表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/65

尾張騒乱 後編

26)尾張騒乱 後編


 数日後には、那古屋の街を囲む巨大魔法防壁が完成した。

 これで街の配備も完璧。ある種、要塞都市みたいな感じになった。

 鉄壁の要塞。これを前に敵は沈黙せざーるを得まい!!


 何故、俺がここまで街の防御強化に取り組んでいるのか。俺らしくもない働きっぷりだ。

 いずれはやらなければならないことだが、信友の一件のせいで住民の不安は大きい。街の奴らに影響が出てきたのだ。農業、商業は目に見えて落ち込んできた。

 まあ、備えあれば憂いなしとも言うし。俺も気合いを入れて頑張ってみた。勿論、これは建前で本当のところは市のために…。

 いやいや、俺が頑張る理由なんてそれしかないじゃん。

 街の水路に水を流して、今日の作業は終了だ。なので、このまま帰宅?帰城?

 街を覆う巨大魔法防壁と街全体を流れる水路を加えて、俺の負担がやたらデカい。市ももう帰って来ているだろうけど、今日は先に休ませてもらう。

 いつもの市との雑談はなし。眠くてしょうがないのだ。

 部屋に戻ると即座に眠りについた。


 翌朝。市は起こしに来なかった。

 もしかして、昨日は何も言わないで寝ちゃったから怒ってんのかな?

 だとしたら、マズい。早く、謝りに行かなくては!!


「おーい。市? ミツ、市のこと見なかったか?」


 部屋には居なかった。城のどこかに居るはずが探しても見当たらない。

 今日は、バイトはないはずだ。市のことで俺の知らないことなんてない。シフトもばっちり確認済みだ。


「いや、見てないよ」


 ミツ、素っ気ねーよ。俺としてはもっと真剣に答えて欲しかった。だって市が居ないとは大事件だぞ?

 だが、道場に居たミツに聞いても分からのは当たり前か。市が、俺を差し置いてミツに会いに行くはずもない。

 他のあてを探すか…。


「おーい。市ーっ!! 秀吉、市のこと見なかったか?」

「何すか? 俺が見てるわけないっしょ。んなことしたら、ノブ様に殺されますもん」

「だな。秀吉に聞いた俺がバカだった」


 一番、有り得ない選択肢だった。

 何故、秀吉に訊いたのか自分でも不思議だ。


「どうしたの、ノブ?」

「ああ、ミツ。来てくれたんだ」


 心配して様子を見にきたのか。まあ、あれだけ騒げば当然だ。

 城の中をどんだけ駆け回ったんだ、俺…。それでも、心配して来てくれたミツには説明はする。


「いやな。今日は、何でか市が起こしてくれなかったんだ」

「ノブ…。ノブは、まだ市姫様に起こしてもらっているの…」


 視線が痛い。ちょー痛い。突き刺さってる。


「い!!いや、違うって!!きょ、今日はあれだ!!出陣前の決起式があるだろ?だ、だから寝過ごすワケには。な、な?」

「言い訳、必死っすね。ノブ様」


 く…。秀吉にまで冷めた目で見られた…。


「確かに、苦しい言い訳だね。もう少し、マシな言い訳を────」

「そんなことより。市だよ。市!!もしかして、働き過ぎで体調崩したのかも…。いや、それどころか行き倒れていたりしたら!?」


 ダメだ。悪い妄想ばかりが膨らむ。どこを探しても居ないのだ。

 市を働かせ過ぎたのか…。もしかしたらと言う不安は消えない。


「本当に心配性だね。そんなに心配しなくても市姫様なら、ノブと違ってしっかりしているから大丈夫だよ」


 ぐうの音も出ねーよ。

 俺と比較すんな。市に対して失礼だろ?


