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【長編】この度、ワガママ義妹と婚約者を交換することになりました  作者: 温故知新
第二章 愛しい君を溺愛させて!

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第42話 初デート前に(sideカーラ)

 フォール様のご両親にご挨拶をして二日後。


 私は今日、人生で初めて婚約者とデートをする。


 ――恋愛小説の中のこととしか思っていなかったことが現実になった。



「おはようございます、カーラ様!」

「おはよう、アンナ」



 目が覚めてすぐ、いつもより元気なアンナを見て思わず笑みを零し、初めてのデートで緊張していた心身が少しだけ解れる。


 こういう時、アンナの明るさに救われる。



「カーラ様! 今日のデート、楽しみですね!」

「えぇ、そうね」



 ――今まで『デート』というものに縁が無かったから尚更。


 なぜって?


 もちろん、婚約者だったフィリップ殿下から『お前みたいな地味女より、既婚者がいる女と出掛けた方が遥かにマシだ!』と拒絶されていたから。


 実際、アリシアが公爵家に迎えられる前までは、フィリップ殿下は婚約者である私を放置して、婚約者のいない令嬢達と隠れてデートをしていた。


 そのせいで、お父様からは『婚約者としてフィリップ殿下の心を引き留めろ!』と怒られて、普段は味方であるはずのお母様にも『婚約者の手綱はしっかり持っておきなさい』と注意されていた。


 ――誰も、フィリップ殿下が悪いなんて思っていなかったわ。


 だって、彼は次期国王に相応しい容姿と魔力を持ち、表向きは文武両道で誠実な王子。


 実際、国民からも愛されていたし。


 まぁ、彼の素行の悪さは全て国王夫妻が揉み消したのでしょうけど。


 ――『聖女』アリシアと出会うまでは。


 その時、閉じられていた扉が勢いよく開く。



「おはよう、カーラちゃん!」

「え、ふ、夫人!?」



 どうして、この部屋に!?


 開け放たれた扉から満面の笑みの美女が侍女を伴って部屋に入ってきた。


 その人が、この家の女主人と理解するまでほんの少しだけ時間がかかった。



「あら、カーラちゃん。私のことはなんて言うんだったかしら?」

「お、お義母さまです……」

「うん、よろしい」



 この有無を言わせない笑顔の圧、来て間もない頃にフォール様も同じことをされたわね。


 こういうところは親子なのね。


 すると、笑みを深めたお義母さまが、慌ててベッドから抜け出した私の顔や体をペタペタと触り始める。



「お、お義母さま?」

「うん、体調の方は大丈夫そうね」

「は、はい……」



 お陰様でデートに行けるほどには体調はいいかと。


 その時、嬉しそうに笑ったお義母さまが私の手を掴む。



「さて、朝ごはんを食べたら支度をするわよ!」

「支度、ですか?」

「えぇ、デートのための支度よ!」

「あ、そ、そうですよね!」



 フォール様との初めてのデート。


 婚約者として恥ずかしくない格好をしないと!


 そのために昨日は、お義母さまとアンナが一日かけて私の服と装飾品を選んでくれたのだから!


 お義母さまの言葉に思わず顔が強張ると、ご機嫌のお義母さまが私の手を両手で包み込むと美しい顔を近づける。



「ウフフッ、せっかくの初めてのデートですもの。今のカーラちゃんも十分可愛いけど、この私が更に可愛くして、あの筋肉バカ息子の嫉妬心と独占欲を煽ってあげるわ!」

「えっ!?」



 フォール様の嫉妬心と独占欲を煽るくらい可愛くするってどういうことですか!?


 それに……



「お、お義母さま?」

「何かしら?」

「今の話ですと、お義母さま自ら支度を手伝うとおっしゃったように聞こえたのですが……」

「あら、そう言ったのよ」

「えっ!?」



 お義母さま自ら、支度を手伝ってくださるの!?


 私の初デートの!?



「こんなに可愛い義娘が出来たのですもの! 手伝わないわけにはいかないわ!」

「は、はぁ……」



 婚約者との初デートの前って、こんな感じなのかしら?


 恋愛小説では読んだことがあるけれど、淑女教育でも王太子妃教育でも教えてもらえなかったから分からないわ。


 お義母さまの気迫に唖然としていると、後ろに控えていたレイラが興奮気味のお義母さまを静かに諫める。



「奥様、くれぐれも程々にお願いしますね。今回のデートは、カーラ様にとって人生で初めてのデートなのですよ」

「えっ、知っていたの?」



 昨日……というか、今まで聞かれなかったから、てっきり知らないものだと思っていたわ。



「当然です。カーラ様のことは、フォール様から全て聞いておりますので」

「そ、そうなのね」



 フォール様、私が来るまでどこまで話されたのかしら?


 レイラの話に苦笑いしていると、レイラに諫められたお義母さまはわざとらしく肩をすくめる。



「分かっているわよ。でも、人生初めてのデートだからこそ、特別なものにしたいじゃない?」

「それはそうなのですが……」



 女主人に反論され、何を言っていいか分からず困っているレイラ。


 普段、メイド達を束ねる者として常に冷静沈着な彼女にしては珍しい。


 そんなことを想っていると視線を戻したお義母さまが、私の頬を優しく撫でる。



「それにね、あの方がしたかったことを、私が代わりにしてあげたいの」

「えっ?」

「奥様……」



 あの方って誰なのかしら?


 お義母さまの言葉にレイラが瞳を潤ませるくらいだから、きっと、お義母さまにとって大事な人なのでしょうけど。


 その時、じっと私を見つめるお義母さまの表情が、亡くなったお母様と重なった。


 ――もし、お母様が生きていたら、今みたいに侍女やメイド達に囲まれながら支度をしていたのかしら?


 頬に添えられたお義母さまの手の上から自分の手を重ねる。



「カーラちゃん?」

「お義母さま、少しだけこのままいてもよろしいでしょうか?」



 ――今だけ、血の繋がりの無い母に甘えたくなりました。


 驚いたように目を見開いたお義母さまが、優しい笑みを浮かべると静かに頷く。



「良いわよ。私は、あなたのお義母さんなのだから」

「ありがとう、ございます」



 そっと目を閉じた私は、右頬に感じる温もりに身を委ねる。


 ――温かい。この人の手も、お母様と同じくらい温かい。


 お母様が生きていた頃は、この温もりに甘えて、厳しい淑女教育に耐えていたわね。


 どこか懐かしい温もりを堪能した私は、その後、家族団らんの朝食を済ませるとすぐ、お義母さまに引きずられるように部屋に戻ると、お義母さま主導のもと、侍女やメイド達によって可愛らしく着飾られた。


 それはもう、フォール様の嫉妬心と独占欲を煽るくらいに可愛く。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


というわけで、すみません!


次回からデート編スタートです!


フォールとは違い、少々浮かれているカーラと本人以上に浮かれているアンナと義母のやりとりをお届けしました!


人生初のデート!


そりゃあ、浮かれるよりも先に不安や緊張が来ますよね!(笑)


そんなカーラがデート用にとびっきり可愛くなったことで、フォールがどんな反応をするのか!?


次回、お楽しみに!


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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