墨俣の攻防 後編
56)墨俣の攻防 後編
俺の首を狙う義龍は、足止めを喰らってた。侵略しに来て、足を止めては攻撃して下さいと言っているようなものだ。
首を差し出すのなら、斬ってやるのは礼儀。と言うことで墨俣へ再度の出陣が決定した。
今日は、その出陣の日…。
娘たちは、よゐ子なのでお留守番。出陣の言葉は、死ぬなよの一言…。うーん、俺って愛されてるな!!
茶々達に見送られ城を出れば、足並みの揃う兵士たちが出陣を前に整列していた。数は一万にも満たないが、それはミツの率いる兵士たちだ。
俺の方はもっと少ない千名ほど。更に言えば、俺の率いる側の兵士たちの足並みはバラバラである。何と言うか…あっちとこっち比べるとだらしない印象を受ける。
だからって、侮っては困る。これでも、精鋭中の精鋭なのだ。態度、見た目など気にすることもない。質が違うのだ。
尾張最強!とばかりも言ってられない。幕府や他の国も油断しちゃいられねえ。そちら側の対応もバッチリだ。
各地に分散配備して守りを固めさせているし…。いざとなれば、乱丸による国防結界を使って守らせる。
「手間をかけて悪かったな」
と、孫市が頭を下げた。
「そんな事ねーって。丁度、猫の手も借りたいと思ってたしな」
孫市率いる傭兵部隊雑賀衆も、今は尾張の国を守る兵士だ。雑賀衆を加えたことで、今川に向けられる戦力に余裕が出来たのは棚ぼただった。
とは言え、既に編成が出来上がっていたところでの申し出だ。再編成の手間と言うなら、俺ではなくミツに掛ける言葉だ。
「そんな事はない。信長様にも十分迷惑を掛けちまった」
「気にする必要ねーよ。ちょっとだけ時期が悪かった程度のことだ」
元々、傭兵を生業にしていた奴らだ。何処に飛ばされてもやっていけると思っていたが、案外そうでもなかった。
尾張の主な武装は、魔法銃や重火器。雑賀衆の者達には全く理解不能な兵器だった。かと言って、刀や槍だけで戦わせるワケにもいかない。
タイミング良く、俺の側で人手が欲しかったところだ。孫市の望む活躍の場がなくなるが、俺の隊に入れて後方支援を任せることになった。
「まあ、俺としては孫市の銃の腕は買っているんだ。そう落ち込むこともねーよ」
「折角、雑賀衆の頭領になったと思ったのによ…。俺ってヤツは!」
仕方がない。未だに、雑賀衆の多くの者達はカルチャーショックを受けている。上手く順応出来てるのは、尾張に潜入していた奴らだけだ。
「出撃前に何言っても、もう遅い。──────お、ミツも来たのか?」
今川に向ける兵を率いるのはミツだ。共に出陣となるが、向かう方向は違う。
「わー、凄いねって!何だよ、これはーっ!!」
四つの前輪、後輪にキャタピラーが付いた船。陸上戦艦の姿にミツの絶叫した。いや、激昂か?
文字通りの鉄壁を兼ね備える船は、異様な砦といった風情を醸し出す。仲間の兵達さえも、おっかなびっくりのビビりまくりだ。
俺と秀吉が揃えば、この程度のことは造作もない作業だ。
「どうよ、完璧な戦支度だろ?」
陸を走り、海も渡れる能力を有している水陸両用の船だ。勿論、攻撃能力も半端ない。
木瓜。と、船には書かれているが、これは船の名前。艦船名は木瓜だ。
船体から飛び出る砲台。キュウリのようにトゲトゲしい感じから、秀吉に名付けられたのだが。どうも、悪意を感じるのは何でだろう?
