第8話 ようやく叶った!
※公爵視点です。
「では、私の整理をしてきます」
「そうか。では後でな」
「はい、また後程」
アリシアの繋ぎ役だったあの女を辺境に追いやった後、王宮でのアリシアとフィリップ殿下とのささやかな婚約パーティーが始まるまでの間、執務室に戻った私は、あの女に押し付けていた仕事を整理することにした。
正直、アリシアからお願いされた時、私と同じ感性を持つ国王夫妻ならあっさりと認めてくれると踏んでいた。
殿下もアリシアを溺愛していたから喜んで受け入れくれると思った。
だから、辺境伯家への言い訳をどうするか考えていたが……偶然、謁見の間にいた辺境伯子息が予想外にも歓迎したため、話は驚くほど簡単にまとまった。
辺境伯家とは色々あって絶縁状態だからな。
「……ついに、やったぞ」
――私が描いた未来が、遂に現実になった。
執務室へ向かう廊下を歩きながら、私は胸の内で笑みを浮かべる。
元々、私はダリアナと結ばれるはずだった。
だが、それは叶わず、結局あの女の母親と政略結婚をした。
それでも、私は彼女を諦めることは出来なかった。
だから、持てるもの全てを使った。
そう――持てるもの全てを。
「あっ、旦那様」
「どうした?」
その時、執務室から出てきた文官が慌てたように私に声をかけてきた。
「その……カーラ様をお見かけしませんか? どうしても確認して欲しいことがあったのですが」
「あぁ」
そう言えば、あの女には私に代わって文官達から提出される書類のチェックをさせていたな。
「そのことについてだが、皆に話さないといけないことがある」
「わ、分かりました」
困惑した文官と共に執務室に入った私は、文官たちにあの女がいなくなったことを告げた。
◇◇◇◇◇
「というわけであの女……カーラが、私の代理として行っていた仕事を持ってこい」
「「「「「か、かしこまりました」」」」
私の命令に恭しく頭を下げた文官達は困惑した表情をしたまま、次々との机へ書類を積み上げていく。
フン、どうせあの女がいなくなって困惑しているのだろう。
とはいえ、あの女に任せていた仕事だ。
どうせ大した量では……
「ちょ、ちょっと待て!」
「何でしょう?」
何もなかった机の上に書類の山が一つ出来たところで、嫌な予感がした私は、慌てて書類を持ってきた文官の一人に声をかける。
「これらは、本当にカーラがしていた仕事なのか?」
私があの女に押し付けていた仕事は、あくまで領地運営における地味で簡単な仕事だけだった。
だから、書類の山が出来る程の仕事量にはならないはずだ。
そんな私の動揺に追い打ちをかけるように文官が小さく頷く。
「はい。こちら……と言っても、まだ一部ではございますが、カーラ様が旦那様の代理として行っていた仕事でございます」
「は? これでまだ一部だと?」
「その通りでございます」
淡々とした文官の返事に思わず拳を握る。
ふざけるな。
あの女には、本当にほんの少ししか仕事を押し付けていない!
書類の山が出来るほど仕事を任せた覚えなどない!
深く息を吐いた私は、文官達を睨みつけると、積み上がった書類の山から一枚取って目を通す。
「おい、これはエイモンがお前達に任せた仕事じゃないか! それをどうして、あの女がやっている!」
僅かに顔を強張らせている文官に向かって突きつけた書類は、公爵領の補正予算案が書かれているものだった。
本来なら領主である私自らが行わなければならない仕事だが、アリシア周りのことと宰相の仕事で多忙しているため、次期公爵であるエイモンに勉強を兼ねて任せていた。
エイモンは『この程度でしたら、優秀な我が家の文官なら出来ますよ』と言って、文官達へ仕事を振り、私も『優秀なエイモンが言うなら』と了承していた。
それが、どうしてあの欠陥品の仕事になっている!
すると、小さく肩を震わせた文官の一人がとんでもないことを口にした。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
というわけで、お父様視点です。
このヤバさ、後々響いてきますのでお楽しみに!
※大幅改稿しました。
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