第6話 僕とアリシアなら大丈夫!
※フィリップ視点です。
バリストン公爵家の別邸で、婚約者だった地味女を乗せた馬車を見送った僕は喜びで胸を躍らせる。
遂に、僕の婚約者を地味女から愛しいアリシアに変えることに成功した!
愛しい人が自分の妻に……あぁ、幼い頃から抱いた夢が遂に現実になった!
「はぁ~、ようやく我が家の面汚しを処分できたな」
「そうねぇ。あの女の子どもなんて、本当は私の手で殺してあげたかったのだけど」
「やめろ。あれでも一応、私たちのアリシアのために、それなりに役立っていたのだからな」
「あら、そうだったわ♪ ごめんなさ~い」
貴族として欠陥品であるあの女を追い出せて、晴れやかな表情のバリストン公爵夫妻。
夫妻もあのお荷物を抱えて、さぞかし大変だっただろう。
そうだ!
「公爵」
「何でしょう?」
「今日は僕とアリシアの婚約が成立した記念すべき日だ。王宮で王家と公爵家だけで細やかな食事会をしよう」
「よろしいのですか!?」
「もちろんだとも。父上も母上も君たちと今日という素晴らしい日をお祝いしたいとおっしゃっていた。というわけでエイモン、君は先に戻って使用人達に指示を出してくれ」
「それでしたら、王宮を出る前に執事と侍女長に指示を出しております」
「さすがだな」
我が親友であり右腕であるエイモンは、次期宰相に相応しい程に優秀だ!
「殿下。せっかくですから、この前届いたドレスをアリシアに着ていただくのはどうでしょう?」
「よし、そうしよう! というわけで、アリシア、早速僕と一緒に王宮に来てくれるかい? 今日のために、君が前々から欲しがっていたドレスを用意させているんだ」
「もちろんですわ、フィリップ様!」
そして王城に戻った僕は、パーティーの準備をするアリシアを客室へ送り届けると、エイモンと共に久しぶりに執務室に入った。
昨日はアリシアと僕の願いを叶えるべく公爵と共に奔走して、公務に携わることが出来なかったからな。
「皆、ご苦労!」
「で、殿下!」
「あぁ、皆、精が出るね!」
「は、はぁ……」
執務室に来た僕を見て、近くにいた顔色の悪い文官が驚いて目を見開いた。
この文官は優秀らしいが、残念ながら容姿が微妙なため、彼は一生、僕の部下として働いてもらうことになっている。
もちろん、昇進などない。
そんなことを思っていると、微妙な容姿の文官が何かを探すように僕の背後を見る。
「あの、殿下」
「なんだ?」
「バリストン公爵令嬢に先程、『急ぎ、王宮に来て欲しい』と連絡をしたのですが……もう、来られましたか?」
バリストン公爵令嬢……あぁ。
「アリシアのことか。だったら、来ないぞ。今日は、僕たちにとって大切な日だからな!」
「えっ?」
本当は、準備を済ませ次第、執務室に来て仕事について軽く教えるつもりだった。
だが、馬車の中でそのことを伝えると、『フィリップ様のためにいっぱいおめかししたいので、無理ですぅ~』と上目遣いで隣にいた僕に擦り寄り、甘えるように言われてしまった。
婚約者として、可愛い彼女を無理させるわけにはいかない。
すると、文官は驚いたように目を瞬かせると、困ったように首を傾げる。
「いえ、あの……アリシア嬢ではなく、カーラ嬢のことですが」
「は? どうしてあの女の名前が出てくる?」
僕の婚約者としてまったく相応しくなかった、あの女の名前が。
僅かに眉を顰める僕に、文官はさも当然のように答えた。
「えっ、だってカーラ嬢は殿下の婚約者ですよね?」
「あぁ、そういうことか」
そういえば、婚約者が変わったのはついさっきだから、まだこの場にいる文官たちに伝わっていないんだな。
文官との間に生じた矛盾が解消された僕は、笑みを浮かべると文官たちの前で堂々と宣言する。
「近々正式に発表されるが、昨日、僕の婚約者が、あの女……カーラではなく、アリシアになった!」
「えっ!?!?」
アリシアの名を口にした瞬間、執務室にいた文官たちが全員、信じられないような表情で言葉を失った。
それだけ、カーラからアリシアに変わることが衝撃的なのだろう。
まぁ、僕と同じく、あの女を迷惑がっていただろうから、喜びのあまり言葉を失ったのだろう。
そんな文官たちに、小さくため息をついた僕は彼らを安心させようと話しかける。
「安心しろ。アリシアはあの女より頭が良く。飲み込みも早く要領も良い」
「ですが、アリシア嬢は王太子妃教育を受けていないのでは……」
「問題ない。アリシアは、あの女より先に王太子妃教育を終えている」
「「「「「はい!?」」」」」
文官たちの反応に、嬉しくなった僕は得意げに鼻を鳴らす。
そういう反応になるよな。
王太子妃教育をまだ終えていなかったあの女より先に、アリシアは王太子妃教育を全て終えているのだ。
驚くのも無理はない。
すると、文官たちが再びひそひそと話始める。
「おい、アリシア嬢がカーラ嬢より先に王太子妃教育を終えているって……そもそも、受けていたこと自体知っていたか?」
「知っているはずがないだろ。婚約者でもないのに王宮に来ているのは何度か見かけたが……」
「それじゃあ、その時に王太子妃教育を受けていたのか?」
「だとしたら、信じられないな。婚約者交代も含めて」
「でも俺、『アリシア嬢は勉学があまり好きでない』と妹から聞いたことがあるが……」
何やら変な方向に話が進んでいるが……ともかく。
コホンと咳払いをして文官たちの意識を僕に向ける。
「僕もこれまで以上に努力する。優秀な僕とアリシアがいれば、何も問題ないだろう」
「「「「「は、はぁ……」」」」」
僕の話を聞いても文官たちはまだ不安がっている。
まぁ、それは僕とアリシアが政務に戻ればいいだけの話だ。
「さて、早速仕事に取りかかろう」
あの女もいないし、昨日一昨日と執務が出来なかったからな。
アリシアのためにも、仕事を進めないと!
――そう、呑気に思っていた僕は、まだ知らなかった。
アリシアの本性も。カーラが背負っていた苦労も。
そして――ある男の陰謀により、『次期国王』という未来が揺らぐことになることも。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
というわけで、元婚約者のお話でした!
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(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)