まあ、気にすることもないんだろうけど…。
「行き過ぎた戦力の間違いだよ!!こんな戦艦持ち出してどうするんだよ!?余計、狙われてしまうだろ!!」
気にしないといけないのはミツの方だ。
「こう言うのは目立った方が、良いんだって!敵をビビらせる為にはさ!!」
何より、その方がカッコイいじゃん。量産型の兵器じゃあるまいし、積めるものは全部ぶっ込んだのだ。
派手な装飾も更にアピールポイントなのだが、ミツには余計なものにしか見えないようだ。
「まさか!ノブが前々から作っていたのってコレのことだったのか」
「早合点してもらっちゃ困るぞ。戦艦、木瓜は、秀吉だけじゃ不安だから俺が戦の為に準備したんだ。仕上げに手間取ったせいで昨日は徹夜だ」
しかし、全然眠くない。ギンギンに興奮しちゃってる状態だ。
「もう何を言っても無駄だね…と言うか、ツッコミどころが有り過ぎてどうツッコミ入れたら良いのか分かんないよ」
「褒めてくれて良いんだぞ。一晩で仕上げたんだからな。まったく、苦労したぜ」
「まさか、一夜城とでも言うつもりなの?」
元々、秀吉が作ろうとしていた義龍打破の砦。秀吉は、攻略の手段として一夜で作れる城を考えていた。そこを口を挟んで…あーだ、こーだ、そーだ?と言っていたらねぇ。
すげーモノが出来上がってしまったぜ。だからこそ、怖い。ミツの反応が恐ろしい。
「分かっているよ。今回限りの一回限りで使えって言うんだろ。それに、これだけじゃないんだぜ。前々から作ってた、あれもあるんだからな」
「他にもあるっ!?」
「そんな驚くことでもないだろが…。安心しろよ。危険なモノじゃないんだって」
ミツが本気で止めに入ったら、跡形もなく消されてしまう。それだけは、絶対に阻止…。俺の夢と希望が詰め込まれているのだ。
「何、ニヤけてるんだよ…まったく。その顔じゃ、安心できる要素が一欠片もないよ!?こんな物騒なものを造っておいて、どの口が言うんだよ!!」
「いや、だって…。言ったら止めるだろ?」
「確信犯じゃないか!」
「確信的な犯行。否!これは革新的な産業になる!」
「言い訳になってないよね。それに…」
ミツの視線が後ろに向いた。視線の先に居るのは秀吉だ。
「ノブ様、まだ話してなかったんすか!?ミツさんには話が通ってるものだとばかり…ヤバいッス…、マズいッス…、ブチギレてッス」
「おい、どうしたんだよ。顔色悪くして、出撃前に大丈夫か?」
腹でも下したか?秀吉だし、悪いものでも食ったのだろう。
「そ、その…。ぜ…全部、ノブ様の指示ッス!!俺は無理やり協力させられただけッスから!!」
「おいーっ!?そこは黙ってスルーだろうが!!余計なでしゃばり要らねーっ!?」
それが友情ってもんだろ?!相変わらず空気読めない奴だ!!
「お、俺は基本…見てただけッス!!相槌打ってたら、ノブ様が調子に乗って作ったんじゃねーッスか!!」
ぬぬっ。さらに責任を全部押し付けるつもりか!?そんなことさせねーぞ。出撃前に説教される身にもなれっての!!
「何時かはやるだろうって思ってたよ!僕が目を離すと、すぐこれだ…。やってらんないよ、もう!!戦略?戦術?こんな物が出てきたら、全部練り直しじゃないかよ!!いっそのこと、これで突撃して自爆すれば全部終わるんじゃないの!!」
「んな!?それは俺がマジ止めるぞ!!そんな勿体無いことが、出来るか!!」
「そーッスよ!!基礎部分は俺が作ったんスよ!!大破しようが、絶対持って帰るッス!!」
うんうん。そうそう。やっぱり、秀吉は分かってるね。
自分で言うのも何だが、見事な出来映えだ。
これを壊す?嘘だろ?ミツには、漢の浪漫が分からないって言うのなら、逆に説教する必要あるだろ。
「その心構えは良いけど。自白してどうすんだい?」
「え…」
「自白と言うより、自爆かな。やっぱり、秀吉も共犯者だったようだね。まあ、自供が無くてもノブ一人で戦艦は造れないのは分かっていたし。責任はきちんと取って貰うからね」
「く!?策士ッスか。ミツさんは!!」
秀吉だけなら良いが、被害は俺も同様だ。むしろ、俺が主犯だと言っているようなものだ。
責任?何て恐ろしい言葉だ…。笑って誤魔化せない真面目なミツの言葉に含まれる重さは計り知れない…。
秀吉は折檻で済むが、俺の方はそこからが大変なのだ。膨大な量の始末書、報告書、費用の決済その他諸々の仕事をしなくちゃならないのだろう。
作るよりも、作るまでの方が大変って…。
「時間もないし、今は許すけど…。今度また勝手なことをしたら、どうなるか────」
「はい!言わなくても、分かってる所存です!!」
何故か、敬礼の姿勢をとってしまった。
これだと陸の海兵隊だ。セーラー服でも着てやろうか。
「是非、着て貰いたいね。そのまま、出航しちゃっても構わないよ」
ごめん被りますっての!シャレも通じないのかよ!?
