表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/65

尾張騒乱 前編

25)尾張騒乱 前編


 斎藤道三が美濃へと帰った、その翌日…。

 秘密にしていたアレが…、バレたワケで…。

 俺としては頑張ったよ? ホント、頑張ったのにミツからは大目玉を喰らった。

 どうも、ミツは現代の知識や技術といったものを此方の世界に持ち込むことには否定的なようだ。

 とは言え、既に始めてしまったものは、もうどうしようもない。途中で止めることもできないし、中途半端はミツが許してくれない。ミツはそういうとこは厳しい奴だ。

 なので一安心。結局、続けても良いことになった。


 さて、そのメイド喫茶がどうなったかと言うと…。

 暇を持て余す、三人娘。茶々、江、初は毎日のように店に出している。

 市は、人混みがやはりキツいようで週2。多くても週3だ。俺が店に出る日に同伴して来ている。つまり、俺も週2か週3でしか働いてない。

 執事役が俺一人では、流石に無理。接客はストレスが溜まる。なので、今では城の奴らも借り出して働かせている。

 厳密には、ミツや秀吉だ。

 当然、ミツはイケメンだから。秀吉は…、顔じゃない。忙しい店を回すための労働力。ほぼ、裏方仕事だ。

 メイド喫茶“団子屋”は、いつものメンバーで営業中。その人気は衰えることなく鰻登りで、店の主の婆さんも大喜びだ。

 それに、当然の如く他の店もマネを始めた。街にメイドが増える姿はいいものだ。

 きっかけは、メイド服を仕立てた呉服屋がメイド服を販売し始めたためだ。

 販売したと同時に飛ぶように売れたという。着物の倍はするジャージ。それのさらに倍の値のメイド服が売れるとは…。


「なあ、ミツ? 来てくれるのは有り難いんだが、城の方は大丈夫なのか?」


 信友の動向は、未だに静かなものだ。怖いくらいに…。とは言え、このままにしておけないだろ。

 近い内に、こちらから攻撃を仕掛ける予定になっている。その準備はすでに始まっているから、ミツだって忙しいばすだ。

 その合間を縫ってということだろう。


「大丈夫だよ。既に役割分担は決まってるし、みんな働いてくれているよ。真面目に働いてないのはノブだけだよ」

「最後のは余計だ!!ま、なら良いんだけど…」

「何、僕が来たらダメなのか?」


 ダメってことはないが…。意外と城の奴らも暇している気がする。

 気がつけば店に城の奴らが来ているのは、俺の気のせいではないはずだ。


「何て言うのかな? 学校の文化祭みたいで、結構楽しいんだよね」

「まあ、言いたいことは分かるけど…」


 高校での文化祭は、喫茶店とかやってたし、俺も多少の憧れみたいなものはあった。俺がやっているのは、その真似事のようなものだ。

 実際、俺も楽しくやっていた。


「ノブが不機嫌な理由はアレかな? 僕が来ると人気が奪われるから、かな?」


 それに関しては問題ない。もとより、俺の人気は底辺だ。ここに来る連中は、市もしくは三人娘を目的にしている客だ。

 今日、女性客が多いのはミツが店に出ているためだ。

 俺も男。モテモテなのも憧れるが、そんなの前世から無縁な話だ。

 バレンタインに部活の先輩にチョコを渡してくれと言われるくらい、無縁な話だ。

 好きな子に告白したら、その子の友達から「無理」と返事を貰うくらい、無縁な話だ。

 そんな話はさておいて。此方でも女子に人気の高いイケメン執事。文化の違いというより、立場的に弱い女子が男性からチヤホヤされること、お姫様扱いされることが要因のようだ。

 イケてない俺でも、その接客で喜ばれてることからも明らかだ。


「いや、不機嫌になるのは市の方だ。ああ見えて市はブラコンだからな。俺が店に出るのを嫌がるんだ」

「それで、僕に…。なるほど」


 なるほどって何がだ。勝手に納得すんな。俺にとっては死活問題だ。

 忘れてはならない。市は怒らせると怖いのだ。


「本当に仲の良い兄妹だよね。ノブ達は」


 的外れ…でもないか。

 仲良しで良いじゃん。市と間近で触れ合える喜びは何に対しても代え難い。俺はメイド姿の市に酔いしれる。

 それに…、兄弟同士で争うのは懲り懲りだ。

 市には望むこと、願うこと、出来ることは全部やってやるつもりだ。て、元からそんな感じだったか?


