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【長編】この度、ワガママ義妹と婚約者を交換することになりました  作者: 温故知新
第四章 幸せになりましょう!

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第85話 元の居場所に戻してあげる

第四章開幕!


ついに最終章!


※アリシア視点

 田舎臭い辺境から王都に戻ってきて早々、王宮を訪れた私は、フィリップ様や国王夫妻、そして、なぜか私の家族まで揃っている謁見の間へ足を踏み入れた。



「アリシア嬢!」

「我が義娘のアリシア、無事だったのですね!」

「「「アリシア!」」」

「僕の愛しいアリシア、よく戻ってきた!」



 瞳を潤ませる家族を無視し、私は満面の笑みを浮かべたフィリップ様へ飛び込んだ。


 いつもなら、この温もりに包まれるたび、『私はこの国で一番のお姫様なのだ』という優越感に満たされる。


 けれど、今回ばかりは違った。


 胸の奥に押し込めていた苛立ちが、じわじわと燃え広がる。



「それで、アリシア。あの地味女は連れてきて……って、どこにもいないが?」



 どうやらフィリップ様の目には、可愛い私しか映っていなかったらしい。


 ようやく周囲を見回した彼は、あの女の無様な姿がどこにもないことに気づき、困惑した表情をする。


 フフッ。私の涙に弱いフィリップ様なら……そして、この場にいる国王夫妻と家族なら、私が何を言っても信じるわね。


 相変わらず扱いやすい婚約者に内心ほくそ笑みながら、私はお母様直伝の、庇護欲をそそる泣き真似で彼の胸に縋りつく。



「それが、お義姉さまったら……こんなにも可愛い私が必死にお願いしたのに、嫉妬して愚かにも拒否したのです!」

「何だって!? 義理とはいえ、妹の願いを拒むなんて、なんと冷酷なやつだ! それなら、いっそのこと王命で呼び戻せばよかった!」



 あぁ、その手もあったわ。


 目先のことばかりに囚われていて、すっかり忘れていた。


 まぁ、『「交換」という言葉に弱いあの女なら、簡単に連れ戻せるはず!』と考え、意気揚々と辺境へ向かった私が悪いのだけど。


 それにしたって、まさかあの女が拒否するなんて……。



『聞こえなかった? 「嫌よ」って言ったのよ!』



 脳裏に蘇った、辺境伯家の庭で再会したあの女は、王都にいた頃とはまるで別人だった。


 気高く顔を上げ、自分の意思をはっきりと口にしていた。


 誰かに言われるまま従うだけだった、昔のあの女とは違う。


 ――むかつく。


 地味顔のあの女なんて、無様に虐げられ、誰かの都合のいい道具になっていればいいのに。


 だって、その程度の価値しかないのだから。


 怒りに顔を真っ赤にするフィリップ様を見ながら、込み上げてきた苛立ちを押し殺し、私はさらに燃料を投下する。



「それに、お義姉さまは、私のあまりの可愛さに嫉妬して狂ってしまい、あの辺境の殿方の力を借りて、私の『聖女』としての力を奪ったのです!」

「はぁ!? アリシアの『聖女』としての力を奪っただと!?」

「はい! この通りです!」



 彼から離れた私は、両手を前へ伸ばし、目を閉じて魔力を込めようとする。


 けれど、体の奥底から魔力がせり上がってくる感覚も、温かなベールに包まれるような感覚もなかった。



「そ、そんな……!」



 フィリップ様が驚きのあまり呆然とした、その時、背後でガタッと大きな音が聞こえた。



「アリシア嬢。本当に、聖女の力を奪われたのか?」



 席から立ち上がった国王夫妻と、その傍にいる家族が、呆然と私を見つめていた。


 その反応に、思わず笑みが零れそうになる。


 けれど、すぐに悲しげな表情を作ると、私は国王様のもとへ、縋りつくように駆け寄った。



「そうなのです! お義姉さまは、私に嫉妬し、『聖女』という地位を奪おうと、辺境の殿方に力を借りて、『禁呪』というものを使い、私から聖女の力を奪ったのです!」

「禁呪だと!? 我が国で固く禁じられている魔法ではないか!」



 へぇ。


 危険な魔法だとは思っていたけれど、まさかこの国で禁じられていたなんて。


 それほどの魔法を、お父様は私のために使ってくださったのね。


 ――あの田舎貴族のせいで、解かれてしまったけれど。


 泣き真似をしながら横を見ると、お父様の顔が僅かに青ざめていた。


 その姿を見た瞬間、辺境で聞かされた言葉が脳裏に蘇る。



『カーラの持つ聖女の力をアリシア嬢へ移し、彼女を誰もが認める貴族へ――ひいては、未来の国母へ仕立て上げるために。そして、その母親までも正式な貴族として迎え入れるために』



 お父様は、私に『聖女の力が相応しい』と思い、あの女から奪い、私に授けてくださった。


 ならば、あの力は取り戻さなくてはならない。


 あの美しく神聖な力は、美しくて可愛い私のためにあるのだから!


 すると、私の隣へやって来たフィリップ様が、私の肩を抱き寄せ、実の父親へ訴えた。



「父上、聖女の力を奪うなど大罪です! カーラはもちろん、彼女に加担した辺境伯家にも、それ相応の報いを与えるべきかと!」

「……それは、王家の名の下にカーラ嬢もろとも辺境伯家を潰せと言うのか?」

「はい! 辺境伯家は王家に……いえ、この国に対して反旗を翻しました! ならば、王家の名の下にあの家を潰し、あの地味女……カーラから聖女の力を奪い返し、アリシアに戻すのです!」



 私が聖女の力を取り戻す。


 辺境伯家は潰して、辺境伯領を王家の直轄領にする。


 そして、国王夫妻にも内緒でお義姉さまだけ王都へ連れ戻し、自分の仕事も私の仕事も全部押しつける。


 ウフフッ、改めて思うけど、本当に完璧な計画よね。


 そのために辺境へ行ったのだから。


 つきそうになったため息をそっと飲み込み、私はフィリップ様を後押しするように口を開いた。



「国王様、私もフィリップ様の意見に賛成です! このままでは、嫉妬に狂ったお義姉さまが、聖女の力と辺境伯家の力を利用し、この国に災厄をもたらすかもしれません!」

「そうなると厄介だな。建国時からこの国の防衛を担っている辺境伯家も加担しているとなれば尚更……」



 しばらく思案した国王様は、お父様を一瞥したあと、私たちへ視線を戻して小さく頷いた。



「分かった。あとのことは、私たちに任せてほしい。アリシア嬢は、フィリップと一緒にいつもの部屋で休んでいなさい」

「分かりましたわ」



 あとは、お父様の動き次第ね。


 きっと、私の聖女の力を取り戻すために動いてくださるわ。


 ――大丈夫。


 お父様なら、必ず私の願いを叶えてくれる。


 今までだってそうだったのだから、今回だって――。



「アリシア、行こう」

「はい、フィリップ様」



 私は悲しげに顔を俯かせ、フィリップ様とともに謁見の間をあとにした。


 ――その時、お父様の心底悔しそうな横顔が見えた。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


というわけで、最終章となる第四章の開幕は、アリシア視点のお話です!


『聖女の力』をカーラに返され、精神的にズタズタになったアリシアが、王都に戻って早々、得意の立ち回りでフィリップたちを都合の良いように動かします。


カーラを『都合の良い道具』としか思っていないアリシアの悲願は叶うのか!?


最後まで楽しんでいただけると幸いです。


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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