無事、出航…。とはいかなかったが、ブチギレしたミツを前に文句の一つで許されたのだ。幸先の良い船出だと言える。
このままなら、義龍もあっという間に倒せるかもしれない。て、厳担ぎとは俺らしくねーな。
「じゃあ、一旦ここでお別れッス。輪霧と丹削は俺が預からせて貰うッスよ」
「預けるのは良いが、大事に扱えよ?」
壊しでもしたら、今度は被害報告もしなくちゃならなくなる。これ以上の余計な負担は、流石に俺の身が持たない。
「それは俺の台詞ッスよ。ノブ様、本気で正面から行くんすか?」
「作戦通りだ。変更はねーよ」
人の心配より、秀吉は自分の心配したほうが良い。勝敗の行方は、秀吉の肩に掛かっている。
「義龍が城から動けねーってんなら、今がチャンスだ。秀吉も納得の上だろ」
「ミツさんには、悪いッスけど…。この作戦、ちょっとばかり無茶じゃないッスかねぇ」
心配するのも理由があってか。
相手が相手だし、無理もない。だからこそ、秀吉には重大任務を与えたのだ。どうも、その辺を理解してくれてないようだ。
「聞いてなかったのか、この作戦は俺の立案だ。敵の居所が分かってるんなら、一気に潰す。待つのは性に合わねーからな」
何時までも睨み合うような趣味はない。振り上げた拳は、振り下ろされる。
「あー。道理でミツさんの作戦にしては大ざっぱだと思ったッスよ。計画性が無さ過ぎッス」
「その通りだけど、言って良いことと悪いことがあるだろ。俺の作戦にケチをつけんじゃねーよ、おい!!」
「心配なんッスよ…。今回は、俺もミツさんも居ねーんす。無茶して万が一の事があったら…」
「秀吉………」
ドッキューン?!
秀吉…、何てやつだ。そこまで友情に熱い男だったのか。見直し─────。
「俺一人じゃ、バナナ農園支えきれねぇーっすよ!!」
─────どこまでも、本能に忠実なサルだ。見直す必要ないな!!
「バナナ何て何時でも食えるだろうが。そんなもんより、秀吉。お前の方こそしっかり頼むぜ」
「うっす。全部手筈通りに行ってッスよ」
うん。どうやら、俺の心配は杞憂だったようだな。
「おう。じゃあ、濃によろしくな」
戦艦木瓜から切り離された小型艦。輪霧と丹削。戦艦木瓜は三隻の船からなる合体艦なのだ。
当然、ミツには秘密の機能。言ったところで理解してくれないだろう…。この二隻の船は秀吉に預けることになる。
秀吉のことだから、俺が言うまでもなく大事に扱ってくれることだろう。
戦力低下にはなったが、代わりに秀吉の置き土産。軍師の黒田を置いて行った。
今回の戦場で指揮を振るうように言いつけられたらしい。
まったく、心配しいな秀吉だ。俺の作戦は完璧だってのに。そこはちょっと憤慨だよな?
墨俣に見慣れない砦が建てられていた。義龍の建てた砦だ。
尾張侵攻の手は止まったと言え、攻めるとこまで攻められた。俺の国で好き勝手やられたのは、ちょっとムカついている。
人の家で横暴に振る舞われれば、どう想うか…。丁度、そんな感じだ。
「さぁてと、いっちょやってやるか!霊気、城流し!!」
魔法で生まれた一頭の鯨。白鯨が飛び跳ねると津波が起きる。爆発的な大津波が、辺り一面を押し流す。
霊能魔法、城流し。本来なら、幾人幾十人の侍達が力を合わせて、やっと発動するような強力な魔法だ。
だが、周囲の反応は薄い。見慣れてしまったのか、何なのか…。淡白な反応だ。
よく見ろよ。津波で辺り一面に広がって、そこは海のように変わってるんだぜ。なのに、フツーに作業を止めないとか…。何で黙々と作業してんてんの?
やべー…。こっちの方が俺的にいじけそう。めげないけどな。
「信長様の魔法でも、効果はまったくありませんか…。火水木地の四象天院の複合結界のようです。水曜の魔法では結界を崩せなかったみたいですね」
官兵衛の言うとおり、城自体には被害がない。
早々、城攻めが出来ないのは魔法に対する備えが強固だからだ。
城や砦は、国の拠点であり国の顔だ。国の特色に土地に合った魔法が掛けられる。普通なら兵を送り込んで、仕掛けられた防御魔法や結界魔法を破壊しながら攻めるしか手はない。そのくらいの知識は、教えられるまでもなく常識の範囲だ。
「別に、何かしらの効果を狙った攻撃じゃねーよ。ほんの挨拶代わりだ」
「挨拶ですか。嫌がらせにしか見えませんよ」
俺の国でデカい顔をされたのだ。泥を塗るくらいのことは許される。誰が許さなくても、ここは俺の国。だから俺が許すのだ。
