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密会

37)密会


 道三のオヤジに連絡をしたら、あっさりアポが取れた。濃姫の口添えのお陰だが…、チョロいだろ。

 美濃はそれで大丈夫なのか?


 ──────。

 大丈夫じゃないのは、俺の方か。

 国境が閉鎖されたから、半ば諦めていたのだ。

 これでは拍子抜け。

 まあ、ありがたいはありがたいが…。道三の意図が、ちっとも読めない。

 娘に甘いだけかもしれないが、もしかしたら何かの罠か。それについては確かめようもない。出たとこ勝負だ。

 つまり、いつも通りだ。


「信長様…。お疲れ様です…」


 ぼんやりと外を眺めていた俺に、秘書の黒田官兵衛が話し掛けてきた。

 俺と二人旅。若干、緊張してるようだ。


「あ? ああ、ホントにな。何で俺が……」


 家臣に対して、気遣いする余裕なんてない。ついでに、既に気力は使い果たした。

 朝早くの出掛けに、昨夜も夜は遅かった。

 何で俺がこんな目に…。誰かの策略だとしたら、まさに狙い通りだろ。

 これで、このまま道三のオヤジと交渉しないといけないんだから、ツラい。


「濃姫様ですか。相変わらずのようで…」


 他人事か?!

 言い出しっぺは、お前だろ!!他人事だからって…、クソ。どうせ、おれは生け贄だ。


「つーわけだし。…なあ、官兵衛。あとはお前に任せっから、俺は休んでもいいか?」

「駄目に決まっているでしょ。私はただの付き添いです」


 チッ!優しくねーな!!


「はあ…。誰か俺と代わってくれねーかな?」

「今の所、外国と交渉を任せられるほど、優れた人材は居りません。私も、外交は専門外ですから」


 出来ねーことは、出来ねーって?

 それを言うなら、俺こそが!だろ? 俺は政治は愚か、生徒会も学級委員長もやったことがない。役不足って言うなら俺こそがまさに、だ。


「外務省でも作るか? ────。よっし、同じ失敗をしないために外務省を作るぞ」

「外務省…とは?」

「対外交渉を専門にした部隊? うん、対外交渉や通商を専門に受け持つ遊撃隊だ」

「なるほど。それは素晴らしい考えです」

「このくらい当然だ。後のことは外交官に丸投げしてやる!!」


 何度も言うが、俺はホントに働きたくないのだ。国家運営なんて政治家がやるべき。つて、今は俺がその政治家か。違う違う、俺が言いたいのは人格の問題だ。


「それでは。もう暫くは、信長様お一人で頑張って下さい」


 まあ、それも当然だ。人材育成には時間が掛かる。

 それまでの辛抱。俺ももう子供じゃない。それくらいは待てる。


「んなの、分かってるさ。つーか、ミツの奴なんで帰って来ねーんだよ。お前、何か知ってるか?」


 ミツが居れば、もう少しは楽できるのだが…。いや、かなり。だいぶに…。

 俺より趣味に没頭するミツは、未だに帰って来ない。

 呼び出しに応じないのは、何か理由があると信じている。まさかとは思うが、ミツが人質にとられているなんてことはないはずだ。


「すいません。私も、何も聞いてないですね」

「ホント、どこで何やってんだかな」


 となると、ミツが何をやってるか知ってるのはミツだけか…。後、同じ研究者仲間。

 連絡が取れない以上、知る術はない。

 折角だし、美濃に行くならミツのいる研究所にでも寄ってみるか。時間は…、ないが作ればいい。


 虎駆・改-四式が、美濃へと続く街道を走り抜けて行く。

 戦国時代には似合わない鉄の車。電気で走るモーターカーだ。

 改良され、四輪駆動に。

 馬力が違うのだよ、馬力が!!






 美濃に到着。

 馬より速いし、疲れない。快適な旅だった。

 尾張からの輸送は、今はこの虎駆・改が活躍しているが、最近は出番なし。ひさびさの輸送が俺の護送ということだ。

 なかなかの大役。大義である。と、ふざけている場合でもないか。今回の美濃行きは、国の存亡が懸かっている。遊びじゃないのだ。


「こっからが、踏ん張りどころだな」

「その前にお着替えを─────」


 確かにジャージじゃ、いくらなんでも失礼か。一応は頭を下げる立場だ。

 着替えを済ませ、道三のおっさんのところに行く。

 待たされること一刻。足も痺れてきた。


「待たせた、信長…」


 ストレッチをしているところで丁度、道三のおっさんがやってきた。


「ん? それより、どうしたんだよ。その顔は??」


 戦にでも行ってきたのか、顔面に包帯をグルグルに巻いている。

 待たされた理由は、これのようだ。


「ふん。何でもない、道端で転んだだけだ」


 見え透いた嘘を言う。んなわけねーだろ。

 治癒魔法を使えば一瞬で直るのに、それもしないで遅れてきた。

 治癒する暇もなかったか。出掛けに怪我をしたのか。

 まあ、あまり深く詮索はしない方が良いのは確かだ。どうも、痴話喧嘩っぽい。

 家庭内のことは身内で解決してくれ。


「ま、無駄話をしても仕方ねーし。本題に入ろう」

「交易の件だな。帰蝶から話は訊いている。娘は息災か?」

「元気すぎだ─────」


 昨日の夜も遅くまで、な?


