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第一話 2 「くすんだナイフ、十凸」

ギルド前の石畳に、トクナは座り込んだ。


(なんだったんだ、これは)


 怒りがないわけじゃない。でもそれより、疲れていた。死んで、転生して、騙されて、追い出された。たった一日でここまで落ちるとは思わなかった。


 現代日本でもそうだった。要領よく生きることが苦手で、損な役回りばかり引いてきた。場所が変わっても、変わらないものがある。


 ナイフを光に透かしてみる。くすんだ銀色。刃こぼれもある。


 溜息をついて、ステータス画面を開いた。



【トクナ】

【職業:転生冒険者 レベル:1】

【装備:★1短剣「くすんだナイフ」】

【アイテム袋:★1短剣「くすんだナイフ」×1】



 アイテム袋のナイフは、クレスに押しつけられた一本だ。今の装備と、まったく同じもの。

 手の中でナイフを二本、弄んでいると、視界に文字が浮かんだ。



【同じ武器を合成しますか?】



 ソシャゲと同じ画面だ、とトクナは思った。同意すると、ナイフは一本になり……



【★1 短剣「くすんだナイフ+1」】

【攻撃力:9】

【スキル:なし(解放まであと9)】



 スキル欄が変わっていた。さっきまで「なし」だけだったのに、今は「解放まであと9」とある。

 つまり、あと九回合成すればスキルが開く。トクナがよく遊ぶゲームでも同じ武器を複数本集めることで新しいスキルが使えるようになることもある。

 これは——いける。





 トクナは立ち上がり、ギルドの中に戻った。

 ガチャを回した冒険者たちが去ったあと、床に転がったままのくすんだナイフを数えると、六本あった。誰も拾わない。ゴミ扱いだ。こっそり拾って合成すると……



【★1 短剣「くすんだナイフ+7」】

【攻撃力:15】

【スキル:なし(解放まであと3)】



 あと三本。


 町の外に出ると、入口近くの道端にボロボロの宝箱があった。


「それ、見た目で中身がわかるから誰も拾わないんですよ」


 城門横の警備兵が苦笑いした。

 蓋を開けると、くすんだナイフが二本。トクナは礼を言って、道を進んだ。




 残り一本。


 町から離れると草むらが続いていて、足元から青いスライムが飛び出してきた。二体、三体。転がりながら距離をとり、草むらを走り抜けると、雑草の根元に光るものを見つけた。

 くすんだナイフ。一本。

 拾って走り、スライムを振り切って、息を切らしながら合成した。


 光が弾けた。



【★1 短剣「くすんだナイフ+10」】

【攻撃力:18】

【スキル:見えない宝箱が見えるように】



 トクナは、しばらくその画面を眺めた。

 見えない宝箱が見えるように。


 ゴミと言われた。押しつけられた。それでも拾い続けたナイフが、誰も知らないスキルを持っていた。

 この世界に、ゴミなどない。



 ギルドの扉を開ける。

 石畳の上に夜の風が吹いていた。ナイフの刃が、街灯の光を静かに反射した。

 本当の冒険が、今ここから始まる。

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