新生活
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新章 異世界高校生・織田信長
31)新生活
戦国世界、日本大陸。
北海道は極北の大陸、蝦夷。沖縄は南半球に位置する、琉球。四国、九州も赤道近くにあるようだ。
国によって気候が違うし、当然のごとく時差もあるようだ。
この世界、この星を見渡せる俺だから分かることだ。
俺は「天下統一するぞ。」なんて、簡単に世界征服宣言したが、生半な気持ちでは上手く行かないだろう。
本格的に動くには、まだ準備が整っていないと言うことだ。
尾張国、清洲の街─────。
清洲首都化構想。農業、工業は尾張各地で分散させて生産、製造。それぞれ町や村で出来たものが清洲に集まり、取引される。この街に政治も経済も集約させる。それがミツの考えだ。
戦乱が長く続いているせいで、文化的な発展も乏しいが、交流が増えれば自然と発展していくことだろう。
俺が尾張を統一したからには、娯楽も増やしていくつもりだ。
那古屋の街を見ても明らかだ。すでに、あらゆるスポーツ競技が尾張各地で流行り始めているようで、嬉しい報告だ。
俺も参加したいが、しかし遊んでいる時間はない。仕事が山積みだ。
城の外の活気づいた様子に、俺の集中力が続くワケない!!
「だあぁっ!!もう、やってられるか!!」
「気持ちは分かるけどね…」
いや、俺の気持ちはすでに折れている。この紙の束にへし折られたのだ。
一つの仕事に対して、出てくる報告書の山。整理することさえ追いつかない現状だ。
「パソコンだ。パソコンさえあれば…」
「ないものねだりしても、しょうがないよ。今は口より手を動かして」
さっきから、ミツの手は止まらない。ノンストップで紙の束が消えていく。それでも、しばらく経つとまた山のように積み重なる。永遠を繰り返す無限地獄を見ているようだ。
「ノブ様。パソコンって何すか?」
「あー。この紙の山を消してくれる魔法の道具だ」
「マジっすか!?」
「嘘を教えてどうすんの…。そんな便利なものじゃないよ」
文明の利器。パソコンは情報化社会には欠かせない。この程度の情報量なら、あっという間に整理可能だ。遠く離れていても情報が見れる。ついでにゲームができる。が…、ネットもソフトもないから無理だけど…。
今もっとも欲しい物だ。
尾張各地から時間差でやってくる各種報告に、嘆願要求。一つ一つを整理するだけで精神すり減らせれる。
テレパシーが使えれば…、あ…。それは超能力か。
「便利か…。魔法も便利だけど…。機械の便利さも欲しいよな。つくづく、そう思うわ」
「機械すね。機械…ウンウン」
「秀吉…。ホント、分かってるのか?」
「勿論っすよ!!」
一体誰の真似なのか、平然とウソつく。今日も変わらず、その場のノリで生きている男だ。
秀吉には、前世の記憶について話してある。俺とミツの会話で理解できないこともノリで相槌を打つが、そろそろ限界だ。そう思って、意を決したと言うのに、これもまたノリで流された。
すげー奴なんだか、バカな奴なんだか、掴めない奴だ。何にせよ、気が置けない仲なので、無理に気を遣う必要はなくなった。
「そんな事より、手を動かして頂戴ね。これじゃ、いつまで経っても終わらないよ」
「んなこと言ったてさ。俺に政治のことが分かると思うのか?」
「思わないよ」
普通に返された。
そりゃそうだ。俺に回ってくる仕事は確認と決定の判を押すだけ。他の諸々は、ミツ達がやってくれているのだ。
ミツだけじゃない。他にも俺についてきてくれた家臣達も、身を粉にして働いている。巫女服姿で。と言うのは冗談だ。
「だろ? じゃあ、俺必要なくない?」
「無くなく無いよ。それでも人手不足なんだ。ノブでも秀吉でも僕は使うのさ」
「鬼だな」
「鬼ッスね」
俺の意見に賛同する秀吉。
秀吉も俺と同じく、人手不足で召集された同志だ。
この気持ちが分からないワケがない。
それでも、俺達は自他ともに認めるミツの親友だ。ミツを手伝うのは当然のこと。つーか、元々は俺の仕事なのだが…。
手伝ってと言われれば手伝うし、助けてと乞われれば、何があっても助ける。
それにミツは何つーか、寂しがり屋なのだ。構ってやらねーと、死んじゃうくらいだ。
「ノブ…。こっちの資料に目を通して、判を押しておいてね?」
「て、おい!!なんだ、この資料の山は!!」
これでもかと言うほどの資料の山。今日中に終わるのか?