「なら、良いんだけどさ。でも、朝から市の姿を見ないと、何か元気出ねーんだよな…」

「本当にノブは真性のシスコンだね。これも血筋なのかな?」


 血筋とは失礼な。幾ら、親友でも言って良いことと悪いことがある。真性のは親父の方だった。

 そう。言うなれば俺はシスコンかもしれない…が、正解だ。


「し、しすこん? ミツ様、また難しいこと言いますね。何すか、それ?」


 秀吉の横文字の弱さも相変わらずだ。

 俺達との付き合いで理解を深めてはいる。言葉は分からなくても、意味は分かっているようだ。

 知らない言葉が出てくれば訊いてくるし、物覚えも良いから説明に不便はない。バカなのか天才なのか、よくわからない奴だ。


「ノブが市姫様のことで騒いだら黙らせる魔法の呪文だよ。秀吉もこれからは使ってみると良いよ」

「分かったっす!!」


 やっぱり、ただのバカか。何の説明にもなってないのに、何が分かったんだよ。

 それにミツも、ちゃんと説明しろよ。


「お前ら、ヒデーな…。イチオ…、オレ城主だよ?」

「の、信長様!!大変にござる!!信長様!!一大事にござる!!」

「ど、どうした!?」


 コイツ…。確か、市の非公式ファンクラブの会員。つか、俺の家臣の一人だ。


「市姫様がさらわれたにござる!!」

「さ、さわられた?!だ、誰にだ!!ソイツ殺す!!今すぐ殺す!!」


 痴漢は何処にでも健在か。クソ!!これだから、男って生き物は!!

 市に近づいて良いのは俺だけで十分だ。他の誰かに触れさせるなんて、考えるだけでもおぞましい!!


「ノブ!!ふざけている場合か!!」

「す、済まん。俺も気が動転してんだ…」


 落ち着けよ、俺。いくら何でも、そんな命知らずいるはずねーよな。ハッハッハ…………。

 俺の妹に手を出せばどうなるなんて、言うまでもなく殺っ!!それを誘拐しようなんて、誘拐しようなんて、誘拐しようなんて…。


「なにっーーーーーーーーーつ!!!!!」

「落ち着いてくれよ、ノブ様!!」

「バカッ!!これが落ち着いてられるか!!市がさらわられたんだぞ!!今すぐ助けに行くぞ!!って、どこにいんだ!?」


 一分一秒が惜しい。どんな手段を用いても探す。

 それが出来れば、だ!!

 人捜しの魔法なんてないし、俺に人捜しの心得なんてない。こんな事態、生まれて初めてだ。

 もう、どうしたら良いのか分かんねーよ!!


「ノブ!!気持ちは理解出来るけど、今ノブが慌てても何もならないだろ。ここは、僕達に任せて少し冷静になってくれ!!お願いだ!!」


 俺に頼むだなんて、ミツにしても冷静ではない。

 そうか。市のことを考えてくれているのは、俺だけじゃない。ミツもそうだし、それはきっと茶々たちも同じなんだ。


「分かった。俺はしばらく部屋に居るよ…。何か、分かったらすぐに教えてくれ」


 ここは大人しく、部屋へ戻る。

 ミツの言うとおりだ。今の所、俺に出来ることはない。むしろ、俺が邪魔している。

 俺なんかより、優秀な家臣達を信じるべきだろう。


 それにしても…。

 まさか、市をバイトに出したことが裏目に出るなんてな…。狙われたとするなら出勤退勤時だろう。

 俺がついていたら…、そう考えてしまう。


「違うな。今は何をすべきか、だ」


 市のことで、俺に分からないことはないはずだ。

 俺になら、市を連れ去った犯人の気持ちだってわかるはず…。


 この街は防壁に守られている。つまり、出入り口は限られ、人の出入りも見張れる。警備は完璧だと言える、はずだ。

 街の外へは出られない。なら、市はまだ街の中に居ると考えるのが自然か?

 城の中に居ないなら街の中だ。

 団子屋周辺は人目も多いし、狙われたのは人目の少ない城の近く…。拉致監禁となれば、隠せる場所の目星は付けられる。

 城の周辺は、家臣達の住む武家屋敷だ。

 当然、犯人は家臣の中の誰かということなるな。ストーカー事件の可能性が出てきたな。

 怪しいのは、市のファンクラブに入っている奴らか。

 非公式なだけあって、ルールや規約みたいなものはなかったし…。さらに匿名性が高い集まりだ。誰が会員なのか、取りまとめをしている会長しか知らないのだ。しかし残念。俺はその組織を知っているだけで会長が誰かまでは知らない。

