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【長編】この度、ワガママ義妹と婚約者を交換することになりました  作者: 温故知新
第二章 愛しい君を溺愛させて!

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第38話 ご両親にご挨拶!

 辺境伯家に来て三か月が経ったある日。ついに、その時が訪れた。



「フォール、アラン、元気にしていた~?」

「お帰り、父さん、母さん」

「お帰りなさい、父上、母上」

「「「「「おかえりなさいませ、旦那様、奥様」」」」

「あぁ、今帰った」



 今日のために用意したドレスに身を包んだ私は、屋敷のエントランスホールでフォール様やアラン様、そして、使用人全員と共に頭を下げる。


 そう、この辺境一帯を治める領主であるリスタット辺境伯夫妻が領地に帰還されたのだ。


 リスタット辺境伯夫妻については、ここに来るまで『国境防衛のため、滅多に領地から離れない』以外、聞いたことがなかった。


 社交界にも滅多に出なかったみたいだし。


 だから、ここに来てからは、フォール様やアラン様、そして使用人のみんなからご夫妻の人柄を知った。


 ご当主様はとても寡黙で、奥様はとても明るい。そして、お二方、とてもお優しいと。


 それにしても、辺境伯様は大柄な体格で精鍛な顔立ちをされて、まさに辺境伯家当主に相応しい威厳があるわ。


 対して、夫人は成人した息子が二人いるとは思えないほど美しいわ。


 社交界に出れば、間違いなく注目を集めるわね。


 ーーフォール様はお父様似で、アラン様はお母様似なのね。


 帰ってきたご夫妻がフォール様とアラン様と和やかに話し、それを邪魔にならない程度に聞いていると、楽しそうに話していた夫人と目があった。



「あら、あなたが……」

「っ!」



 来た。


 静かに背を伸ばすと、にこやかな笑みを浮かべたフォール様が私の背中に手を添える。



「そうだ。この方が手紙で伝えた俺の婚約者だ」

「知っているわ。王都で噂になっていたし」

「っ!」



 『王都』と『噂』という言葉に、恐怖で喉が詰まり、表情が固くなる。


 辺境伯様と夫人の視線が怖い。


 ここから逃げたい。


 でも、私はフォール様の婚約者。


 恥をかかせてはいけないわ。



「カーラ」

「大丈夫です」



 大丈夫。そう、大丈夫よ。


 僅かに息を吐いた私は、王太子妃教育で叩き込まれた完璧なカーテシーをする。



「お初にお目にかかります、リスタット辺境伯ご夫妻。この度、フォール様の婚約者になりましたバリストン公爵家が長女、カーラ・バリストンでございます。これから、辺境伯家の一員として、フォール様と共に、由緒あるリスタット辺境伯家を盛り立てられるよう精進して参りますので、よろしくお願い申し上げます」



 言えた。声が少し震えたかもしれないけど、ちゃんと言えたわ。


 心の中で安堵しつつゆっくりと顔を上げると、ニコリと微笑んだ夫人が、隣でポカンとしている辺境伯様を軽くつつく。



「ほら、あなた何か言って」

「あ、ああっ……」



 妻に指摘され、難しい顔をした辺境伯様が洗練された紳士の礼で頭を下げる。



「リスタット辺境伯家当主、オーロン・リスタットだ。王都での君の働きはよく知っている」

「えっ?」



 働き? 噂ではなくて?


 すると、僅かに微笑んだ辺境伯様が私の手を優しくとる。


 その笑みが、その仕草が、どこかお母様に似ていた。


 どうしてかは分からないけど。



「今までよく頑張った。君のような素晴らしい方を長男の婚約者として迎え入れられたこと、辺境伯家当主として光栄に思う」

「っ!」



 この方も、フォール様と同じく、私のことを見ていた。


 第一王子の婚約者として頑張っていた私のことを。



「……本当に、君は若い頃の()()に似ている」

「えっ?」



 今、なんと?


 私の顔を見てポツリと呟き、少しだけ目を潤ませる辺境伯様に首を傾げそうになった時、辺境伯様の隣に来た夫人から声をかけられる。



「初めまして……いえ、()()()()()って言った方が良いかしら?」

「お久しぶり?」



 私、夫人にお会いしたことがあったかしら?


