。


 その男の子は、なんだか不思議な雰囲気をした子だった。

 周りの子たちが『動』なら、その子は『静』って感じ……?

 うまく説明できないけど、凄く静かな子。

 全てが静かで、まるで「生きていないみたい」なんて、酷いことを考えてしまった。

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