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【長編】この度、ワガママ義妹と婚約者を交換することになりました  作者: 温故知新
第二章 愛しい君を溺愛させて!

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第44話 商業都市と知らない感情

「うわぁ~、活気に溢れていますね!」



 馬車が屋敷を出てしばらく、私は人々の活気に溢れているレンガ造りの建物が並んでいる街並みに目を奪われた。


 この街に来た時は、見る余裕もなかったから。


 それにしても、不思議だわ。


 初めて訪れたはずなのに、この街並みにはどこか見覚えがある気がする。


 ――婚約者として辺境伯家に来るよりもっと前に。



「辺境伯家の屋敷のあるここ『ジスタル』は、辺境伯領で一番大きい城塞都市であり、辺境伯領の経済を支えている都市であることから別名『商業都市』と呼ばれている」

「商業都市……」

「そうだ」



 それなら、少し前にレイラから教えてもらったことがあるわ。


『広大な領地をもつリスタット辺境伯領には、城塞都市がいくつかある』って。


 確か……



「他にも、『農業都市』や『工業都市』、そして、国境と大森林からほど近い『防衛都市』があるんですよね?」

「よく知っているな」

「レイラに教えてもらいました」

「そうだったのか」



 特に、隣国と国境をまたぎ、数多の魔物が棲まう大森林からほど近い『防衛都市』は国防の最前線なのよね。


 そして、防衛都市には魔石や薬草など、大森林の恵みを求めて、多くの冒険者が集まってくるらしい。


 そのため、冒険者ギルドを始めとした冒険者のための宿やお店が多いらしい。



「そして、辺境伯領の最終防衛の拠点でもある」

「っ!」



 向かい側で穏やかな顔で街を見つめるフォール様のルビー色の瞳が僅かに険しくなる。


 そうよね。リスタット辺境伯家は建国時から国防の一翼を担う貴族の家。


 この国に住む人々の笑顔と活気を守るために、この都市も国防の大切な役目を担っているのよね。


 その時、建物に刻まれている魔法陣が目に入った。



「フォール様、あれは……」



 大小様々な建物に刻まれた魔法陣を指さすと、険しく目をしていたフォール様の目が柔らかくなる。



「あぁ、結界魔法用の魔法陣だな」

「やはり……屋敷にも、堅牢な壁に施されていましたが、リスタット領では建物に魔物除けの結界魔法を施すよう義務付けられているのですか?」



 よく見たら、建物全てに魔法陣が刻まれているけど。



「そうだな。我が領は隣国に接している上に、魔物が棲む大森林とお隣さん同士だからな。一人でも多くの領民を守るために、家などを建てる時は必ず都市か街か村の役所に申告をし、我が領のお抱え魔法師達に魔法陣を施すように義務付けている」

「なるほど。というより、都市だけでなく、街や村にも役所があるのですか?」



 大抵は、自領の大きな街に一つだと思うけど。



「あぁ、簡易的なものであるが各街や村に騎士団の駐屯地と一緒に置いている。安定的に税が取れるようにするためと、魔物の襲撃があった際、すぐに知らせが届くように」

「そうなのですね」



 広大な領地をもち、尚且つ常に危険と隣り合わせの辺境伯領ならではの決まりね。



「というか、よく気づいたな。さすが、カーラだ」

「い、いえ……」



 私はただ、王太子妃教育で培った観察眼で偶然、見つけただけで。


 いきなり褒められるとなんと返したらいいのかしら。


 フォール様から褒められ、頬の熱を取ろうと頬を抑えた時、賑わっている街に視線を戻したフォール様が僅かに笑みを潜める。



「どうだ、王都に比べて華やかさは無いが」

「そうですね」



 どこか不安がる彼の問いかけに、頬から手を離した私は視線を街に戻す。


 規則的に並ぶ建物。


 街の要所に配置された見張り台。


 そして、至る所に施された魔法陣に、緊急時の避難用シェルターに繋がる入口。


 王族と貴族達が多く住まう場所とあって、華やかでありながらも整然としていてとても美しく綺麗な王都の街とは違って、まるで――街そのものが巨大な要塞として設計されているようなジスタルには華やかさはない。


 それでも……



「私、この街が好きです。皆さん、生き生きとしていますから」



 少なくとも私の知る王都では、大声をあげて物を売る姿も、楽しそうに立ち話をする姿もあまり見かけなかった……気がする。


 すると、彼の口角が嬉しそうに上がる。



「そうか。俺も好きだぞ」

「っ!」



 フォール様から見つめられたまま『好き』と言われ、頬が再び熱くなる。


 勘違いしちゃダメよ、カーラ!


 この『好き』は、私に言っているわけじゃなくて、『都市』に対して言っていることだから!


 熱くなった頬を覚まそうと小さく手で仰いでいると、向かい側からクツクツと笑う声が聞こえた。



「ハハッ、相変わらずカーラは可愛いな」

「うっ!……フォール様。今、からかいましたね?」

「いや、事実を言っただけだが」

「っ!」



 本当に、フォール様ったら!


 どうして、私の心を簡単に掻き乱すようなことをおっしゃるのですか!


 心臓に悪いではありませんか!



「アハハッ、すまない。怒らないで欲しい」

「もう! 別に怒っていませんけど!」



 申し訳なさそうに眉を下げるフォール様にそっぽ向く。


 なんだか、ここ最近、フォール様がたまに私に意地悪するようになったわ。


 ――別に嫌ではないのだけど。


 その時、穏やかな表情で街の様子を見つめるフォール様に釘付けになる。


 フォール様。婚約者として初めてのデートなのに、いつもと変わらないわね。


 私は昨夜、人生初めてのデートとあって、なかなか眠れなかったのに。


 ――フォール様は、過去に誰かとデートをしたことがあるのかしら?


 その時、胸の奥がざわりと揺れる。


 ――嫌。


 フォール様が私以外の誰かとデートしたことがあるなんて。


 そんなの、嫌。


 フォール様が私以外の誰かに甘く微笑んで。


 私以外の誰かを優しくエスコートして。


 私以外の誰かを楽しそうに話していたなんて。


 胸の奥が、きゅっと痛んだ。


 婚約者に対して、こんな気持ちを抱くなんて初めてだわ。


 王族の婚約者だった頃は、一度も抱いたことがなかったのに。


 ――初めて抱いたドロドロとした醜い感情が、今まで淑女として厳しく律していた私の口を動かした。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


というわけで今回は、前半は街の雰囲気に胸をときめかせ、後半で初めての感情を抱くという、一喜一憂が激しいカーラをお届けしました!


この作品、一応異世界恋愛ものですからね!


乙女な部分を出してもいいでしょう!(笑)


そんなカーラちゃん、次回、更に乙女全開です!


是非ともお楽しみに!


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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