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ミツの土産

38)ミツの土産


「で、ミツ。話ってのは何だったんだ??」


 翌朝、ミツと話す時間をとることができた。

 近頃、ホントに疲れ気味。捕らわれの身だがミツのため、体に鞭打ってミツのところに逃げ…てない。ミツのところに来てやった。

 昨晩は、相変わらずの濃姫だった……。


「あっ。それは俺も訊きたいッスよ」


 と。秀吉は、朝から元気だ。

 ムカつくくらいテンション高い。このテンションの差に、さらにイラつくが、秀吉のことなので気にしない。


「う~ん。どうしょうっかな~」


 それより、気になるのはミツの方だ。

 帰って来てからと言うもの…何、この態度? 俺の親友が若干(?)ウザくなっているんだけど…。

 ホントに本物のミツか、疑いの余地ありだ。


「教えて下さいッスよ!!ミツさん、何か嬉しそうッスけど。それと関係あるんスか?」

「え!?ミツのその態度は嬉しい感情表現だったのか!!」


 有頂天。確かに舞い上がってる感じだ。

 でも、見たことのないミツだった。親友の意外な一面をみると、こんな切ない気持ちになるものなのか?


「そんな事ないよ~。テヘヘ」


 テヘヘって…。

 おいっ!?ホント、大丈夫か?

 美濃から帰ってから、ミツの奴、頭おかしくなってないか!?


「でも、そうだよね。少~し話したい?違うか。報告したい事が2つあるんだ」


 ホントに、ホントにこの人…。ミツなの?そう言いたくなるほど別人に変わったな。

 顔に締まりがない。ユルユルだ。

 余程、嬉しい事があったんだな。もしくは、頭をぶったのか。できれば、前者であってほしい。


「それで、何があったんだ? 今まで何やってたのか、そこんとこは教えてくれるんだろ」

「んん~。ま~ね、今すぐ教えたいところだけど……」


 辺りを見回し、挙動不審なミツ。

 だから!!ホント、一体何があったんだよ!?あからさまに可笑しい。変だ。変質者だ。


「────ノブ。秀吉。ここだと、話しづらいことだから場所を移そう。二人とも時間は大丈夫だよね?」

「うっす。勿論ッスよ!!」


 俺も、これからの仕事はない。学校はあるが、登校時間までまだまだ時間がある。

 ということで、俺も大丈夫だ。


「場所はどこにする? 俺としては学校から離れた場所はちょっと…」

「うん。それは分かってる。何も街から離れようと言うことじゃないよ」


 流石に美濃の研究所ってわけじゃないだろうけど、尾張の研究所も街から離れた場所にある。

 ミツの報告と言ったら、ミツの仕事。魔法研究に関わる報告だろうと予想している。大なり小なりな実験研究で大掛かりな物だったら、場所を移そうと言う提案も納得だ。

 けど…、どうも違うらしい。


「聴かれるとマズい話ッスか? ………何か、ワクワクするッスね!!」

「そうなのか?」

「それもあるけど…。個人的な話もあってね」


 ああ、なるほど。聴かれると恥ずかしいってことか。

 今のミツも十分に恥ずかしいけどな。言わないでおこう。


「なら、学校に行くか? あそこは重要施設で、防音盗聴に対魔法防御も兼ね備えいるからな」

「あ~。確かに、学校なら大丈夫かも」

「じゃ、学校に行くッスよ」


 考えてみたら、三人揃って学校に行く風景は珍しい。

 そもそも、ミツと秀吉は学生じゃない。

 仲良く、学校への道を歩いて行く姿は当然ながら、他の生徒の注目を浴びることになる。


「これじゃ、あんまり意味なかったな?」

「そうだね。登校時間だったの忘れてたよ…」

「あれ?ノブ様は大丈夫なんスか?」

「俺は午後からだから良いんだよ」


 疑いの眼差し…。

 え、何で疑われるんだ?

 俺も少ないが仕事はあるんだぞ。信頼されてないのか?

 まあ、俺の時間割りは、変則的になっている。時間割りを見せれば納得した様子だ。

 信頼されてないのではなく、心配されているのか?