「あのケンタウロス…人馬の鎧は厄介だからな。卑怯だろうが、足を潰す必要があるだろ。この水の上じゃ、あの機動力も発揮出来ねーだろ」
これは…まあ、後付けの言い訳だ。臨機応変にってヤツだ。
「戦なのですから、当然ですけどね。ですが、これでは私達の足場も有りませんよ。どうやって攻め込めば良いんですかね?」
だだっ広い湖の中、有るのは要塞然とした城と浮かぶ水陸両用の陸上戦艦。足場になりそうなものは水の下に沈んでしまった。
直接乗り込むにしても、行く手を阻む結界…。
「ははは…。どうしよう?」
残念ながら、俺は軍師じゃない。
その結果が、この結果…。
「はぁ、信長様は何時も考えなしに行動するから行けないのですよ。まあ、指揮を任せられたのは私です。信長様は下がっていてください」
あら…。普通に怒られたよ。下がってろってことは、手を出すなってことだ。開始早々に要らない子宣言をされてしまった。
まあ、仕方ない。俺に城攻めの知識なんてない。ここは大人しく見て、見守ってやるか。
「任せる」
「では、艦の指揮権は私に譲って頂きます」
「好きにしろ。まあ、お手並み拝見だ」
船頭多ければ…と言うが、二人も艦長は要らない。官兵衛艦長代理におんぶにだっこ、悠々楽々と楽をさせて貰えるな。
「風船の準備を!爆弾は積められるだけ詰め込め!」
「おお、流石は軍師だ。空から攻めるとか、よく思いつくよな」
上手い手だ。陸も海もダメなら空からか。風船なんて言うから、ゴム風船を思い出すが、熱気球の方だ。
て言うか、自分で詰め込めさせておいて忘れてた…。情けない話だ。
「砲手、艦砲を敵城へ向けよ!」
「なるほど!さらには砲撃も加えるのか。やるな、官兵衛!!」
采配に忙しくのか、無反応。何か返事を返してくれよ。
「用意でき次第、第風船部隊は出撃!!敵城、上空より爆弾を投下。爆撃を仕掛けよ!!」
「官兵衛様、艦砲の用意が整いました」
「よし。空爆の後、一斉射にて敵防壁を崩す!!」
「了解であります!!」
ノリノリで指揮を執る官兵衛の姿は、どうも冷静さを失っている。新しいおもちゃを手に入れた子供と同じか。俺を無視するくらい、夢中なのだ。
なら、仕方ねーか。好きに遊ばせてやるのが俺の仕事だな。
熱気球が飛び立ち、空爆が行われる。更に艦砲射撃…圧倒的の一言に尽きる。幾ら、魔法により防御を高めたと言っても、完全に防げるワケじゃない。いかに無敵の盾と言っても防げる量には限界がある。
「──────」
役に立たない俺は、黙って状況を見守る。艦長は俺なのに…、マジでやることないな。
激震に揺れる城内。幾重に張られた城の結界魔法が揺らぐ。かろうじて、耐えている状態だ。
結界が破られるのも時間の問題だろう。城が攻撃を受けていると言うのに、ただ黙って指をくわえていられる筈もない。
美濃の守り手である戦鎧魔騎馬が、迎撃の任に当たることとなる。
─────。
が、既に致命的であった。水上に浮かぶ船と空を浮かぶ船。共に加えられる攻撃の嵐は止むことがない。陸戦用に作られた魔騎馬では防ぎきれるものではなかった。
「くっ…。直ぐにでも出陣するぞ!!」
「待って下さい。魔力補給が不十分です!こんな状態で出撃するなんて無理ですよ!!」
魔騎馬は、魔力を糧に動く魔法具。個としては破格の魔法防御能力を備えている。
強力であるが故の弊害。魔力の消耗度の高さ、使い手を選ぶ汎用性の低さ…欠陥と言い換えても良い失敗中の失敗作…。最低でも、武将位の実力を求められるのが、この戦鎧魔騎馬だった。
だが、そうそう武将位の魔力を持つ者は居ない。美濃の中でも、それ程の魔力量を持つのは斉藤道三か、その息子である義龍くらいなものだ。そのため、取り付けられたのが魔力を留め置く性質を持つ日緋色金だ。
魔騎馬を支える日緋色金。その輝きは失われていた。今は懸命に魔力補給中である。
「何時まで掛かっている!他に守る手立てはない!!魔力回復を優先させろ!!動きさえすれば、何とかなる!!」
「無茶言わないで下さいよ!!魔力補給だって一朝一夕で出来るものじゃないことくら、知ってるでしょうが!!」
空から爆撃されるのは想定外の話だ。城の備え、防御結界だけで耐えられるものではなかった。上空からの攻撃を防ぎつつ、更に艦砲射撃も防ぎきる。
この状況で動けるのは魔騎馬だけなのだが、虎の子を初っ端から出したことで、反撃の機会を失っていた。
補給でさえ、満足にできない始末だ。
