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【長編】この度、ワガママ義妹と婚約者を交換することになりました  作者: 温故知新
第三章 再び交換しましょう!

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第75話 聖女の力

「私が、魔力ゼロ?」



 愕然とした表情で自分の両手を見つめるアリシアを、私は啞然としたまま見つめていた。


 アリシアは生まれながらの『聖女』。


 対して、私は魔力ゼロ。


 それが、この国の誰もが疑わなかった常識だった。


 ――はず、だったのに。



「で、でも私! ちゃんと聖女の力は使えるわよ! ほら!」



 『魔力ゼロ』という言葉を認めたくないアリシアは、自らを鼓舞するように顔を上げ、両手をかざす。


 すると、彼女の体から膨大な魔力が溢れ出し、そのまま魔法陣を描き出した。


 そして次の瞬間、金色の粒子を纏った透明な結界が屋敷全体を包み込む。



「これは……」

「そうよ! これが正真正銘、聖女にしか張れない結界よ!」



 王都にいた頃、毎日のように目にしていた透明な結界。


 辺境へ来てからは魔道具によって張られた結界しか見ていないけれど……間違いない。


 これは『聖女』にしか張れない、あらゆる邪悪を祓う結界。


 久しぶりに見た綺麗な結界に見惚れていると、フォール様は静かに手を伸ばし、小さな魔力の塊をぶつけて眉を顰めた。



「やはり、十年前に見た時より明らかに結界の質が下がっている。毎年、魔道具の効力が少しずつ落ち、ここ最近になって急激に低下したのはこのせいか」

「っ!」

「フォール様、分かるのですか?」



 結界には一切触れていないのに。



「あぁ。俺の魔力で結界を探った」



 自分の魔力だけで結界の状態を探れるなんて……


 そんな離れ業、この国で最も魔法に秀でていると言われるフィリップ殿下でも出来ないわ。



「まぁ、自らの意思ではないとはいえ、所詮は()()()()()()()()だ。遅かれ早かれ、こうなることは分かっていたが」

「っ!?」

「奪った、ですって!?」



 聖女としての誇りを傷つけられたアリシアが眉を吊り上げる。


 しかし、フォール様は彼女を一瞥しただけで、穏やかな笑みを浮かべると私へ向き直った。



「カーラ、『聖女の力』については知っているな?」

「え、ええ……王太子妃教育で教わりましたから」



 魔法が使えないとはいえ、一応、元第一王子の婚約者だった。


 『未来の国母』として、一通りの知識だけは叩き込まれていた。


 ――『聖女でもないあなたには関係のない話ですけど』と当時の家庭教師に鼻で笑われたけど。



「ならば、教わったことを今、ここでやってみてくれ」

「えっ?」



 私が……魔法を?


 それも、聖女にしか使えない特別な魔法を?


 一度も魔法を使ったことがない、この私が?



「だ~か~ら~! お義姉さまには魔力は無いって――!」

「黙れ。今すぐにでも消されたいか?」

「っ!」



 氷のように冷たい眼差しと、今まで聞いたことがない刃のように鋭い声音。


 殺気を放って脅すフォール様に睨まれ、頬を引き攣らせたアリシアが、悔しそうに唇を噛んで私を睨んだ。


 そんなに睨まれても、本当に使えるかどうかなんて分からないのに。


 その時、フォール様が優しく私の肩を抱いた。



「カーラ。俺に騙されたと思ってやってくれないか?」

「っ! わ、分かりました!」



 もう!


 優しくお願いしたら、私が断れないって分かってやっているわね。


 実際、その通りだから何も言えないけど!


 誰もが見惚れる笑顔を浮かべたフォール様に、甘い声でお願いされ、頬を熱くした私は、慌てて彼から離れると、大きく深呼吸をして目を閉じた。


 大丈夫。


 王太子妃教育で教わった通りにすればいい。



「聖女の力は、愛と心からの祈りによって発現する……」



 だから――今、一番願っていることを祈ればいい。


 私は、さっきアリシアがやっていたように両手をゆっくりと前へ伸ばし、意識を集中させる。


 そして、聖女の力を授けてくださる神様へ、静かに祈った。



「……どうか、ここにいる皆が穏やかに過ごせますように」



 その時、体の奥底から今まで感じたことのない温もりが込み上げてくる。


 ――まるで、長い眠りについていた何かが、目を覚ましたように。


 その力は堰を切ったように全身へ広がり、やがて両手へと集まっていく。



「嘘でしょ!? お義姉さま、『魔力ゼロ』じゃなかったの!?」



 アリシアの悲鳴にも似た声に肩を震わせた私は、恐る恐る目を開いた。



「えっ……?」



 そこには、アリシアと同じように黄金の粒子が舞い、神々しい魔法陣が描かれていた。


 さらに、アリシアが張った結界を優しく包み込むように、もう一枚の黄金色の結界が空へと広がっていく。



「私……本当に魔法が使えているの?」



 それも、この世界で最も尊ばれる『聖女の力』を?


 あの日から『魔力ゼロ』と蔑まれ続けてきた、この私が?


 ――心のどこかで『使えたらいいのに』と願い続けていた夢が、本当に叶ったの?


 信じられない思いで目の前の光景を見つめていると、不意に後ろから優しく包み込まれた。



「そうだ。君は今、魔法を……聖女の力を使っているんだ」



 耳元で囁かれた優しい声に胸が熱くなる。


 その瞬間、体の奥から溢れ出る力がさらに強くなった……気がした。


 そして――忘れていた記憶が、突然、脳裏に蘇る。



『カーラ! 今日はアランと一緒に庭で遊ぼう!』



 蘇った記憶の中で、艶やかな黒髪とルビー色の瞳を持つ青年が、澄み渡る青空の下、嬉しそうに私の手を引いて笑っていた。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


というわけで、『魔力ゼロ』だったはずのカーラが魔法を……それも『聖女の力』を使えました!


だとしたら、聖女は二人!?


でも、アリシアの力をフォール様は『他人から奪った力』って言っていたし……


二人の力に纏わる真相が次回、明らかになります!


あの男の本性も明らかになるかも!?


どうぞ、お楽しみに!


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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