 なら、心配ご無用だ。


「そう言えば、平出校長は元気?」

「ああ、元気だぞ」


 一時は隠居したセバス平出だったが、校長職を買って出てくれた。元は、俺の教育係。人に教えるのは得意だ。

 校長とは言いつつも、今も教壇に立っている。教育者の鑑だな。


「むしろ、俺に教えてた時より元気だ」

「そりゃぁ、ノブ様に教えていたときは気苦労絶えなかったでしょ」

「それは、どういう意味だ!?」


 親しき仲にも、だぞ!!


「それを言うなら、今も大差ないんじゃないの?」

「だ・か・ら!!それはどういう意味だ!!ちゃんと成長してるっての!!最近じゃ、問題事を起こすこともなくなったって」


 逆に問題を解決する側の人間だろ。誉められこそすれ、馬鹿にされるようなことはしてない。

 これを成長と言わず何て言うんだ!?


「本当に? ──────じゃあ、彼らが持っているアレは何だい? トラブルの臭いがプンプンなんだけど…」


 すれ違う生徒が持っている物。ビヨンビヨンしている。ねとねとなアレ。


「あれは別に危険物じゃねーよ。ミツも知ってるスライムだろ?」

「スライムは知ってるよ!?けど、何でスライムがあるのか、分かんないんだよ!!」


 何を想像しているのか?

 スライムでトラブルは起きないってーの。


「分かってないな、ミツ。ゆとりだよ。これは、ゆとり教育の一環だ。詰め込み過ぎは良くないだろ?」

「何で、教育評論家っぽく言ってんの!?確かに、詰め込み過ぎたとは思うけど…。それは、人材不足解消のためだったよね!?」


 まあ、言われなくても分かってるよ。俺も承認したんだ。

 けど、実際に教育を受ける俺としては、ゆとりが欲しいワケですよ。

 そのためのスライムだったワケですよ。


「でも、もう人材は育ているし、これからはゆとり教育で良いよな?」

「はあ…。平出校長が、またストレスで倒れなければ良いけどね…」

「いやいや、教育者もゆとってるぞ。俺の授業が特殊なだけだ。必要な教育課程は終わっているからな。後の高等教育なんかは、自主学習に自由研究だ」


 小中学校の教育程度の学習は詰め込んだ。

 現場での即戦力は、この詰め込み学習で教え込む。

 卒業した後に、まだ学びたいと言う者達の為の教育だ。

 手を煩わせるような真似はしない。

 ミツじゃないが、人の探求心とはスゴいものだ。その探求心を満たすために、無駄に広い学校施設をちょっと利用させてもらっているというワケだ。


「それが不安なんだよね。まあ、ノブのやることだし…。問題さえ、起こさなければいいよ」


 不承不承だが、ミツの許可も降りた。これでやりたい放題だ。

 と、やり過ぎは控えないとな。トラブルを起こして強制退学はしたくない。


「あ。トラブルで思い出したけど。あんがとな、ミツのお陰で助かった」


 ミツの働きで、交易が一部緩和された。主に食糧関係だ。本当は、食糧関係の輸出も禁止されてはいたのだ。

 しかし、食糧難はどの国も同じ。禁止されているとは分かっていても、こっそりと輸出されていたのだ。

 ミツの働きで、それが解放された。ついでに他にも必要な物があれば、それこそこっそりと言う感じに収まった。


 裏取引みたいなものなので、まだまだ幕府の監視はキツい。が…、まあ、今さら幕府を気にしてもしょうがない。


「え!?いきなり何!!怖いよ!!」

「尾張はハブられてただろ?ちゃんと礼を言ってなかったからな、一応」


 俺、個人の問題なら礼は言わない。けど、国のことなら話は別だ。

 事が事だけに、どれだけ苦労させたか分からない。礼の一つで済まされる問題でもないんだけどな…。


「ああ、その事? 別に大したことじゃないよ。こういう時の為に僕が居るようなものだしね」


 ん?どういうことだ。ミツの役目?