「て、そんな事はどうでもいいんだよ。どうして急に尾張との交易を中止したんだ!!俺達の同盟はどこに行ったんだ!!」

「…うむ。これは、な。制裁なんだよ」

「制裁?嫌がらせの間違いじゃねーのか?俺、道三のおっさんを怒らせるようなことした覚えはねーぞ!?」


 俺は制裁を加えられるような事をしたつもりはない。勿論、嫌がらせも。

 なら、誰が誰に対してだ?

 尾張の国の人間が、余所様の国の人間に手でも出したのか…。それで国際問題に発展しちゃった?

 いやいや、俺のとこには、何の話も届いてない。

 苦情陳情は、全て俺のところにやってくる。嫌な仕組みだな。

 誰だ、考えた奴は?それこそ、嫌がらせの何者でもない。


 と、また余計なことを…。


「えーと、で?…何の話だ?」

「制裁と言っても、尾張との交流は控える程度のものだ。織田信長を苦しめるために…」


 苦しめる?

 困らせるの間違いでは??

 いや、それよりも………。


「俺??」


 全く身に覚えがござません。て、ふざけててもしようがない。

 何の通達もなし。周辺諸国からの同時の交易中止は、予想した通りだ。

 尾張経済を狙った攻撃である。

 そして、一斉にと言うのが肝心だ。国に対して命令できる存在。国の上にある存在と言えば、俺でも知ってる室町幕府だ。


「その様子だと、事態に慌てたと言うことではないようだな。言っとくが儂は味方できんぞ」

「そこまで無茶な要求はしねえよ。だが、その話がホントなら、どこの国に行っても同じか……。やべーな。どうすっかなぁ…」


 義理の息子という立場。だが、幕府にそんなこと言ったところで。言い訳したところで、聞く耳を持ってはくれないだろう…。

 美濃を巻き込んでは、申しわけなさすぎる。


「────と、言うのは表向きだ。嫁に行ったとは言え、娘に不憫な思いをさせるわけに如何のだ」

「それって、尾張を支援してくれるってことで良いのか?」

「何度も言わせるな!娘を愛していればこそ、当然のことだろ!!」


 本音っぽいけど。娘のために国を危険に晒すのか?

 しかし、道三らしくて分かりやすい。


「ありがとう、助かった。しかし、幕府の奴ら…。マジでヒデーよな!!」


 腹黒い連中だ。


「それが、幕府のやり口だ。武と財を持つものが支配する。それが今の世の中だ。表立って逆らえる者は誰も居らんよ」


 長いものには巻かれよは、誰に対しても責められたことじゃない。天下野望に燃えるのも、また同じ。

 実際に幕府の言うことを素直に聞く者も居るし、逆に裏でこそこそと動く者も居る。

 どうやら、道三のオヤジは後者のようだ。


「人に喧嘩をふっかけておいて、自分達は高みの見物か…。上から人を見下してんじゃねーぞ」

「だからと言って、幕府と争おうとなど考えるでないぞ。今は、耐え忍び時を待つのだ」


 その時間を道三のオヤジが稼いでくれると言うのはありがたいことだ。

 まあ、俺を助けるなんて理由は後付けで、ホントのところは濃姫がいるからだ。

 人質みたいだが、別に死を分かつまでという気はさらさらない。尾張や俺が危なくなりそうなら、ソッコー美濃に送り返す。別れるには上手い理由だろ。つーか、今すぐ別れたい。


 ─────と、俺は顔に出やすいんだった。道三のオヤジにバレたら、シャレにならない。


「ま、上からじゃ見えないものもある」

「うむ。儂らの同盟は健在だ。幕府の威光など何するものぞ!!」

「おお、頼もしいな!!じゃ、美濃との交易はこれまで通り…。いや、これまで以上にハデにやるか!!」

「バカか!?派手にやってはバレるではないか!!裏でこそこそだ。こそこそな?」


 そうだった。この事が幕府にバレたら元も子もない。


「濃姫に運び役をやってもらうか。里帰りの土産とか言えば言い訳になるよな。きっと」

「随分と苦しいが、大丈夫だろう」


 良し。これで美濃との交易再開の目処は立ったな。後は他の国か…。


「とりあえずは、これで尾張も落ち着くだろ」

「もう帰るのか? なら…。帰蝶にも、たまには城に顔を出すように伝えておいてくれ」

「おう。勿論だ!!」


 願ってもない。これで夜は静かに寝られる安眠の日々だ。


「うん? 何をそんなに喜んでいるのだ?」


 と!? しまった。怪しまれるか?