「そんな事は分かっている!だが、魔騎馬が動かねば、お前の命さえ危ないのだ!くそ、せめて義龍様が出れば状況も変わると言うのに…」
織田の強襲を受け、半ば半壊した城。その崩落に巻き込まれる形で義龍の戦鎧機龍は埋もれてしまった。
今は必死に掘り起こしている最中だ。
「もう暫く時間を下さい。魔騎馬は、完全じゃありませんが…武器の補給は終わりました」
整備としては不十分だ。だが、短時間で五割ほどまで魔力を回復している。
おかしなことに、尾張の地では魔力回復が早い。人も鎧も同様に回復するのだ。織田信長が前回の遭遇で逃げ出した理由も、それだろう。
魔力回復の補給線。この地を取っておくことを優先する義龍の考え…それは間違ってはいない。義龍の支配政権を脅かす、帰蝶の反乱を見過ごすことになるとしてもである。
「うむ、では出るぞ!」
またもや城が揺れる。のんびりと休息とは行かない。戦鎧魔騎馬を着込み、再び戦場へと赴く。
「せめて、一人でも残って発掘を手伝ってくれれば、義龍様も出られるだろうに…」
出撃の足が止まる。
「…一人で手が足りるだろう…。誰か、残って手を貸してやれ」
「は、はい。では、俺が…」
しかし、この一言が災いを招く結果となる。地対空を考えた武装はない。五体しかない魔騎馬が、一体でも減ればどうなるか…。
魔騎馬隊、壊滅──。その報告が義龍の下に届けられることになった。
爆弾の雨が止む。搭載させた爆弾が切れたのだ。
出番がないと嘆いていた孫市と雑賀衆も、まさかの活躍ぶりだ。て言うか、出番が回って来るとは思わなかっただろう。俺も予想外なのだし…。
「爆弾補充のため、風船部隊を後退させます」
「ああ、もう十分だ。戻ったら休ませてやれ」
風船…ねぇ。風船と言われると、どうも…ゴム風船しか思い浮かばない。風船部隊と呼んでいるが、官兵衛が勝手に命名したものだ。
見た目から名付けたのだろうが、こんなエゲつない風船を見たことがない。
「信長様…。信長様!!」
「え!?あ、はい。何ですか…何だ!!」
あまりの一方的な戦に、いくら何でも頭がついて行かねーよ。
警戒してた、あの鎧がいとも容易く葬られる。ホントなら、誉めるべきだが…うん。無理!!
「敵城の結界が剥がれました。これも、一重に信長様がご用意した戦艦、木瓜…更には風船のお力です。このようなものを指揮を執ることが出来る喜びは、他にございません」
「ああ、うん。そだね…」
結界どころか城そのものが崩壊しちゃってんじゃん。つまりは、義龍の顔に泥をぶっかけたってことだ。
俺がやった的な言い回しも、考えてみたらひでーよな。確かに、戦艦も気球も用意したのは俺だ。
だがな。俺には真似できない働き…つーか、真似したくないっての!!
容赦なし、手加減抜きで飛車角抜きの素人相手にプロが相手をしたようなものだ。残酷過ぎるだろ。
「存分に楽しませて…いえ。これにて私の役目は果たしました。指揮権をお返しします。後は信長様が片を付けて下さい」
楽しんでんじゃねーよ!?つーか、つーか!!俺に最後を任せるとか、ふざけんなよ!!
これ以上、敗者に鞭を打てと?虫の息の虫を踏み潰せと?
………良いさ、良いだろう!やってやる。
「見てろよ、お前たち!!俺に刃向かった者がどうなるかを!!」
「おお、流石は信長様…。世に唄われる、自称、魔王のお力をお見せ下さい」
自称!?コイツ!完璧に俺を舐めてんな!そんなんで扱い方は心得ています的な顔してんじゃねーよ!!
ダメだ。官兵衛は使えねー。秀吉に預けて正解だ。
「じゃ、見せてやるよ!だが、これから見ることは他言無用だぞ。ミツには絶対に言うなよ!!」
「勿論でごさいますよ」
ウッワー、即答?信用できねー。
もうヤケクソだ。絶好の見せ場で使う予定だったが、こうなったらヤケクソだ。舐められないように力の恐怖と言うモノを見せてやる!
「甲板に出るぞ」
「はい。ならば、他の者たちには下がらせます」
手際よいことだ。俺のために皆様よけてくれましたよ。
「さて…」
持ってきたのは、四つのリング。人工魔剣なのだが──────、当然ただの魔剣なはずがない。
飛剣、戦輪、円月輪、手裏剣。要するにチャクラムと呼ばれる武器だ。四つの輪には、それぞれに猿、獅子、狸、蛇の絵柄が彫り込んでいる。
「ヌフフフ…。目覚めよ、魔剣鵺!」
「そ、その姿は」
頭の上に輪っかついてるよ!イエーイッ!!
竹トンボで空を飛ぶ的な発想だ。流石は偉人…。お陰で完成しましたよ!!