 俺の知らないことがあるようだ。


「でも、ほんとにミツさんのお陰ッスよ。頼もしいッス」


 知らないとは言え、推察できないことでもない。

 人脈、組織……。ミツのパイプは太い。それこそがミツの役目。尾張と他国への橋渡しだ。


 一体どんな人生を送ってくれば、そんな人脈が作れるのか…。

 苦労人なミツだ。当然、俺の知らない一面を持っている。だからって、同情してもミツは嫌がるだろう。

 そこで、腹を立てるようなことじゃない。過去よりも今が大事だ。


「そうだね。幕府も一枚岩じゃないし、…ノブのお陰で話も通し易かったよ」

「よく分かんねーけど、役に立ったなら何よりだ。つーか、俺が何かした?」

「ま、色々とね…。まさか、バナナが…。いや、何でもないよ」

「ん?」


 ミツの持つ繋がりは、尾張の外。国外へ通じている。昔、市が言っていたように幕府や朝廷にも…。

 バナナは多分、関係ない。

 山吹色の菓子はあっても、バナナは賄賂おやつに含まれません。てね?


「そろそろ、本題に入ろうか。と、その前にお土産渡すの忘れてた。はい、これ─────」


 出てきたのは一対の手甲。左右対照になっている赤い手甲だ。

 そして、感じるのは…。


「まさか!?」

「うん。これが研究成果。魔剣製造だよ」


 魔剣じゃなく、魔拳だな。

 意思疎通は出来ないが、意識みたいなものはあるようだな。

 子供みたいな。いやいや、それよりももっと幼い感じ。そう、まるで赤ん坊のようだ。


「魔剣研究は聞いていたけど、マジで魔剣造ったのかよ」


 生まれたて。これから成長していくのだろう。

 しかし、魔剣にも年齢や成長があるとは知らなかったぜ。


「ウキッ!?これって魔剣なんスか!!」

「声がデカい!!秀吉、これはまだ重要機密だ!!」


 いや、俺は声も出ねーよ。

 魔剣の利用法でも研究してるんだと勝手に思ってたが、まさか魔剣製造を研究してたとは考えてなかった。


「み、ミツさん。これ、俺でも使えるんスか?」

「勿論だよ。て言うか、この魔剣は秀吉への土産だよ。魔剣 猿猴捉月えんこうそくげつ または魔猿猿の手ってところかな」

「な、なんか…。不吉な名前ッスね」


 そうだっけ? 

 猿猴捉月は、水に映った月を捕まえようとした猿が水に落ちてサヨウナラ…。

 猿の手は、願いを叶える猿の手が不幸を呼ぶみたいな話だった…。

 不吉って言うか、猿ってバカだよな?って話だ。

 なるほど…。ミツは未だに、秀吉への因縁があるんだな?

 あるわけないってーの!!ちょっとダジャレてみただけのことだろ。

 ミツと秀吉の付き合いを見てれば分かる。


「魔剣 猿候捉月の能力は2つ。右手は風の力、風雲。左手は地の力、山雲。攻防一体の魔剣だよ」

「二つも属性を持っているんスか?!」

「2つでワンセット。片方だけじゃ使えないからね」

「すげーッス!!」


 ホント、すげーな。魔剣製造だけでなく、属性まで付加したのか。魔剣だし、属性を持っているのは当たり前。それを2つも付加させた。

 はっきり言って、これはヤバい。もし、これが他国に知られたら、その技術を奪おうと襲いかかってくる恐れもある。

 両刃の剣…、爆弾だ。


「猿に猿の手は良いけど…。俺のもあるんだよな?」

「まあ、他にも色々と試作品はあるけどね…。ノブの魔剣は造ってないよ。そもそも、ノブには魔剣は必要ないでしょ」


 自由に魔剣が造れるなら、あんなのやこんなのが…。

 ミツには、それが分からないのか!?

 国家機密も重要だが、俺が楽しめないと意味ないじゃん!!


「猿の手は猿に上げるとして、ちゃんと俺にも土産はあるんだよな?」

「くぅ~!!ヒデーッスよ!!ノブ様!!」

「勿論あるよ。猿候捉月は、ついでのようなものだし」

「ミツさんまで!!俺の扱い、ぞんざい過ぎっすよ!!」


 いやいや、今までと同じだろ? 今も昔もこんな感じだ。


「ノブへのお土産は、これ」

「え?!重っ!!何だ、これ!!重いぞ。よく、こんなの軽々と持っていたな!?」


 手のひらサイズの小石に押し潰されるだと!?そんなバカな!!

 これでも、身体は鍛えてある方だ。ミツと比較してもそんなに大差ないはずだ。

 なのに、何??何故!?


