PM9:00
そんな私の思いに反して、私の手は勝手に電話をかけていた。
「はい!脳科学研究所です!」
「あの...ユメとかいう配信者からリンクみたんすけど...バーチャルに身体移すってどーゆーことっすか?」
戸惑いながら聞いてみた。
「我々脳科学研究所は、現代科学の最先端を往く、生活の悩みを抱える皆様のQOLを上げるために出来た政府公認の組織でございます。バーチャルに身体を移すというのは、簡単に言うと意識だけ仮想空間に移動させて自由に暮らすことです。」
説明長いな...簡潔に言えないのか?
「はぁ...それってどういう仕組みなんすか...?」
「それは企業秘密でして、我々ではお答えできず...申し訳ございません。」
まぁそんなもんか。まぁ政府公認なら仕方ないか。
「いえ。ありがとうございます」
電話を切ろうとしたその時
「仮想空間で暮らすことに、ご興味はありますか?」
不意を突かれた。
「あります。」
咄嗟に出た言葉。
繰り返す同じ部屋。繰り返す同じ時間。繰り返す同じ動作。確かにこの生活には飽きが来ていた。
「ではご案内致します。まずご住所を伺ってもよろしいでしょうか?」
「あー、はい。東京都邏�ュ秘、の54:6騶ラ$ナ.です。」
「いつ頃仮想空間で暮らしたいなどの希望はございますか?」
「いや...特に...なるはやで...」
母親の声なんかもう聞きたくないからな...
「では明日の朝7時はいかがでしょうか!」
早スンギ。無理無理。起立性調節障害舐めんな。
「いや...ちょっとその時間はキツいっすね...深夜でもいいっすか?」
「えぇ、対応しておりますよ。では、明日25時など如何でしょうか。」
「あぁ、是非、ありがたいっす。」
ちょうどいつもコンビニ行くくらいの時間帯だな。
「では、当日車にてお迎えに上がりますので、印鑑と身分証明書だけお持ちいただけると幸いです。」
「うっす」
「では、失礼致します。」
終わった。
印鑑と身分証明書。まぁ学生証で何とかなるか。
どうなんのかな。日常の変化に胸の高鳴りを覚えている私がいる。
取り敢えず、胸の高鳴りを抑えて脳科学研究所について調べてみる。
さっきのリンク以外ヒットしないな...
そもそも、どこにあるのかも分からない、存在してるかも分からない、詐欺電話かもしれない。
でも賭けてみる価値はあると思った。
この惰性だけでくだらない人生に終止符を打ち、新しい人生が待っているのだとしたら、それは何よりだ。
ってか、住所電話番号割れたところでこれサブ端末だし、住所は実家だから別に私が何かやったとバレるわけでもないだろう。名前も言ってないし。