「はい、秀吉はこっちの資料を読んでおいてね?」
「ウキィ!?何すか、この資料の山は!!」
同様の反応だ。しかし、若干俺の方が仕事が多い。
「秀吉は読み終わったら、早速その設計通りに学舎を造ってよ」
「うっす…」
うん。ごめん。俺の仕事の方が少なかった。秀吉は肉体労働も込みなのね?
「学舎って何のことだ? 俺、そんな話聞いてねーぞ」
「さっき、判子押したでしょ。ちゃんと内容確認してたの?」
おっと。これは一本取られた。つーか、再度確認したらマジであった。俺の見落としか?
「ハア…。ノブ、しっかりしてよ」
「でも、なんで学校なんか作るんだ。この世界の良いところは、学校がないところだろ?」
「学校が好きじゃないのは僕も同じさ。この世界に学校は必要ないかもしれない。実際、子供も労働力とされてるしね。子供達への義務教育なんて、この世界じゃ不可能に近いよ…」
「誰も来ないんなら、意味ねーじゃん」
「意味はあるよ。学校を作るのは、大人達のためなんだ。子供に物の道理を教えるのは大人の役目。義務教育だって、子供に真っ当な教育を受けさせる親の義務なんだよ。勿論、子供もちゃんと学ばないとダメなんだけどね」
「ミツはその土台を作ろうって言うことなのか?」
学ぶ場が必要なのは理解できる。家臣たちの中にも馬鹿な奴はいる。読み書き足し引きができないのだ。
そういう奴らは、戦い方のみを教わってきた奴らだ。戦国の世だし、仕方ないのかもしれない。
しかし、今必要なのは武官より文官。教育が行き届いてないぶん、人材不足は深刻だ。
「まあ、そういうことかな。学校を作っても教える側がいないと意味ないし。中身の無い、空っぽの教室になりかねないよ。これは学校という文化や制度を教え込む場でもあるんだ」
「すげーなミツ。そこまで考えていたのか」
確かに、その通りだ。学校を作っても誰に教わるのか。生徒の自主学習なんて、あてにならならいしな。
とりあえず、やってみてモデルケースにしようって魂胆か。
「最初は、基礎的なことのみを教えようと考えてる。だから、拘束時間も長くないし、希望者だけで始めるつもりだよ」
「お試し期間ってことか」
「そうだね。できれば、民間からの応募に期待してるんだ」
「寺子屋的なものを考えているのか? 将来的な考えとしては良いかもしれないが、戦乱はまだ続いているんだぞ。無駄になるんじゃないのか?」
教育を広めようと考えるのは分かる。武士以外でも教育は必要だが、時間がかかりそうだ。
長いスパンで進める計画なのか? いや、人手不足解消の為に短期間で見つけることを求めているのだ。ミツがそんな悠長な計画を立てるとは考えられない。
「別に寺子屋を作ろうってわけじゃないよ。将来的には、そうなるかもだけど、今のところは街に埋もれる才能の発掘が目的なんだ」
「そんな簡単に見つかるもんなのか?」
隠れた才能は、本人にだって分からないことがある。逆もまた然りだ。
「まあ、そうだね。簡単ではないけど、可能性は高いと思うよ」
根拠のない自信。と、言いたいがミツが何の根拠もなく、そんな事言うはずがない。
「前例もあるしね」
「前例が?どこに?」
「秀吉だよ。秀吉は、元は農民だったでしょ?」
「あー。そう言えば、そうだった。野生の猿が進化したんだったな」
「聞こえてるッスよ、ノブ様!! 俺は、ちゃんと人間の腹から生まれたっすよ!!れっきとした人間っす!!」
