王都からの訪問者2
「本当になにもない村だな」
竜騎士の女性、ミシュナ・エフラインの素直な感想。
辺り一面の大自然。見所と言えば、山頂の神殿と街道に点在する遺跡群。相棒の竜にこの遺跡に刻まれている文字を問うと「薬の材料を記したもの」と返ってきた。
「竜族は人間よりも優れているようだが、妙にアナログと言うか……」
ミシュナが肩を竦めると
「痛たたた、耳ひっぱるな」
「ダメじゃ。お前は、まだ昨日の復習がが残っておるじゃろ」
騒がしい子供と、落ち着いた老人の声。
「あんなの終わってるし」
「本当かのう……では、一つ問題を出そうかのう」
ジオは片眉を上げると
「竜族の始祖の名は?」
リノスは得意げに鼻をならすと
「黄金竜アウルム。魔物に脅かされていた人間を憐れみ、最初の 人間の王ノアと契約して、魔王ディアボロスを打ち倒した伝説の竜だ。確か今の竜騎士制度の起源は、この二人の英雄が始まりだよな」
「う、うむ……」
優等生並みの正解が出るとは思わず、ジオは苦虫を噛み潰したような顔。
「竜騎士セトは、ノアの再来っていわれてるんだ。そのセトに憧れるオレも当然……」
「貴様……」
突然、リノスは襟首を掴まれ持ち上げられる。
「セトのことを知っているのか!?」
白い細腕が、グルグルと振り回す。
「知っていることを、吐け。さっさと吐け」
「き、気持ち悪い……」
リノスの顔が青ざめているのを見て
「落ち着いてください竜騎士さま」
ジオが慌てて止める。
「む、すまん」
落ち着きを取り戻した女竜騎士に、リノスは放り投げられる。
「な、なんだよこのオバサン……」
「これ、口の聞き方にはきをつけるのじゃ。こちらは竜騎士のミシュナ様」
リノスは顔をあげると
「竜騎士……なんか、もっとゴツい装備してると思ってたけど」
ミシュナが着ているのは、黒と青を基調とした騎士の軽装。
「今は戦闘中ではないからな、君が想像してるのは竜装だろう。あれは強力だが、どうも好きになれんな……」
それより、とミシュナは続ける。
「君はセトを知っているのか」
リノスは頷く。
「オレのことを、魔物から助けてくれたんだ。今も活躍してるんだろ?」
「その逆だ。ある事件をきっかけに、行方不明。騎士団は、彼を疑っている」
「そんな……」
セトが騎士団を裏切って、行方不明。
リノスには信じられなかった。




