19.生
私は落花 千鶴、高校2年生!
今日から新しい学校に転校することになって、もうドキドキ!
新しい友達ができるといいな〜!
……なんて、漫画やアニメの主人公のようになんてなれない。
家の都合で地元に戻ってきて、今日から新しい学校に行くことになった。
真新しい制服に身を包んで、長い髪を低い位置で二つに結ぶ。
鏡の中の私は、不安そうな目で私を見ている。
気合を入れるために頬をパチンと叩いてみるけど、痛いだけで気分は全然上がらない。
同じ制服を着ている子たちの流れに乗って、学校を目指す。
生者と死者が入り乱れる通学路に、思わず足を止めそうになった。
私の家系は特殊で、『祓い屋』というものをやっている。だから、普通の人には見えないものまで見えてしまう。
ズルズルと足を引きずりながら歩く女子生徒や、「おはよう」と言い続けている男子生徒。
子供たちは小学生の集団に混ざり、キャラキャラと笑いながら走り去っていく。
わかりやすい死者ならまだいい。時折、生者と区別がつかない死者がいる。ここにもいるかもしれないと思うと、上手く祓うことができなかった。
校門では、先生が立っていた。
その隣には、先生を真似るかのように「おはよう」と繰り返す人……。
一定の間隔で、何度も挨拶をしている。だけど、誰も気づかない。私だけが気づいていた。
こんなおかしな世界を、私だけが見ていた。
職員室にたどり着き、挨拶をする。
この職員室にも、死者がいた。多分……
自信が持てないのは、あまりにも『先生』だったから。
にこやかに笑いかけてくれて、「今日から? 頑張って」なんて言ってくれた。
お礼を言おうとしたけど、担任に当たる先生はその人が見えていないみたいで、私を教室へ促した。
軽い雑談をしながら教室に向かう。
ガラガラと戸を開いて中に入る先生の後に続いて、私も中へと入る。
内心バクバクしながら前に立つけど、どこを見ていいのか分からない。
教室にいる全員が、私を見ていた。生者も死者も……
(いや、居すぎじゃない!?)
私が死者だと認識したのは五人。一人は先生に付いてきたから、残りの四人は元から教室にいたことになる。
どうなってるんだこの学校! と思いながらも、心を落ち着かせてから自己紹介をして頭を下げる。
「落花 千鶴と言います。よろしくお願いします」
何とか噛まずに言えたことにホッとする。
パラパラとまばらな拍手をもらいながら、先生に促されて窓側の後ろの空いている席を目指して歩く。
その途中で、つま先をコツリと鳴らして死者を散らす。
完全に祓えたわけじゃないから、後でちゃんと祓わなきゃ……
窓側の席には男の子が座っていたから、その隣の空いている席の椅子を引く。
「よろしくね」
なんて言ってみるけど、返事は返ってこなかった。
それどころか、私の方をちらりとも見てくれなくて、少しだけへこんだ。
その男の子は、なんだか不思議な雰囲気をした子だった。
周りの子たちが『動』なら、その子は『静』って感じ……?
うまく説明できないけど、凄く静かな子。
全てが静かで、まるで「生きていないみたい」なんて、酷いことを考えてしまった。