 会員の一人は俺の前で口を滑らしてしまった、あのバカだけ…。ござる侍だ。


「ん? 待てよ…。何で、あのバカ侍は市が誘拐されたなんて言ったんだ?」


 あの時、俺はおろか誰も市が誘拐されたことに気づいていなかった。

 ござるの奴が、浚われたなんて言うから…。


「まさか、あいつが!?」


 顔見知りの犯行という線は濃厚だな。…いや、待て。それは早計かもしれない。

 まず第一に、俺にそのことを話す必要はない。逆に知られない方があいつにとっては良かったはずだ。

 そして、第一発見者を疑えは鉄則だ。自ら、疑われる真似をするだろうか。

 黙っていれば、行方不明扱いで終わっていた。いや、その前に俺が大規模捜索命令を下しているか…。

 いや、そうか!!あいつは俺が捜索命令を出す前に誘拐されたとうそぶいたのだ。

 捜索の目を外に向けさせるために。


「なんて用意周到な真似を…あいつ。く、危うく騙されるところだったぜ」


 となれば、一刻も早く犯人逮捕だ。市は恐らくあいつの家に捕らえられているはずだ。

 だが、慌てるな。ここで、慌てては犯人を逃がす恐れがある。血迷った犯人が何をするか。最悪、市を道連れにすることも考えられる。

 行動は慎重に。だが、迅速に動かなければ。


「…流石に、共犯者は居ねーよな…」


 万が一と言うこともある。やはり、俺一人の単独行動は止めておいた方が良いか。

 協力を頼む必要がある。

 協力者…。俺が信頼できる人間といば、ミツと秀吉だな。三人娘も一応は信頼しているが、あいつらはまだ子供だ。

 危険のあることに巻き込むワケにはいかないよな。


「覚悟決めろ、俺!!……よしっ、ミツ!!秀吉!!」


 呼べばすぐ来る二人。な、ワケもなく。

 市の捜索のために頑張っている所に俺が邪魔をした。

 そのせいか若干、苛立ち気味な二人だ。


「ミツ、秀吉。忙しいとこ悪いが、話がある…」

「真面目な話っぽいね。分かった、すぐに行くよ」

「うっす!!」


 俺の言葉に深く追求しない二人。

 頭の良いミツと勘の鋭い秀吉だ。俺が言うまでもなく、犯人にたどり着いたのかもしれない。


 人払いも済ませ、今部屋に居るのは俺とミツと秀吉の三人だ。


「忙しいのに邪魔して悪かったな。だが、聞いてくれ。俺、犯人が分かったんだ」

「はあ!?何を言ってるんだよ」

「うん。驚くのも無理ないよな。俺も驚いている」


 この頭脳の冴えは、市が絡んでいるから。市を助けるために、俺の頭脳が冴え渡った結果だ。


「別に驚いてはないんスけど…」


 そうか。やっぱり、秀吉も犯人を突き止めていたんだな。刑事は足で稼ぐと言うが、秀吉も行動の男だ。

 あれから聞き込みでもして、捜査していたのかもな。市のために頑張ってくれていた秀吉に、感謝だな。


「ふ…、だろうな。しかし、秀吉には悪いことしたな。まさか、あいつが犯人だったんだからな」

「え? 何のことッスか?」


 秀吉はとぼけているワケではない。俺がはっきりと犯人の名を言わないから分からないだけだ。

 仕方ない。そろそろ、はっきりと犯人を告げるときだな。


「秀吉。捕縛の準備をしろ。捕まえるぞ、犯人。前田利家を!!」


 今更だが、犯人の名を告げる。考えて見れば、最近の奴の様子は変だった。ちょこちょこと城から居なくなったと思えば、団子屋に行っていたとか…。

 きっと、市を目的にしていたんだろう。

 ストーカーとはホントに恐ろしい。そこまでつきまとって何が楽しいのか、俺には理解不能だ。


「待って下さいよ、ノブ様!!利家は、俺の配下ッスよ!?あいつが犯人って何したんスか!!」


 え!?何、この反応??

 秀吉も犯人分かったよ的な顔してたじゃん!!


