第61話 どうして上手くいかない!?
※バリストン公爵視点です
「エイモン! 私の血を引き、学園ではフィリップ殿下の次に優秀だったお前が、半年経ってもまだこの程度のことしか出来ない!」
あの女を追い出して半年。
私の人生は、長年思い描いてきた順風満帆なものになる――はずだった。
学園卒業後、エイモンは殿下の側近として素晴らしい働きをしていた。
だから、次期公爵として私と同じように要領よく仕事を覚え、問題なく領地運営をしてくれると思った。
だが、実務に携わせてから半年が経った今、エイモンは領地から来た嘆願書をまともに捌けていなかった。
クソっ! 王宮の方も殿下の婚約者がアリシアに変わった途端、仕事が滞るようになり、毎日、激務だというのに!
日を追うにつれて、屋敷の執務室に重苦しい空気が流れる中、文官たちに教えを請いながら、ようやく一件の嘆願書を処理し終えたエイモンが、不満げな顔で私を睨みつける。
「そういう父上こそ、当主として知っていて当然のことをどうしてご存知ないのですか!」
「そ、それは! 宰相としての仕事が多忙で……」
「だとしたら、長雨によって流れた橋のことについて知っていたでしょう!」
「うっ!」
それは、先ほど文官が持ってきた橋の架設に関する請求書だった。
あの女を追い出す少し前、公爵領に長雨が降り、王都から来る商人たちが利用する抜け道に架かる橋が流されたのだ。
公爵領にとってその道は『第二の生命線』だったため、どうやら、あの女の判断で橋を急ぎ架け直したらしい。
その結果、莫大な費用がかかってしまったというのだ。
「それも、宰相としての仕事に追われていて、忘れていたというか……」
そもそも、私は橋の架設なんて認めていない!
あの抜け道は、主要道路を広げ次第、封鎖するつもりだった!
「チッ! 余計なことをしやがって!」
有能な私から領地を任されているからと、調子に乗って勝手な判断をしたに違いない!
辺境にいるあの女の勝手な判断に顔を歪ませた時、閉じられていた扉が勢いよく開いた。
「ねぇ、あなた~、今度、アリシアと二人で侯爵家のお茶会に行こうと思うんだけど~、その時のドレスを買いたくて~」
「うるさい!」
「キャッ!」
遠慮なしに部屋に入ってきて、甘えるようにしなだれかかってきたダリアナを思わず突き飛ばす。
全く、この女はこの状況を分かっているのか!
「お前も公爵夫人なら、少しは私やエイモンの仕事を手伝え! 散財してマウントを取るだけが貴族じゃないんだぞ!」
エイモンと共に公爵領の運営と屋敷の維持管理に携わって気づいた。
この半年の間に、公爵領に納められる税金が瞬く間に少なくなっていることを。
それと反比例するように、公爵家の維持費が瞬く間に増えていっていることを。
原因は一つだけ。
ダリアナとアリシアの浪費癖が加速したからだ。
アリシアは王太子妃のため、お金がかかるのは仕方ない。
だが、ダリアナは公爵夫人。
公爵家のことを考えて、少しは控えてくれてもいいだろうに。
すると、私に怒られたことが意外だったのか、眉を吊り上げたダリアナが、勢いよく立ち上がると昔の話を引き出して噛みついてきた。
――誰にも聞かれたくない話を。
「なによ、あなたが『楽させてやる』って言ったから、あの女を殺して公爵夫人になってあげたのに!」
「っ!」
「あの女?」
『あの女』
それがカーラのことではないと、私だけはすぐに分かった。
母の言葉に不思議そうに首を傾げるエイモンの傍で、私は慌ててダリアナの口を塞ぐ。
「バカッ! それを公の場で言うんじゃない!」
その話は、私とダリアナだけの話だって、あの時に言ったじゃないか!
すると、私の手を無理やり離したダリアナが、悪びれていない笑みを浮かべて頬に手を当てる。
「あら、ごめんなさい。それじゃあ、失礼するわね。アリシアもここ最近、王宮から帰ってくることが遅くなったから」
「アリシアが?」
ダリアナの言葉に、私はここ最近のことを思い返す。
そう言えば、ここ数日、屋敷でも王宮でもアリシアと顔を合わせることがめっきり無くなったな。
大方、王宮の仕事が滞って、忙しくしているのだろう。
――よし! 久しぶりに、可愛いアリシアの顔でも見て気分を晴らすか。
「エイモン、今から王宮に行ってくるから。私の仕事を頼んだぞ」
「ち、父上!?」
縋りつこうとするエイモンと、尚も媚びてこようとするダリアナの手を振り払い、私はアリシアのいる王宮へ向かった。
そこで私は、思わぬ好機を得る。
『これで、ようやく思い描いた順風満帆な人生が送れる!』と。
――その好機が、破滅へ繋がる道とは知らずに。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
というわけで、お久しぶりのお父様です!
いや~、ざまぁされていますね(笑)
まぁ、序章なんですけどね(笑)
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(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)




