表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/36

第五話 2 「足りない火力」

 再びオーガの前に立った。


 同じ場所。同じ敵。


 だが、こちらは違う。


 通路に入った瞬間、視界に光が滲んだ。壁際と、それから——オーガの足元、少し右寄りの床に、薄く光る輪郭があった。


(あそこに、前回は見えてなかった宝箱があるな)


 色は紺色だろうか。今までの宝箱はのっぺりとした装飾のほとんどない箱だったが、今回のは縁が焦げ茶色の木で縁取られており柄の装飾もある。


(つまづかないように気を付けないと)


 新しく宝箱が見えるようになったのはアイテムの入手が用意になった反面、障害にもなり得るということだ。



 オーガが棍棒を構えた。


 トクナもロングソードを抜いて構える。ナイフは腰に。


 トクナが先に踏み込む。ロングソードがオーガの脇腹に入った。ナイフよりもリーチが長いのも意味があった。


 オーガについた薄い傷。そこに紫色のパーティクルが現れると同時に握ったロングソードも刀身がうっすらと紫で光る。スキル「鈍化」が発動した。


 オーガの動きが、目に見えてぎこちなくなる。棍棒の軌道が読みやすくなった。一歩引いてかわし、また入る。また鈍化が重なる。動きがさらに鈍くなっていく。


 (いける)


 確かな手応えがあった。削れている。オーガのHPが減っていく。


 それでも横薙ぎにされる棍棒にかすっただけで体力は削られる。


 だが、


「回復します」


 すぐにセラの声が届く。安定している。このまま削り切れる——そう思ったとき。


 オーガが動きを変えた。


 棍棒を両手で持ち直し、大きく振りかぶる。鈍化しているはずなのに、その一振りだけ異様に速かった。渾身の一撃だ。


 単純で直線的な攻撃。だがスピードは一段と早く、体勢を崩しながらかろうじて避けた……と思った瞬間、衝撃が体を貫いた。壁まで吹き飛んで、背中から石にぶつかる。


 視界が揺れる。立ち上がれない。頭が揺れたからかぼやける視界の中でオーガは地面に突き刺さった棍棒を引き抜こうとしていた。オーガも自分の衝撃でうまく動けないようだった。


「トクナさん!」


 セラが駆け寄る声がした。離れていたはずの彼女もダメージを受けたようで片腕をかばい、痛みを我慢するような表情だった。おそらくオーガのスキルで衝撃波が出たのだろう。


「回復します——全力で」


 光が体を包んだ。ずきずきと痛む背中が、じわりと楽になっていく。割合回復のスキルが、大きく削られたHPの分だけ一気に働いた。


「立てますか」


「……立てる」


 膝をついてから、ゆっくり立ち上がった。まだ足が震えている。それでも手の中のナイフとロングソードは、離していなかった。


 オーガがこちらを向いた。


(さっきの大技——もう一度使えるか?)


 鈍化は重なっている。オーガの動きは鈍い。あの一振りは、スキルなら連続で使うにはクールタイムが必要なはずだ。離れていたセラもダメージを食らっていた。次を打たせる前に決着をつけるしかない。


 となれば、もっとダメージの大きいところに——全力で攻撃を叩き込むしかない。


 トクナは走った。


 オーガも迎え撃つ形で棍棒を構え、横に薙ぐ。


 オーガの足元、少し右寄り——宝箱の上に足をかけた。


(ある)


 確かな踏み台になった。見えない箱は揺れない。


 蹴り上げた。体が跳ぶ。棍棒を唸りをあげて空を切った。


 オーガの顔の高さまで、一気に上がった。


「あああああああ!!!!!!」


 ロングソードを両手で握り、力任せに振り下ろした。


 ロングソードがこめかみに入る。突き刺さったロングソードはビクともしない。腰からナイフを外し、なおも向ける牙の横、顎のあたりを突き刺した。


「オオォォ!! ゴオオォ!!」


 オーガが喉から絞り出すような唸り声をあげて、ゆっくりと崩れた。




 静寂が戻ったとき、二人ともひざに手をついて息を整えていた。


「た、倒しました……?」


 セラが言った。当たり前のことなのに、少し信じられないような声だった。


「ああ」


「最後の飛びかかり、どうやったんですか。あんな高さまで跳べないですよね」


「足場があった」


「足場? あんな場所に?」


 トクナは立ち上がって、宝箱のある場所まで歩き、蓋を開く。セラが「あっ」と声を上げた。


「……たまたまな」


 宝箱の中身を確認する。魔法石が数個と——それから、杖が一本。


 回復杖だった。しかし今まで見てきたものとは違う。細く、白く、先端に淡い光を帯びている。ステータスを開いた瞬間、トクナは目を止めた。



【★4 回復杖「ニエトノの封印杖」】

【回復力:×2(装備者の回復力を二倍にする)】

【スキル:呪文封印(敵の魔法詠唱を短時間封じる)】



 セラを呼んだ。


「これ、使えるか」


 セラがステータスを見た。しばらく黙っていた。


「……本当にもらっていいんですか」


「ああ、俺は使えないし。役に立ててほしい」


「でも、こんな武器……」


「何度も確認しなくていい」


 セラがもう一度だけ「本当に」と言いかけて、口をつぐんだ。それから杖を両手で受け取った。


「……ありがとうございます。これからも頼りにしてます」


「ああ、俺も頼りにしてるよ」


「はい!」


 セラの声が、少し弾んだ。




 帰り道、紺色の宝箱から出てきた武器を見る。★3の「魔女の触れたロングソード」だ。今回オーガ戦で使ったロングソードとほとんど見た目が同じだった。限界突破をしていないのにすでにスキルがある。【攻撃速度が少し上がる】そうだ。


 初めての★3武器だった。強化すれば確かに強そうだ。


 だが元々持っていたロングソードとナイフを見比べる。こちらの方が俺には合うかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