「いや、だから。あいつが市を誘拐した犯人だって話だよ」

「ノブ…。それは一体どこから出た話なの?」

「どこからって、俺の名推理じゃん。証拠はないけど…、間違いないはずだ」


 いや、あいつの家を捜せば市がいるはずだ。それが証拠になる。

 前田利家は、城では真面目に働いていると評判だし、忠義にも厚い男だ。

 庇いたくなる気持ちも判る。だが、裏では市のファンクラブ。これは、俺としては庇う気持ちはまったくない。

 むしろ、何時かは潰そうと考えていた非公式組織ファンクラブを叩くチャンスでもある。

 今更、説得して自首させて終わりにはできない。


「つまり、ノブは状況証拠だけで、そのくだらない妄想を…。推理をしたってことだね?」

「いま、妄想て言ったのか? 言ったよな!?」

「実際、その通りじゃないッスか。利家が犯人なわけないッス」


 なにやら、訳知り顔の秀吉。確信があるようだ。

 俺だって、ホントは身内を疑うことはしなくないんだ。


「そーなら俺も良いんだけどな」


 だが、そうなると真犯人は一体誰になるんだ?

 謎が謎を呼ぶミステリーだ。


「だいたい、誰が犯人とかいう段階はもう終わっているんだよ。いまは、どうやって助けるか…。その話し合いをしている途中だったんだ」

「そうッスよ」


 えぇ~。じゃあ、俺の推理は何だったんだ。

 犯人分かってたんなら、ミツが妄想っていった理由も納得だけど。


「じゃあ、なら何で教えてくれなかったんだよ!!」


 俺にそのことを教えなかったことには納得できねーって。何か判ったら教えてくれと言っていたはずだ。

 仲間外れにされて不満タラタラだ。


「教えても良かったんすよ。ホントは…。でも、ミツさんが…」

「おい、秀吉!?僕のせいにするつもりかよ。秀吉だって賛同してただろ!!」


 二人揃って、俺をのけ者かよ…。


「この際、どうでも良い。それより、犯人は!市は無事なのか!!」

「心配はない。今のところ、要求はノブの投降だけだね…」


 俺の、投降?

 俺一人で出て来いってことか。


「望むところだ。俺が行って、犯人をぶっ千切ってくるさ」

「いや、そうじゃなくてさ。ちゃんと話理解してるの、ノブ?」


 ん? どういうことだ。市を賭けたタイマン勝負じゃないのか?


「つまり、決闘ってことだろ? 当然、分かっているぞ。だから、俺に任せろって!!」

「はぁ…。全然ダメ。全然理解してないじゃん、ノブ。そうじゃなくてね、市姫様を誘拐したのは織田信友なんだよ」


 え…。えっと…。それは、市が人質にされているってことなのか?

