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【長編】この度、ワガママ義妹と婚約者を交換することになりました  作者: 温故知新
第三章 再び交換しましょう!

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第60話 繋がった想い

「だから、君が王都に戻った翌年、王命で君があのクソ殿下の婚約者になった時は正直、驚いた」

「『クソ殿下』って……」



 一応、王太子殿下なのですよ。


 両親に似た、容姿と魔力にしか興味のない、自分大好きなクズ王子ですが。



「別に良いだろ。俺とあいつ、同い歳だから」

「そう、でしたわね」



 私より5つ上のフォール様が、元婚約者であるフィリップ殿下が同い歳であることは、知識として知っていた。


 ……あと、二人の仲がとても悪いことも。



『昔から、あいつは気に食わない。僕より容姿が劣っているくせに、魔法も勉学も剣術も優れているから』



 アリシアが来る前、元婚約者はよく、お茶会でフォール様に対して漏らしていた。


 その大半が、彼に対しての妬みだった。


 とはいえ、辺境伯家次期当主と次期国王の仲が悪いと、他の貴族たちの不安を煽ってしまうから、公の場ではお二方は仲良くしていた……らしい。


 婚約者になってから、あまり公の場に出たことがないから分からないけど。



「そして……後悔した。『あの時、君に婚約を申し出ておけば良かった』って」

「っ!? フォール様はそこまで私のことを考えてくださったのですか?」



 確かに、幼い頃に婚約を結ぶのは、貴族の間では当たり前のことだけど……


 出会ってたった半年で、婚約したいって思ってくれていたの?



「当然だ。君があの時、俺と約束をしたから」

「あぁ……」



 私が先に『結婚したら甘やかして!』なんてはしたないことを言ったばっかりに。


 すると、何かを思い出したフォール様が深々と頭を下げる。



「すまない。君が倒れた翌日、君に『婚約者に据えるにあたって調べた』と言ったが、本当は……」

「もっと前から調べていたのですね」



『すまない、君を婚約者に据えるということでその……色々と調べさせてもらった』



 辺境伯家に来てまもない頃、フォール様は婚約者を私にするにあたって調べたとおっしゃった。


 でも、本当は婚約する前から知っていて調べていた。


 ――『カーラ・バリストン』という一人の公爵令嬢のことを。



「あぁ、叔母が亡くなったと知って、君の現状を知りたくて。君が母親のことを大好きだったことを知っていたから。知ったところで王太子の婚約者だった君をどうすることも出来ないって分かっているのに」



 その時、辺境伯家に来た時のことを思い出す。



『アハハッ! 本当に来てくれた! 本当に来てくれたぞ! ありがとう、愚かな公爵家! ありがとう、愚かな王家!』



 辺境伯家に来た時、屋敷から飛び出してきたフォール様は、心の底から嬉しそうな笑顔で私を抱き締めてくれた。


 あの時は、突然のこと過ぎて戸惑ってしまったけど……ようやく合点がいった。


 彼は本当に悪意ある噂になど惑わされていなかった。


 周囲から嘲笑され、誰にも救われず、利用され続けていた私を知っていた。


 だからこそ、王都で傷ついた私を優しく迎え入れ、甘やかしてくれた。


 ――ずっと想い続けてきた初恋の相手として。


 彼の優しさの正体に気づき、小さく笑みを零した私は首を横に振った。



「でも、あなた様が私のことを知って、こうして尽くしてくださったから、私は今、あなた様の隣で笑っていられます」

「それは、当然のことで……」

「その『当然』が私には『特別』であることは、あなた様も分かっているでしょ?」

「……そう、だな」



 彼の言う『当然』は、道具として扱われていた私にとって『特別』だった。


 ゆっくりと顔を上げたフォール様に、優しく微笑みかけると、安堵したフォール様が真剣な眼差しで私を見つめる。



「カーラ」

「何でしょう?」

「今更だが、俺との婚約は……嫌だったか?」



 フォール様の問いに思わず息を呑む。


 あまりにも予想外の問いかけだったから。


 顔が強張った私を見て、悪い意味に捉えてしまったフォール様が再び顔を俯かせる。



「君にとって、俺は『義妹の婚約者になる人』だった。そして、ここへも公爵家から半ば追い出される形で来た。だから、そんな俺との婚約は嫌かと思って……」



 『何を今更……』


 そう思い、口に出そうとした時、不安げに見つめるフォール様と目が合った。


 その時、私はようやく気づいた。


 この方の好意に甘えてばかりで、自分の想いを口にしたことが無かったことを。


 ――出会ってからずっと、この方はちゃんと私に自分の気持ちを伝えてくれたのに


 今になって、婚約者としての自分の不甲斐なさを痛感し、酷く後悔した。


 ……今度は、私が伝える番ね。


 覚悟を決めた私は小さく息を吐くと背を正す。


 ――今の自分の気持ちを、噓偽りなく伝えるために。



「確かに、私は父に言われるがまま、あなた様の婚約者としてこちらに来ました」



 『アリシアの代わりに行け』



 そう言われ、私はここへ来た。


 当時のことを思い出し、静かに拳を握る。



「今だから話しますが……私は、ここでの扱いも実家と同じものだと思っていました」

「…………」



 彼の表情が僅かに歪み、ガゼボを流れる空気が、僅かに張り詰めた。


 それでも、私は自分の想いを話した。


 ――大好きな彼に聞いて欲しかったから。



「でも、そんなことはありませんでした」



『カーラ様!』

『カーラちゃん!』

『カーラ嬢』

『カーラ』



 辺境伯家での日々を思い返し、優しく微笑んだ私は彼の手の上に自分の手を重ねる。



「ここには、私がずっと欲しかった温もりも、優しさも、たくさんありました」



 朝起きて、温かいご飯を食べる。


 読書や刺繍を楽しみ、公務を手伝う。


 使用人や家族と笑い合い、温かなベッドで眠る。


 義妹に奪われてから、私が欲しかったものが、全てここにあった。



「それを与えてくださったのは、他でもないフォール様です」



 フォール様がずっと私を想い続け、傷付いた私を受け止め、辺境伯家へ来た私のために動いてくださったから。


 だから私は、今ここで笑って生きていられる。


 ……これから先も、生きていこうと思える。



「私は、優しくて誠実なあなた様とこれから先、ずっと一緒にいたいです……夫婦として」

「っ! カーラ!」



 感極まり、ルビー色の瞳を潤ませたフォール様が私を抱き締める。


 こんな優しい人と婚約して嫌だった?


 そんなこと、あるはずないわ。


 むしろ、彼と婚約して良かったと思っているわ。



「カーラ。俺もこれから先、夫婦として、君と一緒にいたい!」

「フォール様……」



 嬉しそうに微笑む彼を見て、思わず泣きそうになる。


 もし、王命が下されなかったら、もっと早く、この人の婚約者になれていたのかしら?


 そんな叶わない"もしも"を思うと、胸が少しだけ痛んだ。


 だから私は、今まで会えなかった時間を埋めるように、そして、私のことをずっと思い続けてくれたフォール様の痛みが少しでも和らぐように、静かにお互いの温もりを共有した。


 ――その頃、王都ではかつてないほどの混乱に陥っていた。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


というわけで、60話目で遂に二人が両想いに!


良かったね、フォール!


遂に、カーラと両想いになれたよ!


いや~、長かった!(笑)


でも、二人が両想いになれて本当に良かった!


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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