ミツの言いつけを守って黙々と資料に目を通していた、秀吉。俺の言葉に反応するとは律儀だな。
「まあ、そう言うことだね」
「そう言うことだねって!!ミツさんまでヒデーッスよ!!」
「ああ、ごめん。そう言う意味じゃないよ。平民からの出世だよって、そう言う話だから。魔法は武士達だけの力じゃなくて、人間が持っている力なんだ。武士の数より平民の数の方が勝る。それなのに、武士達が幅を利かせているのは、魔法が使えるから。平民は魔法の資質を持っていても使い方が分からないんだ」
教えてくれる人間。教わる場所。環境がなければ人は育たない、その証明をしようってことだな。勿論、魔法だけの話じゃない。知らない知識、技術を学べば、それだけ生きる術を獲得できる。
学校は嫌いだが、案外と上手く行くかもしれない。
「と言うわけで、元服迎えた信長くん。君も今日から学生だ」
グヘッ…。やっぱり、そう来るか。なんとなーく、そんな気はしてたんだよ。
「読み終わったッス!!これなら、すぐに作れるッスよ。ミツさん!!」
秀吉の工事着工から数日で学校は完全した。恐るべき、速さ。恐るべき、魔法。
俺が頭首になってから、ひと月経たずに尾張改革が進んでいる。俺も頑張って働いた甲斐があると言うもんだ。
だが、俺の頑張りなんて毛の一本にも等しい。無駄な努力ということじゃない。毛の一本だって大切だ。将来的に禿るのは避けたい。
いや…、そう言うことじゃなくて、舌を巻くのはミツの手回しの速さだ。開校当初から教師生徒が集め終わっていた。
尾張各地への学校開設の知らせと同時に募集され、立身出世、下剋上を目指す武士や平民達。…なんだが、実際は恐る恐ると言った風だ。
始まったばかりだ。
新米教師と新入生徒だし、おっかなびっくりなのは当然だ。いきなり楽しい学校生活とはいかないだろう。
武士も平民も問わないと言っても、格差は存在する。教える側にも教わる側にもだ。
それも時間の問題だ。
学校への関心は高い。今までなかった学校だ。知識、技術、魔法。どれをとっても興味は尽きない。身分なんかで競うより、どれだけの知識、技術、魔法を身につけたのか。その成績で競うことで、互いに歩み寄っている。
もっぱら、魔法への関心が高いよーで、魔法の知識、技術には多くの生徒が集まっている。魔法への憧れみたいなものがあるんだろう。
そして、魔法を教える教師はミツ先生だ。
魔法の一般への普及が進めば、生活自体が一変することになる。悪用する奴も出てくるだろうが、悪即斬と言うことが決まっている。…なるべく、悪用する奴が現れないことを願おう。
始まったばかりだし、問題は色々あるがひとまずは様子見だ。俺も学校生活を送っている。内側から見えることも多い。何かあれば、すぐに対応できる。
頭首としての仕事と学校生活。意外と両立できるもんだな。
そんなある日のこと。
清洲に大名行列が…。
「なんか、見覚えがあるんだけど…」
大袈裟な侍達の数。それと異様な荷物の多さ。勝幡にいた頃に見た風景によく似てる。
俺の下に市が来ると、親父が用意した大名行列だ。
戦でもないのに一体何事かと、大勢の奴らが見にきている。俺もその一人だ。
尾張の中で何を警戒しているのか、物々しい警護体制だ
。つーか、尾張の奴らではなさそうだ。
その行列の中に見知った顔を見つける。
「え、道三のおっさん?」
警戒する必要はないようだが、来るなら来るで連絡くらい寄越せよ…。