「だけど、そろそろこの店も仕舞いだな」


 この言葉に真っ先に反応したのは三人娘だ。

 最近では、ツンデレという技術を身につけたようで似非メイドが板に付いた三人娘。

 接客そっちのけで俺のところにやってきた。やはり、似非メイドだ。


「え!?どいうことですか、信長様!!せっかく、これから色々と宣伝して行こうと思ってましたのに!!」

「手伝い嫌がってた割に、なんかノリノリだな…。つーか、茶々。お前らいつの間にそんなことしてたんだよ」


 よくあるキャンペーンとかだろうけど、こいつらなりに店のことを考えて働いてくれていたらしい。


「べ、別にノリノリじゃないし…。好きでやってるワケじゃないし…」

「そこでツンデレは要らねーよ」


 もしかして、素でツンデレったのか?

 だとしたら、似非メイドとか言って悪かったな。認めたくないが、本物か…。女子、三日会わずば刮目して見よ、だ。


「でも、信長様。本気で止めちゃうんですか? せっかく、売上も上がってきたところなのに…。準備に掛かった費用も考えて下さい。これじゃ赤字で終わっちゃいますよ!!私のお給金はどうするんですよ!!」


 金に汚いな。金に目が眩んでいる。

 働いた者には当然のこと報酬を出している。接客数、接客態度、客単価など総合評価を見てだ。

 欲の深いメイド、強欲の江。彼女は店で一番の給料取りだ。

 ホントかウソか、話によると例の呉服屋よりも稼いでいるらしい。

 故に、金ありきで江は心配している。

 それも本気で…。

 三人娘はどいつもこいつも、どこかヤバい。共通しているのは腹の中が真っ黒ってことだ。

 ま、性格悪かろうと、金に汚い欲深だろうと、実害ないなら、それで良い。何だかんだで、一緒にいると楽しい奴らなのだ。


「何でそんな怒ってんだよ」

「当然です!!いきなり店仕舞いするって言われたら、誰だって怒りますよ!!」

「え? …誰だよ、そんなこと言ってんのは?」

「惚けるの下手。言ってるのは信長様。信長様、店仕舞いって言った」


 …ん? そうか、こいつらが勝手に勘違いしただけか。

 店を閉めるつもりはない。つーか、店主は婆さんだ。当たり前だが、俺が勝手に決めていいことじゃない。

 止めると言ったのは、俺が辞めると言うことだ。

 早とちりした、こいつらの頭が悪い。

 つまり、俺が怒られる理由ねーじゃん。


「ま!そう言うことだから、お前たち続けたいなら、続けてもいいぞ?」

「お兄様が辞めるのでしたら、私も────」

「あ。それは、もうちょっと待ってくれ。市には後継者の育成をしてもらいたいんだ。次のメイド長を育てないことには、この店が成り立たねーし」


 三人娘の中から選ぶことは不可能。こいつらに、その器はない。そうなると、外から連れてくる必要がある。


「あの…。私、いつからメイド長になっていたのでしょうか?」

「細かいことは気にしなくていいから。それより、次のメイド長の話だ。一応、当てはあるけど……」


 問題は市がこの件を引き受けてくれるか、なのだ。

 彼女は器量も良いし、頭の回転も早い。見た目、ルックスも良い。市ほどじゃないけどな。次期メイド長として期待株なのだ。

 俺としては、市には是非ともご教授願いたいのだ。


「そ、そうですか。それで、その方は?」

「うーん、と。名前はまつって言うんだけど…」

「まつ、さん…ですか?」

「うん。募集してたんだけど、どいつもこいつもダメでな。あっちこっち探してやっと見つけてきたんだ。婆さんにも了承済みだ」


 まあ、まだ新人以前の問題だ。

 話した感じ、仕事内容などは大丈夫だろ。後は、まつの働き次第だ。


