第62話 義妹が城から逃げ出した!?
「コホン、フォール坊ちゃま。カーラ様と晴れて両想いになり、浮かれる気持ちは分かります。ですが、程々にしておいたほうがよろしいですよ」
「う、うるさいぞ! セバス!」
気配を消して、音を立てずにガゼボに現れたセバスに、動揺しすぎて耳を真っ赤にしながら怒るフォール様。
なんだか、とても可愛いわ。
「まぁ、お二方の仲が深まったことは、リスタット辺境伯家に仕えるものとして、大変喜ばしいことではありますが」
「「っ!!」」
呆れ顔のセバスに指摘され、ゆっくりと顔を見合わせた私とフォール様は、抱き合っている状況に恥ずかしさを覚え、慌てて距離をとる。
は、恥ずかしすぎる!
淑女としてなんてはしたない真似を!
頬の熱を冷まそうと両手で頬を覆う私に対し、耳を真っ赤にしたままのフォール様はコホンと咳払いをする。
「それで、セバス。カーラとの甘い時間にわざわざ水を差しに来たということは、王都の方で事態が動いたんだな?」
「フォール様!」
あ、甘い時間ってなんですか!
間違っていませんけど!
「そうですね。それも、かなり早く」
静かに笑みを潜めたセバスは、頬を手で押さえたまま私の方を一瞥すると、フォール様に近づき耳元で囁く。
私を見たということは、間違いなく私のことなんでしょうけど……フォール様の判断を仰ぐということは、私だけの問題だけではないってことよね。
すると、セバスから耳打ちされたフォール様が不快そうに眉を顰める。
「っ!……それは、本当なのか?」
「えぇ、先程、王都に潜入調査中の『影』から急ぎ報告がありました」
恭しく頭を下げるセバスに、大きく目を見開いたフォール様が小さく息を吐く。
「フォール様、どうされたのですか?」
次期辺境伯夫人になる以上、知っておかなければ。
静かに問い質す私に、眉を顰めたままのフォール様がセバスから耳打ちされたことを口にする。
――それは、耳を疑う話だった。
「君の義妹……アリシア嬢が、王太子妃としての仕事の多さに耐えきれず、転移魔法を使って城から逃げ出した」
「っ! それは、本当なのですか!?」
『お義姉さま! 私と婚約者を交換してください!』
脳裏に義妹の言葉が蘇る。
彼女は、純粋無垢な笑顔で周囲を巻き込み、私から婚約者と『未来の国母』という地位を奪った。
なのに、仕事の多さに耐えきれず、城から逃げ出したですって?
大好きなフィリップ殿下が傍にいるというのに?
思わず眉を顰める私に、険しい顔をしたセバスが小さく頷く。
「はい。カーラ様も耳にされたことがあると思いますが、王都では今、婚約者が変わってから、城内の仕事が滞っており、その原因がアリシア様で……」
「その話でしたら、聞いたことがあります」
――フォール様の仕事を手伝い始めて間もない頃、休憩中にアラン様が話されていたのを聞いていたから。
その時は、噂程度の内容だったからあまり信じていなかったけど。
でもそれって……
「私が思うに、仕事が滞った原因は、アリシアだけではないと思います」
「それは、あのバカ王子も原因の一端を担っていると?」
「……はい」
アリシアが王太子妃になったことで、殿下が公務に復帰されたとしても、面倒事を嫌う彼なら、文官達に自分がしたくない仕事を押し付けるに違いない。
――そうやって、私に仕事を押し付けていたから。
そして、アリシアも殿下と同じく面倒事が苦手らしいから、継母譲りの容姿と話術で文官達に仕事を押し付けるはず。
その結果、仕事が滞るようになった。
「『影』からの報告ではその……アリシア嬢も殿下と同じく自由奔放の性格のようですから、カーラ様の推測は間違っていないかと」
だとしたら、彼女の自由奔放さ……いえ、ワガママは屋敷の中だけにして欲しい。
いくら『聖女』としてもてはやされているから、所かまわず好き勝手するのは、ハッキリ言って迷惑だわ。
――この時すでに、アリシアは辺境の地へ足を踏み入れていたことを、私はまだ知らなかった。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
というわけで、アリシアが城から脱走しました!(笑)
カーラフォールは『仕事に嫌気が差した』みたいなこと言ってましたが……果たして、その真相は!?
次回、お久しぶりのアリシア編です!
お楽しみに!
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