 まさか、あんたの娘がエロ過ぎて夜も眠れないんです。なんて、言えるわけもない。


「こ、交易再開が嬉しかっただけだ。それだけだ。うん、二心なんてないからな!?」

「そうか。そうだな、国を考えるのは当然の想いだ。励めよ、信長」


 ふぅ。危ない危ない。華麗にスルーできたぞ。流石、俺!!


「と、忘れてた。そう言や、ミツを見てないか?」

「明智光秀か? 確か、奴は町外れの研究所に籠もっていると聞いているが?」

「いや。それが、居ないみたいなんだ。どこに行ったのか、誰も知らねーみたいだし…」


 ミツが、居れば百人力と思って来たが思惑は外れ。だから、こうして聞いているのだ。

 知ってたら、最初から訊いてねーっての。


「ふむ。となると…、あそこかのぅ?」

「心当たりがあんのか? どこに居んだ!?」

「尾張だ」

「え?聞き取れなかった。すまん、もう一度言ってくれ」

「だから、尾張だ。行き違いになったのだろう」


 馬鹿な!?確かに、帰って来てくれと伝えてあるが…。


「マジで?」

「うむ。ここに居らんのなら、他に居るとしたら尾張の方だろ」

「ああ。そうだな…」


 何、このすれ違い。市もミツも、最近俺を避けてないか?

 俺の呼び出しに応じたのだから、そんなはずはない。タイミングが悪かっただけだ。

 ミツの居場所が分かった。なら、もう美濃には用はねーな。


「じゃ、俺も帰るとするよ。今日はありがとうな」

「礼は要らん。それより、行動で示してくれると、儂としては嬉しいがな?」

「…は?」

「惚けおって。帰蝶から聴いておるぞ? そろそろ、儂も孫の顔が見れそうだとな!!」


 サイテーだな。このクソ親父。

 しかし、尾張の技術力を舐めるなよ。ゴムの技術力は進化した。明るい家族の計画だ。


「ま…、まぁ。アレだ。その内にな」

「ハッハッハッ!!遠慮する必要はない!!子供は良いぞ。子はかすがいだ。バンバン、子を作れ!!無論、帰蝶が一番だぞ!!あれは佳い娘だ!!」


 側室なんて持ってねーし。娘自慢も要らねーよ。

 チクショウ…。セクハラで訴えるぞ!?


 だが、美濃は良いとして、他の国の状況は変わらない。

 国民の不安。戦争への恐怖は国としても大きなストレスになる。いつ爆発するか分からない爆弾を抱えているようなものだ。

 状況改善は、急いで考えないとダメだ。


 そう。セクハラ親父を相手にしてる場合じゃない。


 城に帰ると、道三のおっさんが言っていた通りだ。

 ミツが帰ってきていた。ホント、久し振り。


「おかえりー!!」


 帰って早々、テンション上がるぞ。ミツもニッコリ顔だ。


「いや、ドン引きだよ。なに?何でそんなテンション高いのさ!?」

「ヒデーよ!!数ヶ月もほったらかしにしておいて、それはねーんじゃね!?」

「まあ。それも、そうか…。ただいま」


 夢中になって時間を忘れるとは言うが…、数ヶ月もの長い時間を忘れんなよ。


 だが、ミツが帰ってきて、俺も肩の荷が降りた。

 有言実行で、数日の間で外交を担当する部署を立ち上げた。新設の外務省はミツに任せれるし、国内情勢も頼りになる家臣達がいる。

 俺のやることねーんじゃね!?羽根を伸ばして、学生生活をエンジョイできる!!


「信長様?今宵も良い夜ですね?」

「今夜も…ですか~。濃姫…」


 夜の仕事も再開だ…。

 濃姫め…、道三に何か吹き込まれやがったな。暇が出来たと思ったら、これだもんな!!

 チクショー!!


「あらあら。そんなに固くならなくても良いのですよ? 固くするのは……」


 下ネタかよ!?

 これは違うんだ!!気持ちとは別に身体が反応しちゃうだけなんだ!!


「そんな、毎日来られてもよぉ~。俺の身が…」

「父から孫の顔がみたいと言われてます。それが尾張の国の為だとも」


 悪魔の取り引きかよ!?国を盾に話を持って行くな!!

 この生活…。いつまで続くんだ…。マジで身が保たない。この手の話を親友に相談して良いものか…。

 …あれ?

 そう言えば、ミツが何か話があるとか言っていたな。まあ、明日で良いか。

 結構、重要そうな?真剣な表情だった。それに、ミツの研究成果も気になるところだ。





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