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【長編】この度、ワガママ義妹と婚約者を交換することになりました  作者: 温故知新
第三章 再び交換しましょう!

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第70話 では、話そう

「『あの話』に、私がここに来たことを覚えていないことも関係しているのですか?」

「あぁ、そうだ」



 小さく笑みを浮かべたフォール様は、そのまま義妹へと視線を向けた。



「それに、ちょうど君の義妹もいる。カーラのお願いは叶ったというわけだ」

「は? 何を言っているの?」



 不快そうに眉を顰めるアリシアに、フォール様が笑みを深める。


 その表情に思わず肩を震わせた。


 ――穏やかなはずなのに、お父様とは違う、底知れない冷たさを感じたから。



「その前に、カーラ。いくつか聞いてもいいか?」

「何でしょう?」



 こちらへ向き直った彼の瞳を見た瞬間、握り締めた手の指先が一気に冷えていく。


 こんな冷たい目で見つめられたのは初めてだったから。



「君は、今まで一度も思わなかったか? 『なぜ、魔力ゼロの私が第一王子の……未来の国王の妻に選ばれたのか』と」

「それは……王命でそう決められたからです」



 そう。


 あれは王命だった。


 『王家に相応しい人物が公爵令嬢である私しかいなかったから』という、あまりにも理不尽な理由で決められた。



「では、こう疑問に思わなかったか? 『どうして魔力ゼロの自分が、こうして公爵令嬢として生きているのか』と」

「っ!!」



 詰められているわけじゃない。


 責められているわけでもない。


 ただ問い掛けられているだけ。


 それなのに、その一言が私の心を冷たく掴んだ。



「それは……」



 幼い頃から、貴族は魔力を持っていて当たり前だと教え込まれてきた。


 だから――



「疑問に思わなかったと言えば、嘘になります」



 元婚約者から『魔力ゼロ』だと蔑まれる度に頭を過っていたから。


 『どうして、自分がこの人の婚約者なのだろう』と、何度も考えた。


 けれど、辺境に来て、その価値観が歪んでいたと知ってからは考えなくなった。


 ふと、魔力測定の儀式の日が脳裏に蘇る。


 お父様はあの時、『魔力ゼロ』だった私に絶望しなかった。


 ――むしろ、安堵したように笑っていた。


 貴族としての体裁を何より重んじるお父様なら、あの場で私を勘当……いえ、存在そのものを消そうとしていても、おかしくなかった。


 それなのに、私は今もこうして生きている。


 なぜ?



「ならば、こうは考えなかったか? 『どうして悪意に晒される未来の国母を守らず、義妹と殿下の仲を後押しするような真似をしたのか』と」

「それは……」



 私が都合の道具だったから。


 ……いいえ、違う。


 私が知っているお父様なら、未来の国母だった私を守り、アリシアと殿下の仲を後押しなんてしない。


 たとえ、アリシアに泣いて頼まれたとしても、公爵として、宰相として、それだけは許さなかったはず。


 むしろ、二人を引き離そうとしたはず。


 それなのに、なぜ危険を冒してまで、あの二人の仲を深めるようなことをしたのか。


 不意に、お父様の言葉が脳裏に蘇る。



『お前はもう、用済みだ』



「用済み……」

「えっ?」

「辺境伯家に嫁ぐことが決まったあの日、お父様は私に『用済みだ』と、おっしゃいました」



 あの時は、目まぐるしく変わる状況に頭がいっぱいだった。


 その言葉の意味を考える余裕など、どこにもなかった。


 ――お父様、『用済み』って何ですか?



「……お父様、どうして私を生かしたのですか?」



 『貴族の欠陥品』『聖女を虐める悪女』と蔑まれていた私を。


 『都合の良い道具』としてしか扱わなかった私を。


 一体、何のために?



「やはり、あの男にとってカーラは道具でしかなかったのだな……すまない、カーラ。酷いことを聞いてしまって」

「いえ。これからお話しするために、必要だったんですよね?」

「……あぁ、そうだ」



 これから語られることに必要だから、あえて私に問い掛けた。


 決して、私を傷つけるために問い掛けたわけじゃない。


 そう分かっていても……少し、辛いわね。


 不快そうに眉を顰めるアリシアと、静かに目を伏せる私を見て、小さく息を吐いたフォール様はパンと両手を叩いた。



「では、話そう」



 穏やかな陽気に包まれていた庭に、不気味な静寂が落ちた。



「ある一人の男が己の欲望を叶えるため、十年以上という歳月をかけて仕組んだ――『婚約者交換』という名の、盛大な茶番劇を」

「「茶番劇……」」



 ――それは、前代未聞の婚約者交換が『偶然』ではなく、『必然』として仕組まれたという真実だった。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


というわけで次回から、カーラとアリシアに纏わるお話に突入します!


短編でも描かれていましたが、長編では更に深堀りしたお話になっております!


第三章の核となるお話になっていきますので、楽しんでいただけると幸いです!


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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