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【長編】この度、ワガママ義妹と婚約者を交換することになりました  作者: 温故知新
第四章 幸せになりましょう!

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第86話 解かれたのなら、もう一度

※バリストン公爵視点です。

「カーラのやつ! アリシアの願いを踏みにじっただけでなく、フォール殿を唆して『聖女』の力まで奪うとは!」

「そうよ! 私の可愛いアリシアに嫉妬するならまだ分かるけど、嫉妬に駆られて『聖女』の力を奪うなんて絶対に許されないわ!」



 殿下とアリシアが謁見の間を後にしたあと、息子のエイモンと妻のダリアナはアリシアの話を聞いて義憤に駆られた。


 この二人はアリシアとカーラの真実を知らない。そして……



「確かに、アリシア嬢の可愛さに嫉妬して、彼女の切実な願いを聞き届けないのはまだしも、あろうことか聖女の力を奪うなど……」

「陛下、ここはフィリップの言う通り、王命を使って辺境伯家から爵位をはく奪した上で全員処刑すべきですわ!」



 玉座に座って難しい顔をしている陛下と、その隣で息子と妻の怒りが移り、進言している王妃も知らない。


 ――この場で真実を知っているのは、私だけだ。



「殿下からアリシアがカーラを連れ戻すと聞いた時、嫌な予感がしたが……まさか、それが的中するとは」

「宰相?」



 ――正直、現実になって欲しくなかったが。


 小さく息を吐いた私は、陛下の方を見る。



「陛下、席を外してもよろしいでしょうか?」

「それは、アリシア嬢の願いを叶えるためか?」

「もちろんです」

「ありがとうございます。では、失礼致します」



 深々と頭を下げた私は、謁見の間を後にするとそのまま人気のないところで立ち止まる。



「クソっ!」



 誰もいない場所で、拳を大理石の壁に当てる。


 殿下から通信魔法で『アリシアがカーラを辺境から連れ戻す間、カーラを閉じ込めるための部屋を地下牢に作る許可が欲しいから、宰相も一緒に来て父上に進言して欲しい』と言われてから、私は謁見の間に行くまでの間、形容しがたい不安が胸を巣くっていた。


 殿下の婚約者からカーラからアリシアに変わったことが原因で、王宮内の仕事が停滞するようになったというのは、公爵家の仕事に追われていた間も、王宮にいる部下から聞いていた。


 だが、それは二人が仕事に慣れていないだけで、そのうち解消されるものだろうと思った。


 陛下と王妃にもそのようにお伝えし、お二人も納得されていた。


 相変わらず扱いやすい国王だ。


 何より、ようやく叶った私の長年の願いを壊されたくなかった。



「……そうか。二人はあの真実を知らない。だからこそ、カーラを連れ戻すという愚かな選択が出来たのだな」



 大方、現状に不満を持った二人が、10年もの間、公務に携わっていたあの女を人手として……いや、駒として使いたかったのだろう。


 しかし、『カーラを連れ戻す』という二人の思惑は『拒否』という形で叶わなかった。


 ――それも私にとって最悪な形で。


 不意に、陛下に涙目で訴えていたアリシアの言葉が蘇る。



『義姉さま、私のあまりの可愛さに嫉妬し、私から『聖女』という地位を奪おうと、辺境の殿方の手を借りて、『禁呪』というものを使って私から聖女としての力を奪ったのです!』



 カーラはアリシアから力を奪ったわけではない。


 ――力を取り戻したのだ。


 小さく下唇を噛み締めた私は、十二年前の出来事を思い返した。


 十二年前、メイドたちから七歳だったカーラに聖女の素質があると報告を受けた私は、同時に我が愛しいアリシアに魔法の素質がないことも知った。


 国王夫妻には私の貴族としての汚点を帳消しにし、アリシアとダリアナを家族に迎え、あわよくばアリシアを国母に据えたかった私は、どうしてもアリシアが貴族としても、未来の国母としても有能であることを知らしめたかった。


 そのために、隣国に視察に訪れた際、闇ギルドに所属する魔法師を雇い、二人の髪の毛を密かに入手し、カーラが神殿で魔力鑑定を受けられる八歳になる前に、『交換』という禁呪を使ってアリシアとカーラの魔力を入れ替えた。


 結果、禁呪は成功し、アリシアは晴れて『聖女』として公爵家に迎え入れられ、数年後には王太子の婚約者という地位を得た。


 これから、アリシアはフィリップ殿下と共にこの国を頂点に君臨し、幸せに生きるはずだったのに……!



「一体どこのどいつが禁呪を解いたのか……」



 まさか、あの田舎貴族が……いや、そんなはずがない。


 あの女に聖女の力があることを知っているのは、私だけなのだから。


 だとしたら、一体誰が……



「いや、今は犯人探しをしている場合じゃない。禁呪が解かれたのなら、もう一回禁呪を使うしかない」



 ――それも、あの女の命を対価にする絶対に解けることがない禁呪を。



「アリシアは、あの女を駒のようにしたいようだが……あの女はアリシアのために生かした存在。ならば、最期までアリシアの糧になってもらおう」



 ――そして、『用済み』は用済みらしく、忌々しい家と共に死んでもらう。


 小さく息を吐いた私は、頭の中で今後の方針を決める。


 とりあえず、通信魔法を使って例の魔法師を隣国から呼び寄せよう。


 今回は前回以上に強力な禁呪を依頼する以上、かなり吹っ掛けられるかもしれないが……そこは、秘密裏に国庫から引き出せばいいだけの話だ。


 そして、魔法師を呼び寄せた後、陛下に進言し、フィリップ殿下の提案通り王命で辺境伯家を滅ぼす。


 我がバリストン公爵家と同じく、建国時から国を支えてきた家であり、私とダリアナの運命を捻じ曲げた忌々しい家。


 だが、『王国騎士団』という最強の騎士団がある今、あの家が無くなったところで国の損失にはならない。


 その混乱に乗じて、みすぼらしい姿になったあの女とアリシアを秘密裏に呼び出し、禁呪を使って『聖女の力』を今度こそアリシアのものにする。


 なおも謁見の間でカーラを罵倒している四人のことなど知る由もなく、私は、アリシアがこの国の国母となる未来を信じて疑わなかった。


 ――まさか、あのような事態になるとは知らずに。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


というわけで、久しぶりのお父様視点です!


いや~、さすが二人の娘の未来を歪めた張本人!


禁呪を解かれたのなら、もう一度禁呪をかければいい!


しかも、今度はカーラの命を奪う禁呪をかければいい。


怖いですね~。


本当、こうも歪んでいると恐ろしいですよね。


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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