 信友に市が拉致られて、今度は俺に来いと…。


「そうッス。だから、俺達も迂闊に手を出せなくて困ってたんすよ」

「んだよ…。そんなの話は早いじゃねぇか」


 犯人がわかって、市の場所も判明した。そして、犯人の要求は一つ。…俺だ。


「俺が行く。俺一人で奴の城まで行けば良いんだろ? 当然、行くに決まっているだろ!」

「はぁ…。だから、ノブには話したくなかったんだよ。ノブなら絶対そう言うと思ったし…」


 何だ。俺をのけ者にした理由はそれか。それなら、許すしかねーよな。

 こんな話聞いたら、まず間違いなく俺は暴走していたはずだ。既に暴想していたワケだしな。


「でも、行かせないよ。ノブが城に行ったらどうなるか分かっているのか?」

「さあ? どうなるんだ?」

「はぁ…。ノブが目的なら、この城に用はない。信友は普通に攻めて来るよ。ノブの居ないこの城をね」


 言われてみたら、その通りだ。

 市を人質に捕られて、俺は手も足もでない。城の奴らも当然、手も足もでない。

 全てが終わった後、反乱分子である古渡城の連中を放置しておくはずがないし。なら、その前に潰しておこうと考えるのが普通だよな。


「だからって!市をこのままには出来ねーだろ!!」

「そうやって、また命を粗末にするのかよ!!僕にとっては市姫様よりノブの方が大切なんだ!!」


 睨み合う、俺とミツ。

 俺は引くつもりはない。いくら、ミツの言うことだとしても、俺にとっては市も大切な存在なのだ。

 俺が行かなければ、市がどんな酷い目にあうか…。


退けよ、ミツ!!」

「行かせないよ。ノブ」


 時間が惜しいってのに…。ミツの奴、こんなに石頭だとは思わなかったぞ。


「ノブ様!!ミツさん!!やめるッスよ!!俺だって本気で怒るッスよ!!」


 別に秀吉が怒ろうと怖くはない。ないが、物理的な被害は怖い。

 秀吉の肉体的な強さはハンパない。俺もミツも、魔法なしの戦いでは数段劣るのだ。


「ちっ…。ミツの石頭…」

「ノブの分からず屋…」

「いい加減にするッス!!二人っとも、子供ッスか!!」


 結局、殴られた。


「ミツさん。俺はノブ様に賛成ッスよ。ノブ様なら、きっと市姫様のこと助けられるって思うっす」

「秀吉。それは本気で言っているのか?」

「勿論っす。ノブ様はいつも俺達の想定外の行動しまスッから」


 待てよ、秀吉。それは、全然弁護になってない。それでミツが許すはずねーじゃん。


「確かに…。想像以上に馬鹿な行動ばかり起こしているけど?」

「いや、えっと…。だから、今回も多分大丈夫かな…とか…」


 尻すぼみ…。

 弁護どころか、援護にもなってない。最初の勢いはどうしたよ!?


「ミツ。じゃあ、何のためにあの巨大防壁を作ったんだ。こういう時のためじゃねーのかよ!!」

「籠城は愚策だよ」

「だろ。だから俺が行くんだよ。信友の軍勢程度に破られる守りじゃねぇだろ? ミツ達が、この街を守ってくれている間に俺が絶対何とかする」


 これは出来る出来ないの問題じゃない。市を助けて、信友の野望を止めることが、街を守ることにも繋がる。

 それに、ミツが思っているほど俺もバカじゃない。考えなしに突撃したりするはずない。市を助けれさえすれば、その後の手段は幾らでもある。


「それにさ、信友の軍勢がこっちに攻めてくるなら好都合ってもんだ。奴の城は手薄になるだろ?」

「僕達が、囮になれって言うのか。…悪くはないけど…、それじゃあ結局────」

「ミツさん。信じるッスよ。ノブ様を」


 今度はホントに良い援護になった。

 俺を心配してくれるのは嬉しいし、有り難い。けど、俺を信じてくれる方がもっと嬉しい。

 人から信頼を得るのは難しいけど、俺はミツを信頼してる。ミツだって俺を同じように信頼してくれている。


「判ったよ。僕の負けだよ…」

「ありがとう、ミツ」

「まったく…。さっきまでのケンカは何だったんすか…」

「秀吉にも迷惑かけたな。ちょっと頼りなかったが、俺を助けてくれてありがとな」

「ま、まぁ。全然、役に立たなかったスけど」


 うん。ホント役に立たなかった。だが、その気持ちだけでも十分だ。

 俺を信じてくれた秀吉。秀吉がそこまで俺を信じていたとは思ってなかった。

 あの場面では、ミツの言ったことが正しかった。友達とは言え、あそこはミツの意見を支持しそうなものを、逆に俺を助けてくれようとしたんだ。

 ミツが前の世界の親友なら、秀吉はこの世界でできた初めての親友だな。


「秀吉の出番はこれからだ。街の防衛。秀吉には十分働いて役に立ってもらうぞ?」

「げぇ。ノブ様…、俺に何をさせる気ッスか…」


 ま、そこは俺の信頼と言うことで納得してもらおうか。秀吉に俺の秘策を授ける。


 亀のように閉じこもる防衛戦だが、被害は出来るだけ出したくはない。街もそうだが、人への被害は特にだ。

 秀吉の働きに期待だな。勿論、ミツが付いているんだし、安心して任せられる。


 俺は俺で、ミツ達の期待に応えないとな。

 市を助ける救出作戦。今、市がどんな想いでいるのか考えると正直ツラい。

 急がないと。


 焦る気持ちを抑え、支度を済ませると俺は城を飛び出した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