ウロボロス族の遺跡
「リノスちゃん、今日の夕飯はシチューよ」
村長ジオの奥さんは優しい人だ。
遺跡調査のために、遠くからやってきたリノス親子に宿と食事を提供してくれた。
(セトにはきっと何か理由があるんだ)
リノスは勢いよく椅子から立ち上がると
「そうだ、セトに会って無実を証明すれば……」
しかし、居場所を知らない。
オレって馬鹿とテーブルに頭をぶつけるリノスを見て
「あらあら、ご飯が待ちきれないのね」
奥さんが和かにわらっていた。
「あ」
リノスが何気なく見上げた窓の外、夕闇の中を黒い竜が飛んでいった。
「アートルム?」
ぐーたら竜が神殿から動くとは珍しい。
(あの方向って確か……)
ウロボロス族が残した遺跡
上空から放たれた火球が、ピンポイントで魔物の群れをなぎ払って行く。
「うひょー、さすが上級竜」
「俺たちとは、できが違うんだろう」
竜装をした竜騎士が呟く。
「はっ」
鋭い銀光が一線
狼系の魔物ルプスを、ミシュナが薙ぎ払う。
「はぁはぁ……」
「ミシュナ 、息が上がっていましてよ」
「うるさい」
カエルレウムの気遣いを、突っぱねる。
「素直に竜装すればいいのですわ、そうすれば疲れることもありませんのに」
「完全に「私」もなくなるがな……」
相棒の皮肉に、カエルレウムは苦笑い。
ミシュナは上空を見上げ
「あの黒竜、貴様の兄と言ったな」
「ええ……」
「長いこと引きこもっていたと聞いたが?」
「お兄様は優しすぎました……それゆえ、人の姿をとりたがらない」
ミシュナはカエルレウムを一瞥すると
「貴様も引きこもっていれば平和だったものを……この、整形ロリババア 」
カエルレウムは瞳を輝かせ
「イイ、最高にいいですわ。もっといってくださらない?」
ミシュナの腰に抱きつく。
「ええい、離せ。気持ち悪い」
一方、上空から遺跡を見下ろしていたアートルムは
「この魔物の発生率は少し異常だな……」
旋回する。
「何か、呼び寄せてるモノを見つけて破壊した方が早そうだ」
ああ面倒だ、と呟きながらアートルムは地上に目を凝らす。
ゾクリ、竜であるアートルムの巨体が「怖い」と震えた。
「に、人間か?」
白いフードで目元まで隠した人物が、こちらに視線を向けている。
ふと、リノスとの会話が脳裏をよぎる。
(確か父親が行方不明って言ってたな……)
魔物が大量に発生している場所で、無事でいるとは考えられない。
だが、どこかに抜け道があるとすれば、生存の確立は高い。
白いフードの人物は身を翻すと、さらに遺跡の奥へと進んでいく。
「ちっ、あのちんちくりんのせいで余計な仕事がふえた」




