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第十話 3/4 「新たな力」

 リナに連れられて三人は武器屋に向かった。


 ギルドから路地を二本入ったところに、年季の入った看板が下がっていた。扉を押すと鈴が鳴り、金属と油の混じった匂いが漂ってくる。棚には剣や槍、盾が並んでいるが、杖の類は隅の方に数本まとめて立てかけてあるだけだった。


「いらっしゃい。ガチャから手に入るのにわざわざ買いに来る客は久しぶりだな」


 カウンターの奥から顔を出したのは、白髪まじりの初老の男だった。片腕の袖が途中から縫い留めてある。元冒険者だろうか。


「杖を探してます。攻撃系で」


 セラが言うと、男は棚の端を顎で指した。


「そっちにあるやつで全部だ。あまり需要がないんでな。魔法使いはたいてい自分でガチャを引く」


 並んでいたのは五本。手に取って確認していくと、ステータスはどれも似たり寄ったりだった。以前リナが言っていたように、★3武器にはスキルが最初からついているようだったが、★2の武器は一本のみ。



【★2 攻撃杖「魔導師の杖」】

【魔法攻撃力:31 回復力:0】

【スキル:なし】



 凸は全くされていない。ここから二十五本集めるのは骨が折れる。


「同じやつ、在庫ないですか」


 店主はちらりとトクナが手に取った武器を見て鼻で笑ったようだった。


「それ一本だけだな。問屋から入ってくるのも不定期で、次はいつになるかわからん。わざわざ★2武器を欲しがるやつはいないしな」


 男は悪びれた様子もなく言った。


「ほむらの枝杖って知ってるか」


 トクナが聞くと、男は少し目を細めた。


「当然知ってるよ。ガチャで出る★1だろ。あれは誰も欲しがらないから入荷しない。冒険者だったら鍛冶屋で素材に分解するのが常識だろう」


「どこへ行けば」


「ガチャを引き続けるしかないな。もしくは運がよければ、外の宝箱に入ってることもある。最近は若い冒険者がみんなガチャに頼るから、外の宝箱を開ける者が減った。案外拾えるかもしれないぞ」


 男はそれだけ言って、また作業に戻った。


 結局、魔導師の杖を一本だけ買って店を出た。店主は★4の杖を執拗に勧めてきたが、トクナは何度も断った。


「宝箱、探すか」


 疲れの混じった声でトクナが言うと、リナは「すまない、さっさと帰ればよかった」と呟いた。





 ナイフのスキルで気配を探りながら町の外周を歩いた。城壁沿いの道は人通りが少なく、石畳の継ぎ目に草が生えている。


 しばらく歩くと、反応があった。


 城壁の根元、蔦が絡みついた石積みの隙間に木箱が半分埋まっていた。年季が入っていて、蓋の端が腐りかけている。それでも鍵穴はまだしっかりしていた。ナイフの柄で叩くと、鍵なしで開いた。


 中に杖が二本、重なって入っていた。



【★1 攻撃杖「ほむらの枝杖」】

【★1 攻撃杖「ほむらの枝杖」】



「あった」


 セラが声を上げた。


「ほんとに入ってた」


 リナが少し驚いた顔をした。


「箱の見た目で★1、2武器が入っていることがわかるからわざわざ開けたりしないんだろう」


 トクナは二本を取り出してセラに渡した。その場で合成する。凸が進み、スキル欄が埋まっていく。ほむらの枝杖と魔導師の杖を交互に見比べながら、セラは少し考えてから口を開いた。


「スキルの方向が違うので、それぞれ育てたいです」


「両方か」


「重いですけど、両方持ちます」


 その日は町の外でも宝箱探しを続け、夜に宿に戻ってから三人で残りの凸を続けた。途中冒険者ギルドで追加でガチャを引き、出てくる杖を片端から合成した。日付が変わる頃、ほむらの枝杖が25凸に届いた。



【★1 攻撃杖「ほむらの枝杖+25」】

【魔法攻撃力:68】

【スキル1:炎魔法のダメージが5%アップ】

【スキル2:火球乱射(小型の火球を同時に五発放つ。)】



「五発同時」


 リナが読み上げた。


「強そうか」


「強そうです」


 セラはそれだけ答えて、杖を両手でしっかり持った。明日が楽しみ、という顔だった。





 翌朝、冒険者ギルドに着くと、受付嬢がちょうど掲示板の依頼を整理していたところだった。


「今日の分が出たところです」


 Cランク。ダンジョン二層のオーク討伐。《ダスト・エッジ》のレベルで十分こなせる依頼だった。


「攻撃杖の練習になるかもしれないですね」


 セラが依頼票を受け取りながら言った。攻撃用と回復用の杖で二本持っているせいで荷物がいつもより多い。それでも足取りは軽かった。

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