「じゃあ、ちょっとばかし行ってくる!お前たちは俺の帰る場所を守れ!」
気球用に用意された魔法灯に光が灯る。
出陣の合図が出されると宙に浮いた。そのまま船を離れ飛び立つ。
戦場に舞い降りた天使と言った風情だろう。
自由自在に飛ぶ。右に旋回、左からの捻り込み…。試験飛行が、いきなりの実戦投入だ。多少の試運転は重要だ。
足場のない不安感はあるものの、飛行自体には問題はない。後は慣れの問題だ。
「義龍様!!信長です!信長が、空を飛んでいます!?」
「なに!?──────ば!バカめ、飛んで火にいる夏の虫よ!空を漂う虫如き、撃ち落としてやれ!!」
「は……。しかし、義龍様の戦鎧は先程の攻撃により瓦礫の下敷きになり…、瓦礫は取り除いたのですが…。まともに動くかどうか…」
眼下に義龍を発見した。
この状況で、まだやる気十分のようだ。義龍の鎧…機龍?の姿も同時に確認した。
どうやって着るのか、ちょっと気になる。寛大な俺。待ってやることにした。
「つーか、こうして見ると…。本当、虫のようだな」
うーん。ゾロゾロと一体どこに居たのか、侍達が出てくるな。
しかも、無理やり行かせてる雰囲気だ。見上げる姿が、どこか腰が引けてる。義龍からしたら、時間稼ぎか、もしくは魔剣鵺の性能を確かめたいってところだろう。
「奴を討って名を挙げよ!!」
「はいっ!!」
銃を持っているが…どうも撃ってくるのは鉛玉。魔法銃ならいざ知らず、ごくフツーな鉄砲だ。
「恐れることもねーか。魔剣の試し斬りには丁度良いし」
魔剣鵺は飛ぶことを目的に造った剣だ。だからって、攻撃能力がないワケじゃない。
無駄に四本も魔剣を造ったんじゃないんだよ。攻撃と防御も、ちゃんと兼ね備えているのだ。
「く、来るぞ!!ね、狙え!!」
「そう慌てるなよ。じっくりと試し斬りさせてくれよ!!チャクラムなんて使ったことねえーんだからよ!!」
右手の魔剣を放り投げる。誰も居ない方向へ飛ぶ魔剣。…ノーコンじゃないよ。
いくら使ったことないって言っても、ここで外すのはイタすぎだって…。うん、分かってる。
「どこを狙っている!」
いや、本当にノーコンじゃないから。
低速で飛ぶが、高速で回転する魔剣。ここからが本領発揮だ。
「見ろ、お前たち!信長の奴は武器を捨てたぞ。動きも鈍い!手柄を揚げるにはまたとない機会だ!!」
「おまえらに夜明けの鳥は鳴かねーぞ!!行け、鵺!!」
命令を下すと滞空を続ける鵺手裏剣に変化が起こる。一つであつた輪が分裂する。…倍の倍の倍────。瞬く間に光輪の影に埋め尽くされる。
後は草刈り機のように全てを刈り取るだけだ。俺はただ見ているだけで良い。俺の手間は魔剣を放るだけ。やはり、魔剣は便利に限るな。
ウィーンウィーンと刈り取られる命。遺されたのは死体の山。無残に切り刻まれ、死体とは言い難い。しかし、元は人であったものなら死体と呼ぶべきだ。
「まあ、だから何だって話だけどな。…で、どうする。残ってんのはお前だけだぞ?」
「な、何が起きた!?」
故意に義龍のみを残しておいたのだ。人が驚く顔というのは、やはり面白い。
しかし、遊んでばかりもいられない。
「残念だわ。せっかくの魔剣鵺のお披露目だったが、もう時間切れだ」
時間切れ。その意味は、俺の出番の終わりを意味する。
「戯れのつもりか!互いに命の緒が切れるまで終わりではないわ!!」
「分かってねーな。この戦の大将は俺じゃねぇ…。アイツが大将だ」
戦艦木瓜から離れていたサルが顔を出す。
「ノブ様ーっ!待たせたッス!!一発デカいの噛ますッスよ!!」
秀吉の後ろには、木製の船が連なる。
多くの兵を従えている秀吉。それだけ見たら、大将にも見えるだろうが…。秀吉には、援軍を連れて来させたのだ。
美濃の反乱兵、義龍と対立する侍達を。
「オッセーぞ!!川を下るのに、どんだけ時間掛けてんだ!!──────濃!!」
「何故、帰蝶が此処に?!」
美濃で反抗勢力を纏めていたのは濃だ。
濃が飴で俺が鞭になって、この戦を終わらせる。濃こそが、この戦場の大将だ。
「義龍兄様!これで役者は出揃いました!!まだ戦うと言うのなら、兄様を止めるのは私の役目!!命に代えても、お兄様は私が討ちましょう!!」
「ま、待て!帰蝶よ!!」
「動かないで下さい!!私は本気です!!」
遠目でも分かる二人の慌てっ振り。濃はフツーに初めての戦場にテンパっているのが見て取れる。
義龍は義龍で、いきなりの濃の登場に、あの慌てようだ。
「ん?秀吉の奴…一発噛ますって、どう言うことだ…」
輪霧が合流もせずに停船していた。余計な脇役になりつつある俺達は、ソッと舞台を捌けるべきところ…。
遠目からは、何をしてるか見えねーし。
「ノブ様!!ぼんやりしてっと、巻き込まれるッスよ!!はーなーれーてーくーだーさーいっ!!」
離れろと言われれば離れるが、何をしようというのか…。
「あ…、輪霧の能力って…」
砲撃艦である。と言うか、船そのものが大砲なのだ。
力ずくで説得するってことは、相手にこちらの力を見せる必要がある。つまり、威嚇射撃をしようとしている。
…が、様子が変だ。
「ちょ!?ちょっと待つッスよ。何してスか、濃姫様!!そのボタンは押のはまだ早いッス!!ノブ様が居るんスよ!?」
「え!え?どうしましょ?えー?!これ、どうなっているのですか、お猿さん!!どうやって止めれば良いのでしょう!?」
「ダメッス!もう止めらんねーッスよ!!──────ノブ様!それと義龍さんも早く逃げるッスよ!!」
げえー?!ふざけんなよ、俺まで照準に入っちゃってるのか??