 少なくとも、王都では一度もお会いしたことは無い気がするけど……



「母さん」

「はいはい、分かっているわよ」



 僅かに眉を顰めるフォール様に咎められるように呼ばれ、小さくため息をついた夫人が改めて自己紹介をする。



「リスタット辺境伯夫人、ジェシカ・リスタットよ。カーラちゃん、うちの筋肉バカ息子のお嫁さんになってくれてありがとう」

「誰が筋肉バカだ、誰が」

「それはもちろん、あなたのことだけど~?」



 不機嫌さが増すフォール様とは反対に、クスクスと上品に笑う夫人は、辺境伯様が離れたタイミングで私に近づくとそっと手を握る。



「カーラちゃん、ここに来てしばらく経つけど大丈夫? フォールから冷たい扱いをうけていない?」

「なんで俺がカーラに冷たくしている前提なんだよ」

「だってあなた、女の子に対してはとことん愛想が無いじゃない。王都では有名よ」

「うっ!」



 あっ、その話なら社交界に出ていない私も聞いたことがあるわ。


『見目麗しい令嬢に対しては、とことん素っ気ない』って。


 あれ、本当だったのね。


 貴族令息として致命的なところを指摘され、気まずそうな顔をするフォール様に、思わず笑みを零した私は、婚約者としてフォール様の誤解を解く。



「お気遣いいただき、ありがとうございます。ですが、ご安心ください。フォール様には、辺境伯家に来てからずっと、大変よくしてもらっております」



 絶対安静の間、毎日、仕事の合間に見舞いに来て、綺麗な花や美味しいお菓子を持ってくるくらいに。


 ……たまに食べさせていただいた時もあったけど。


 絶対安静が解除された後は、私の意思を尊重してくださる。


 ……『フォール様の仕事の手伝いがしたい!』という私の意思を除いて。


 そんな私を見て、驚いたように目を見開いた夫人は、安堵したように笑みを浮かべる。



「あら、そうだったのね。バカ息子が突然、『カーラちゃんを婚約者にする』って聞いた時は、『大丈夫?』って思ったのよ」

「っ!」



 やっぱり……私が『悪女』と呼ばれていたから?


 笑みを浮かべた口角の端が僅かに引き攣る。



「母さん。その言い方だと、カーラが勘違いする」

「あ~! ごめんごめん! 勘違いしないで頂戴! 『大丈夫?』って思ったのは、あなたのような素敵な女の子に、このバカ息子が冷たい態度をとらないか心配だったからよ! ほら、さっきも言ったけど、あの筋肉バカ、女の子にはとことん素っ気ないから!」

「は、はぁ……」



 なるほど、そういうことだったのね。



「でも良かったわ。フォールやアラン、そして使用人の皆と仲良くしているみたいで」

「分かるのですか?」

「当然よ、辺境伯家の女主人として、皆の顔を見たらすぐに分かるわ。頑張ったわね、フォール」

「当然だ。カーラは俺にとって心から大切にしたい女性なのだから」

「っ!」



 フォール様! そんな恥ずかしいことを皆様の前でおっしゃらないでください!


 フォール様の言葉に動揺して顔が熱くなった時、手を離した夫人が突然、私を抱きしめた。



「ふ、夫人!?」

「カーラちゃん。フォールも言っていたかもしれないけど、ここには今まで頑張ってきたあなたを貶める人は誰一人としていないわ。私や旦那様、そして……ここにいない()()()()()()も含めて」

「えっ?」



 前辺境伯夫妻? どうして今、そのようなことを?



「だからあなたは、あなたの思うように生きなさい。大丈夫、私たちリスタット辺境伯家は、次期辺境伯夫人であるあなたを否定も拒絶もしない」

「っ!」



『否定も拒絶もしない』



 耳元で囁かれた夫人の真剣な言葉に、思わず泣きそうになる。


 ここに来るまでずっと、私は誰かに否定され、拒絶されてきた。


 そんな私を、夫人は『否定も拒絶もしない』とおっしゃってくださった。


 本当に、ここにいる人たちは……


 その時、隣で優しく見守っていた辺境伯様の大きな手が私の肩に乗る。



「ジェシカも言ったが、君はもう我が辺境伯家の一員だ。今は難しいかもしれないが、何かあったら遠慮なく周りを頼りなさい。君はもう、一人じゃないのだから」

「辺境伯様……」



 あぁ、本当にここにいる人たちは温かくて、私がずっと欲しかったものを全て与えてくださる。


 温もりも、言葉も、笑顔も全て。


 言葉に詰まって静かに頷いた時、私の頭に大きな手が乗る。


 それがフォール様のものであるのは、見なくても分かった。


 ――ここに来てから何度も、彼の優しく温かい手に支えてもらったから。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!


というわけでカーラ、遂に両親と対面!


寡黙な父と明るい母!


正反対だけど、二人とも優しい人で、カーラのことも噂に惑わされず、カーラ自身として見ていましたね。


まぁ、何やら意味深なことを言っていましたが……それは、後々分かるということで。


ようやくここで、カーラが辺境伯家に受け入れられたましたね!


良かったね、カーラ!


そして、ブクマ・いいね・評価の方をよろしくお願いいたします!

(作者が泣いて喜びますし、モチベが爆上がりします!)


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