「分かりました。お引き受けします。それまではお兄様は…」

「悪いな。俺もミツも、これからちょっと忙しくなりそうで来れないんだよ。だから、市へ頼むことにしたんだ。この店の質は落としたくないし」


 接客をいくら真似ても団子屋には遠く及ばない。結局、どこの店もイマイチ。この店が人気ナンバーワンだ。

 このパフォーマンスを俺なしで維持させるために、市には負担を強いることになる。店の経営というのも大変だな。


「責任重大ですね。お期待に応えられる力量になるまで、しっかりと教え込みます。お兄様は、安心してお仕事に励んで下さいね」

「やっぱり、市に任せて良かった。困ったことがあったら、婆さんと相談してくれ。勿論、俺も微力だが協力はするし…」

「ホッホッホッ。遂に私の出番だね。団子屋の看板娘の座は私のものじゃよ」


 婆さん…。全然、人の話を訊いてねーな。看板娘じゃなくて、看板娘だろ。何十年前の話を言ってるんだ。

 メイド服を着た婆さんが店に出た日には、完全にこの店潰れるよ。


 しかし…。俺の不安は、現実のものとなる。

 数日間、婆さんメイドが店に出ていたという…。それで潰れなかったのは奇跡としか言いようがない。

 この街の人間は心が広いよなぁ~、ホント。




 そんなことになっている裏で、俺は城の仕事に励むことなったが…。

 やることと言えば、城の防御魔法の構築。街周辺への防衛の強化だ。

 木の柵である程度は出来ていたものの、安心できるものとは言い難い。城には城壁があるから良いが、街の守りはないに等しい。全てを覆うほどの魔法防御は不可能だ。


「ま、それは普通の奴らなら、だけどな。────良し、後は北の部分だな」


 魔法で土壁を作る。木の柵の方は秀吉とその仲間たちの作業だ。

 木と土壁で防壁を二枚に強化した。

 実は土壁は高い防御力を誇る極魔法だ。あらゆる攻撃を防いでくれる。

 木の柵で侵入者を防ぐと二重構えになっている。

 

 一つの属性魔法を極めた秘奥義級の極魔法。相性の悪い属性に対しても有効な手段となる魔法だ。防御に使えば、鉄壁の守りとなる。

 そもそも、街を襲うような人間は賊くらいなもので、そいつらが魔法を使えるのは稀なことだ。

 俺を襲った山賊は信勝の手の者。ここまで厳重に守るのはミツの発案によるものだ。


「お疲れ様、ノブ。もう少しで終わりそうだね。そこが終わったら、次は街中の方を頼むよ」

「おい、人使い荒いな。もうチョイ、休憩させてくれよ」


 どこで監視してたのか。一段落ついた瞬間、ミツが現れた。

 俺に対して厳しい。と言うより、仕事に対して真面目過ぎる。悪いことではないが、こんな働いて疲れないのか?

 やっぱり、日本人は働き過ぎだ。


「そうは言っても、あまりゆっくりもしてられないよ。どうも、信友側に動きがあってね。備えを急いでいるところなんだ」


 まあ、今までのんびりしていたツケが回ってきたと言うところか。

 俺としては、忙しかったが…。それは、メイド喫茶を始めてしまったからだ。だから、結局…。それは、ツケが回ってきたと言うことなのだ。


「ミツの考えも解るけど。これじゃあ、街の連中は逃げ場がないじゃん。大丈夫なのか?」

「ちゃんと考えてるから大丈夫。木の柵の方は一部だけ、可動式になっているんだ」


 やはり、俺は考えが顔に出るようだ。

 俺の疑問に答えてくれる。優しいミツは、大歓迎だ。


「この防壁は外側からの攻撃には強いけど、内側からだと互いに相殺して無力化される仕組みなんだ。魔法の相性は、基本的に一方通行だからね」

「ああ!!そう言うことか!!」


 納得いった。

 …理解の遅いのは、俺だけ?

