第69話 交換には応じない!
「は? 今なんて?」
唖然とするアリシアにもう一度言った。
――10年ぶりに言った拒絶の言葉を。
「聞こえなかった? 『嫌よ』って言ったのよ!」
「っ!」
あぁ、義妹に逆らうなんて、お父様に張り倒された時以来ね。
でも、今なら言えるから、言わないと。
――自分の意思を、ハッキリと。
義妹を静かに睨みつけながらドレスに隠れる震える足を一歩前に出す。
「ここにはね、心から大切にしたいと思えるものがたくさんあるの!」
広大で豊かな土地で、活き活きと暮らす領民の皆様。
その暮らしを守る騎士や文官、そして冒険者の皆様。
そして、私を家族のように迎えてくれたリスタット辺境伯家の皆様。
たった半年。それでも、私には守りたいと思えるものがたくさんできた。
だから……!
「そんな場所を他人から奪うことしかしない下賤なあなたに奪われるわけにはいかないわ!」
「っ!」
また一歩踏み出し、震える手を目いっぱい広げる。
そんな私を見て、驚いたように目を見開くアリシア。
きっと、私が王都にいた頃のように素直に従うと思ったのね。
でも、もうここには、あなたのワガママに従う私も、『魔力ゼロ』や『地味女』と蔑まれていた私もいない。
だって、今の私は……
「今の私は『バリストン公爵家の令嬢』カーラ・バリストンじゃないわ! 『リスタット辺境伯家次期当主の婚約者』カーラ・バリストンよ!」
そう、私はもう、バリストン公爵家の裏方役でも、無能な王太子の尻拭い役でもない!
今の私は、リスタット辺境伯家次期当主の婚約者として、この辺境のために生きる者!
だから、あなたのワガママなんて聞いてあげないし、この場所を奪われるわけにはいかないの!
「っ! 本当、お義姉さまのくせに生意気よ!!」
立ちはだかった私を見て、腹を立てたアリシアが、魔法を放とうと手をかざす。
しまった、このままだと……!
恐怖のあまり思わず目を閉じた、その瞬間だった。
後ろから抱き寄せられると同時に、アリシアが悲鳴を上げた。
「ヒィ!」
「全く、本当に学習しないんだ」
「フォール様!」
自身の足元に青い炎の円が現れ、顔を引き攣らせるアリシアに、呆れたようにため息をついたフォール様は、私を見ると柔らかい笑みを浮かべた。
「カーラ。君の覚悟、未来の夫として、しかとこの胸に刻んだ」
「フォール様……」
辺境に来てからずっと私だけを見つめ、寄り添い、救ってくれた彼の言葉と笑顔に、思わず泣きそうになる。
――この方は、絶対に私を一人にしない。
だから、怖くない。
すると、私から離れたフォール様が、私を守るように、私とアリシアとの間に立つ。
そして、アリシアの足元にある青い炎を消すと、大きく手を広げ、芝居がかった口調で話し始めた。
「いや~、それにしても、初恋の人を婚約者として迎えられると思い、大掛かりな茶番劇に乗ったのだが……まさか、半年後に同じことが起きるとは。これには、さすがの公爵や国王夫妻もさぞかし驚くだろう」
「「えっ?」」
茶番劇?
お父様や国王夫妻が驚く?
一体、どういうこと?
意味が分からず、呆気に取られる私と義妹を見て、フォール様が小さく肩を竦める。
「やはり、聞いていないようだな。まぁ、無駄にプライドが高い公爵のことだ。実の子とはいえ、聞かせられるものでもないな」
「フォール様、何をおっしゃっているのですか?」
聞かされていなかった?
私とアリシアはお父様から何を聞かせられていなかったの?
すると、フォール様から笑みが消える。
「カーラ、君に話していない『あの話』について話そう。君がなぜ、ここで過ごしていた頃を覚えていないことも含めて」
「……えっ?」
――この時の私は知らなかった。
フォール様が放ったこの一言が、私とアリシアの人生を根底から覆すことになるなんて。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
というわけで、カーラちゃん、この物語で初めて拒否をしました!
第一章で奪われるだけのカーラちゃんから大成長しましたね!
一方、フォールは一体何を話すのか!?
そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!
(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)