波動衝撃砲。戦艦木瓜の主砲…、今は分離して輪霧となっているが、合体していようが分離していようが関係ない。高密度に圧縮した魔力の塊を発射し、解放された魔力の塊がはじき飛ぶ。周囲一帯を押し潰すものだ。
物理的にも防ぐ余地は───────っ!!
「やべーじゃん!?のんびり解説している場合じゃねーっ!全員、射線上から離れろ!!」
と言って理解出来るのは、製造に携わっていた俺だけ。
…と思いきや、木瓜が慌てて旋回している。官兵衛は、この船の扱い方を知っていた。つまりは、その能力も知っていると言うことか…。
「義龍兄様も、お早く!!」
「俺は美濃の…、いや!世界の王となる男だぞ!!この程度では、死なぬ!!」
ツッコミてーけど、その時間も惜しい。シャレやジョークじゃ通じない威力なのだ。
「お前!確実に、死ぬぞ!!」
「ふはははっ!!」
俺の言葉なんて聞いちゃいねーか。
その姿は立派だが、波動衝撃砲の威力を知らないからこその蛮勇だ。
ツッコまねーと言っていて、ツッコミ入れちまった責任はある。
「の、ノブ様も何してんスか!ノブ様は、あの威力を知っているっしょ!!」
「んなの、分かってんだよ!!けどよ、妹が兄を殺すシチュエーションは見てらんねーんだよ!俺はな!!」
義龍が俺を嫌っていようが、そんなのは関係ない。
「待たれーいっ!!」
丸い鉄球みたいな鎧を着た奴がしゃしゃり出てきた。恐らく、義龍の家来。主のピンチに駆けつけて来たんだろう。
「生き残りが、まだ居たのかよ。まあ、あんだけ分厚い鎧を着込んでいれば、当たり前か」
しかし…何処にでもいるんだな、空気の読めないヤツってのは…。
武士道って言っても限度はあるだろうに。主のために、死ぬのは結構だが、あれでは共倒れになる。
「って、邪魔はお前だっての!!死にたくねーなら、俺の前に出るんじゃねぇ!下がれよ!!」
鵺による攻撃を防いだってことは、それなりに防御力の高い鎧なんだろうが…。はっきり言って、波動衝撃砲の威力は桁が違う。
俺でも、波動衝撃砲を防げるのかビミョーなところだ。勿論、俺一人でならば…だ。
俺には魔剣がある。
「邪魔は、信長。お前の方だ!!これは家族の問題よ!」
「誰が家族だ!家来の間違いだろーが、テメー!家族ってーなら俺の方だっつーの!!」
下っ端の分際で、なんて図々しい野郎だ。
「貴様に兄と呼ばれる筋合いはない!!俺をお兄ちゃんと呼んで良いのは妹だけだ!!」
「ぅおいっ!?この状況で冗談言ってる場合かよ!!」
「冗談ではない!虫唾が走るわ!!」
「遊んでる時ではないだろうに!見てられん!!」
「遊んでねーよ!真面目だよ!!」
が、もう手遅れだ。無駄話ししている間に波動衝撃砲が襲う。
海を割る一撃に、辛うじて残っていた結界も吹き飛ばされた。俺と義龍…さらに義龍の家来である侍も砲撃に飲み込まれる。
俺の防御魔法…、鵺の防御魔法…。予想以上に重い一撃に耐える。耐えるに耐えられない…、ヤバい!!
「なんだ、これ!?」
急に軽くなった。威力が弱まったワケじゃない。防御魔法を支えるものが増えたのだ。
鉄で出来た兜が巨大化し、かまくら状になって周囲に張った防御魔法を支えていた。
「やはり、見てられんな。信長!それに…義龍!!貴様には呆れるぞ。儂を追い落とした時の気概は何処へ行った!!」
「お、親父か!?」
へ??親父?誰が?いや、誰の?