 火は水に弱いが、水が火に強いと言うことじゃない。火は水で消せるが、水もまた炎で蒸発する。水の魔法が火の魔法で相殺されることが、その証明だ。

 ただ、使われる魔法の量や質が大きくなるから効率は悪い。水を沸騰させるために費やされるエネルギーから考えても明らかだ。


 地と木の防御魔法による二重防壁魔法だが、本来なら相性は悪い。木の属性が地の属性を弱めてしまうためだ。


「そう言うこと。ちなみに、街の防御には水魔法を使った防御魔法を設置してもらうつもりだよ」

「皆まで言うなよ。俺も理解してるって。水路を作って、水の力で柵を動かすんだろ?」


 水の力を加えることで木の力を上げる。さらに水の圧力で壁に穴を開ける。面の防御に対して点での攻撃。というか、逃げ道を作る発想はミツらしくて俺好みだ。

 ミツの考えていることが分かるようになってきた。俺って、天才か!?


「相変わらず、ノブの顔芸は面白いよね。毎回、毎回、見ていて飽きないよ」

「く…。誰に言われるより、ミツに言われると悲しくなる。これだから、イケメンは!!」

「何で、そこで怒るのさ。男は顔じゃないよ」

「じゃあ、他に何があるんだよ?」

「性格とか、頭の良さかな? あ、あと腕っぷしの強さとか?」

「なるほどな!!それは、全部ミツが持ってるもんだよな!!」

「そうかな? どっちかって言うと、それは市姫様が思っていることだと思うけど?」

「は? 何言ってんの?」

「分かんないなら、別に良いけど」


 顔は、言わなくてもいい。性格も、俺なんかと比べるべくもない。更に頭も良くて、ケンカも強い。俺は、未だにミツに勝てたことがないのだ。

 恵まれているのはミツの方だ。

 おまけに無属性なんてチート魔法まで使えるんだ。

 親友がモテモテな様子を見るのは正直ムカムカする。が…。この世界の女達は、自分から積極的にアピールすることは少ない。

 例外も居るけど…。


「でも、そうだな。実際、ミツがモテモテな姿を見たことはねーな」


 当然、例外はノーカンだ。アレをカウントするとミツが可哀想だ。


「僕は、ノブに会う前まではずっと引きこもってたし。それに、女の子は苦手なんだよ」

「え!?まさか、ソッチの趣味?」

「ないから!!普通に僕は女の子が好きだよ!!」


 良かった。それなら、安心だ。このタイミングでカミングアウトされたら、俺はどんな反応したら良いか分からん。俺の親友が、○○なわけがない。


「つーか、大丈夫か? 声デカかったぞ?」


 どこで聞き耳立っているか分からないのだ。迂闊なことを言うとマジヤバだ。

 俺への悪意ある噂も、俺の迂闊な発言が元になっていた。経験者は語るのだ。


「あぁ…。つい、ね。大丈夫かな…?」

「さあ、どうだろうな。聞かれたところで大して困ることないんじゃねーの。ミツの場合は」


 逆にBLとか噂される方がヤバい。俺まで巻き込まれるのはゴメンだ。


「でも本当にそんな趣味はないから」

「いや。俺も、からかっただけだ。本気で、ミツがBLだなんて思ってねーよ」


 俺がミツをからかうと言うのも珍しいな。…と言うか、ミツが女子を苦手にしてたなんて始めて知った。

 ミツの弱点は、女子か。


「当然だよ!!僕はノーマルな人間だ!!普通に女の人と結婚したいよ!!」

「ま、その前に女子と普通に話せるようにならないとな?」

「…だよねぇ~。ハァ~」


 人の噂は、すぐに流れるもの。どこから聞きつけたのか、ミツの行く先々では未婚女性が溢れることになっていた。

 何気に、こちらの女性たちもしたたかなものだ。ミツが陥落するのはもうすぐかもしれない…。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