「それは日緋色の石…。天然の日緋色金だよ。魔力吸収の力を持っているレアメタルさ」


 くおっ!?だから、力が入らないのか!!


「ミツ…。これのどこが土産なんだよ!!嫌がらせじゃねーか!!あれか、これが魔封じの石か!?」


 世の中には魔封じの石と云う物があるらしい。魔法の無効化の力を持つ石だ。

 例えるなら、ミツの無属性。無効化魔法の効果を持つ石?

 それが、この日緋色金。流石、天然ものは質が違うな。

 まあ、ホントのホンモノは少ない。大概、変な逸話つきの代物だ。


「偶然手に入れてね。ノブにプレゼントだよ」

「う、うーん。なんつーか、扱いに困る代物だな……」


 困ったもんだ。使い道がない。

 貴重なものだし、価値は高い。売れば億万長者になれる。

 しかし、売るにしても勿体ない。

 お土産とは、どうしてこう必要ないものが贈られるのか謎だ…。


「にしても……」


 意識が保てなくなってきた…。

 魔力吸収の勢いが速い。魔力空っけつになんのはひさびさだ。


「大丈夫!?ノブ!!」

「お、おう。すまん…。助けてくれ」

「その前に扱い方だね。いつまで、そうやって寝そべってるつもりなの?」


 好きでやってるワケじゃねーよ…。

 魔力不足で倒れているだけで、あくまでも実の能力者じゃない。水泳もできるし。


「仕方ないね、ノブは。まあ、いいけど」


 と、俺の手から石がどかされる。みるみる元気とはいかないが、虚脱感はなくなった。


「なんで、ミツは平気なんだ?」


 この石は魔法使いにとっては弱点だな。


「扱い方は心得ているよ。魔力が奪われるなら、魔力放出を止めれば良いのさ。簡単だろ?」


 そりゃそうだ。だが、言うほど簡単じゃねーぞ。

 魔力の放出を止めるって、どうやれば良いんだよ。あれか?「気の流れを感じるんだ!!」とか、「心だ!!心を無にするんだ!!」ってヤツか?

 俺には縁遠いヤツだぞ?無縁と言ってもいいくらいだ。

 まあ、説明されても覚えられないし。体で覚えるしかないだろ。


「お土産はこのくらいかな」

「んー。秀吉に比べると俺の土産がなぁ…。ちょっとなぁ…」


 しょぼい…。


「気のせい、気のせい」

「ミツさん!!─────ホント、ありがとうござーまーすっ!!」


 ケチつけるつもりはないが、やっぱり落差が激しいだろ。俺のは見た目、河原にでも落ちてそうな小石。秀吉は豪華な手甲だ。

 どちらも値の付けられない価値のあるものだが、これを比べてみてどっちが欲しいか聞かれたら、確実に手甲の方を選ぶだろ。

 ミツからしたら、どちらも魔法的価値で見てるから、どっちもお土産にしては贅沢豪華な一品なんだろうけど…。やっぱりなぁ…。


「まあ、ミツの土産だから有り難く貰うけど…」

「で、僕のことだけどね。実は──────」


 まさか!?尾張から出て行くとか言うんじゃないだろうな!!!

 嫌だぞ、そんなの!!


「ゴホン。この度、僕こと明智光秀は結婚させていただきます!!」

「どこの記者会見だ!?」


 たかが結婚で、何を溜めてんだ!?───て、え!??


「えぇえぇえぇ!??な、な、な、なにぃーっ!!」

「おめでとうございます、ミツさん!!相手は誰なんすか!?」


 ああ。それは俺も気になる。俺の親友の心を射止めた相手…。


妻木つまき 煕子ひろこさん。…写真でもあれば見せてあげたいところだけどね…」

「結婚って、ことはこっちに来るんだろ?なら、その時にでも紹介してくれれば良いさ…。は、は、は…」


 ミツの浮かれる理由はこれか…。

 ヤバい。乾いた笑いしか出てこねーよ。

 人見知りのミツだ。心配もあるけど、俺としてはこれからも同じように付き合ってくれるのか心配もある。いや、勿論だが親友が幸せになるのは嬉しいし…。

 あー!!なんだ、この気持ち!!ワケわかんねーよ!!






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