「その間抜け面を見るのも久しいな。お主はともかく、帰蝶には無事を伝えたかったが…」
「道三のおっさんか?生きていたのかよ!?」
兜が脱げたことで顔が曝される。
生死不明、命の峠を越えての生還?いやいや、元々から死んだとは思ってなかったしぃ…。とは言えだよ!!
「生きてたんなら、さっさと来いや!!」
「孫の顔を見るまで死ぬわけには如何!」
「何が、孫だ!!孫の顔なら、兄貴の方に頼め!!おっさんのせいで、どんだけ面倒な事になってんのか!分かれや、コラッ!!」
「俺は妹にしか興味はない!!」
「お…、おぉ…。ハラショー…」
何というシスコンの鑑。胸を張って言えるその根性。そこは是非、兄貴と呼ばせていただきたい…。
「義龍!!貴様がそんなんだから、帰蝶を信長の下へと嫁がせたのだ!!」
「なに!?それが横暴だと言うのだ!!何故、親父が生きてるかは知らんが今一度、俺の手で!!」
道三のおっさんに動じる様子はない。刃を向けられているのに堂々としている。
親父としての貫禄ってやつだな。
「愚か者が。貴様にはその鎧の意味も…力もまったく理解しておらんな」
「ぐ?!何を!何をした、親父!!」
どうやら、身体が動かないようだ。鎧がピクリとも動かない。何かしらの魔法だろう。
「──────今度こそ覚えておけ。儀龍、それが真の呼び名だ」
「ああ、そう言うことかよ」
名前がキーワードになっているってことだ。パスワードか?
一応、父親らしいことしていたようだ。息子義龍の為に鎧を作っていた。それも名前まで似せて…。
「親父…。本気で俺の為に…」
「うむ。そして、儂が着るこの蛟龍は孫の為に造ったのだ」
義龍と対を為すねぇ…。
そんな気は更々ないが、道三のおっさんは気が早い。5月5日にもまだ早いっての…。
「衝撃が治まったな。そろそろ、大丈夫だろ」
「がっはっはっ!信長。貴様の自慢の牙も、この程度か!流石は儂の鎧!」
「勝ち誇ってんじゃねーよ。つーか、マジで今まで何やってたんだよ」
「うむ。聞きたいか?」
───────ぅっざーー!!
だいぶ、聞き流したが要約すると、上杉謙信に助けられたらしい。
死んだと言うのは本当で。どうやって生き延びたのか…。死んだのは身代わりの替え玉だったそうだ。
「ムセイヘイシとか言っておったかの?よくは知らんが、いくらでも大量に造れる兵だとか。謙信殿は、何処かの坊主からの置き土産だと言っておったかのぅ」
大量生産出来る兵隊?きな臭さプンプンだが、俺に関係のある事でもない。おっさんを助けてくれたことだけは覚えておこう。謙信に借り一つ…。
と、それはさて置き。重要なのは、これからの美濃の国だ。
「勝った者が正義!!俺に非はない!むしろ、お前が悪い!!」
「その通りです、義龍兄様!!」
おぉ…。俺の横暴に濃まで乗っかっちゃったよ。お兄ちゃんどうすんのよ?
「クゥゥ!」
泣いちゃった!?そこまでのことかよ!?
いや、全てを奪われては男泣きも仕方ねーよな。まあ、殆ど自業自得みたいなものだ。
「美濃のことは、俺に任せて貰うからな。これは決定事項だ。反論はねーよな?」
「好きにしろ…」
決着はついた。しかし、俺の戦いは終わってない。
「秀吉!プラン通りだ。あとのことは計画通りに進めろ!」
「うっす!!」
とりあえず、美濃は道三と濃に任せとけば大丈夫だろ。細かい面倒事は全部片付けてからで良い。
なれば、残すはミツだ。
小狡い幕府は、今も俺の首を狙っている。と言うか、今まさにミツと今川義元が桶狭間で決戦を繰り広げているところだ。
連戦の負担はどうしても避けられないが、今、今川の元には市が居るとの情報も入って来ている。
ちまちまと悠長に構えている暇はない。これが、市救出の最後のチャンスと考えた方がいいだろう。
市を取り戻す為にも、今川との一戦に赴く予定だ。元々の計画通りでもある。いや、ホントの計画はここからが本番と言ったところか。
秀吉と斎藤一家を残し、桶狭間へ向かう。
今川、魔獣使いと呼ばれる相手だ。だが、俺も準備は万端だ。どんな手段を用いようと俺には無駄なのだと、身を以て教えてやる。
もし万が一にも!市の身に何かあった場合…。その時は世界の滅びを望むくらいの恐怖を身に刻むことになる。
義龍の気持ちが、今の俺には身に染みていた。




