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【長編】この度、ワガママ義妹と婚約者を交換することになりました  作者: 温故知新
第1章 婚約者を交換してください!

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第5話 僕たちの婚約が決まった!

「アリシア!」

「っ!?」



 大きな音と共に開け放たれ、驚いてそちらを見ると、金髪碧眼の美しい青年が立っていた。


 どうして、王太子殿下がここに……?


 王宮にいるはずの婚約者に息を呑んだ私と対照的に、今まで不機嫌そうにしていたアリシアの顔がぱっと輝く。



「フィリップさまぁ~!」



 満面の笑みでソファーから立ち上がったアリシアは、部屋に入ってきたフィリップ様に抱きつく。


 ――殿下の婚約者である私の目の前で。



「アリシア! 婚約者のいる殿方に、なんてはしたない真似を……!」

「黙れ。愚かにもアリシアに嫉妬し、彼女を虐げてきた()()()()の下民風情が」

「きゃっ!」



 嬉しそうにアリシアを抱きとめたフィリップ様は、私に冷たい視線を向けて蔑むと手をかざす。


 そして次の瞬間、翳された手から眩い光が放たれ、なすすべもなく直撃した私は声を上げて倒れ込む。



『魔力ゼロ』



「貴族に魔力があるのが当然」とされるこのアステタント王国で、魔力を持たない貴族に対してつけられる烙印のような侮蔑を含んだ二つ名。


 五歳の時、私は神殿での魔力鑑定でこの不名誉な二つ名を与えられた。


 当然、貴族の体裁を重んじるお父様は、このことを公にしていない。


 私を公爵令嬢として使える駒にしたかったから。


 だから、知っているのは公爵家と王家だけ。


 久しぶりに侮蔑を含んだ罵倒と魔法を浴びせられ、魔法が当たって痛む腕をさすりながら小さく唇を噛む。


 あなたが私を軽んじる理由は分かっている。


 政略結婚を嫌うあなたが、地味な容姿で魔力ゼロの私を心底嫌っているから。


 それでも、フィリップ様。


 あなたは分かっているのですか?


 私たちの婚約は、王命で結ばれたものであることを。


 決して、軽んじていいものではことを。


 絨毯に倒れている私を見て、心底満足したフィリップ様は、アリシアに視線を向けると壊れ物を扱うように優しく抱き直す。


 本当に、分かっているのかしら?


 いくら、あなたが『聖女』アリシアの可愛らしいと愛らしさ、そして、誰にも好かれる明るく優しい性格に一目惚れし、婚約者である私に仕事を押し付け、アリシアとの間に愛を育んだとしても、あなたを結婚するのは王命で定められた私であることを。


 一夫一妻制をとっている我が国で、『聖女』を次期国王であるあなたの妾になんて到底無理なことを。


 そんなことを思いながら見つめていた時、嬉しそうに抱きつくアリシアを名残惜しそうに離したフィリップ様が、今まで一度も婚約者に向けたことがない満面の笑みでとんでもないことを口にした。



「アリシア、聞いてくれ! 僕たちの()()が決まったんだ!」

「えっ?」



 今、なんとおっしゃいました?


 婚約が決まった?


 何を、おっしゃっているの?



「フィリップ様、あなた様には私という婚約者が……」



 そう、あなたには私という王命で定められた婚約者がいる。


 婚約なんてとっくの昔に決まっているはず。


 困惑する私の声を、アリシアの弾んだ声がかき消す。



「フィリップ様、それってつまり、お義姉さまと私の婚約者が交換されたということですか?」

「っ!?」



 その時、アリシアのワガママが脳裏を過る。



『田舎貴族と結婚するのも嫌だし、フィリップ様と離れるのも嫌だから、お義姉さまと婚約者を交換してください!』



 まさか、本当に?


 あの幼稚なワガママを、本気でお父様が叶えたというの?


 視線がゆっくりと絨毯に下ろされる。


 確かに、お父様はアリシアに甘い。


 まるで本当の娘のように。


 いや、血が繋がっているから本当の娘なのだけど。


 それでも。


 この国の宰相であり、貴族の体裁を誰よりも重んじるあの人が、そんなリスクしかないことを叶えるはずがない。


 ……そう思いたかった。


 満面の笑みをフィリップ様が、私を嘲笑うように深く頷くまでは。



「あぁ、そうさ! さっき君のお父様が父上に嘆願してね! 父上も母上も『アリシアが息子の婚約者になるなら』と快諾してくれた! たまたま居合わせた田舎貴族の子息も『王家の意思に従います』と了承したぞ!」

「っ!」



 フィリップ様の言葉に、顔を上げた私は今度こそ言葉を失った。


 本当に、お父様が、公爵家を揺るがすワガママを叶えたの?


 そして王家も、それを許したの?


 アリシアの――公爵家に迎えられた元平民の少女の願いを叶えたというの?



「……正気の沙汰じゃないわ」



 肌触りの良い上質な絨毯をギュッと握りしめる。


 お父様も王家も、どうかしているわ。


 こんな幼稚な理由で、国の未来を変えてしまうなんて。



「だとしたら、私は一体、何のために……」



 徐に口から出た言葉は、私の辛い日々を思い起こさせる。


 何のために、鞭打ちと罵倒を受けながら厳しい淑女教育に耐えたの?


 何のために、楽しい学園生活や、アリシアのせいでもういない友人との時間を犠牲にして、自分と王太子の公務をこなしてきたの?


 何のために、周囲から『聖女』を虐める悪女』と蔑まれ、家族や使用人、婚約者から『魔力ゼロ』と疎まれながら、王太子の婚約者として居続けたの?


 何のために、私は……


 喜びを分かち合うように頬を寄せて体を密着させるアリシアとフィリップ殿下、それを見て涙ぐむアリシアの侍女。


 傍から見れば感動的な光景を呆然と見ていた時、後ろから強く腕を掴まれた。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


というわけで、カーラの婚約者……いや、元婚約者のフィリップ登場です!


短編でもカーラを虐げていましたが、長編ではより過激になっております!


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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